襲来
フィーナと食事をとるときは決まって何も話さない。
いつもは賑やかな性質のフィーナも食事のときは静かに、ゆっくりと味わうように食を進めるのだ。
実のところ、カラフはこの時間が好きだった。
家族ととる食事はとても穏やかな気持ちになれる。
――幼い頃からカラフとフィーナはずっと一緒に過ごしてきた。
だから、カラフにとってはティカや祖母だけでなく、フィーナも家族のように思っていた。
フィーナとは特別言葉を交わさなくてもいい。
ただ、そこに居てくれるだけで良い。
互いに成長して、周りの目が少し気になり始め、気恥ずかしさと言うものを感じ始めてはいるものの、
フィーナはカラフにとっての家族には違いが無かった。
一緒に居るだけで、安心できる。
そんなふうに、カラフは思っていた。
食を取った後二人は木陰に座り、風に柔らかく撫でられる草原をぼんやりと眺めながら過ごしていた。
時折、フィーナはいつものように鼻歌を歌った。
その清流のような旋律はフィーナの透き通った優しい歌声とよく合っていた。
そんなふうにゆったりとした時間をしばらく過ごした後、そろそろ修行に戻ろうかとカラフが思ったとき、森の小道を一人の男が駆け抜けてくるのが見えた。
「カラフ君! いるか!?」
男の尋常ならざる形相に眉をひそめ、カラフは腰を上げる。
「ジーラさん、どうしたんですか」
森から飛び出してきた男はカラフの姿を認めるとすぐに、息も戻らぬうちに話し出した。
「村が……襲われてる。き、君の家に盗賊が入っていった……。おばあさんもティカちゃんもまだ中に……」
それだけ聴くや否や、カラフは剣を鷲づかみにし、森へ駆け出す。
「カルフ! ま、まって!」
フィーナはよろめきながらカラフを追って駆け出そうとする。
「フィーナは危ないからそこから動いちゃダメだ!待っててくれ」
カルフは血相を変えてフィーナを制止する。
フィーナは気迫に押され、よろよろと膝を突く。
「そんな、カルフだって……危ないよぉ……」
フィーナの目が潤む。
「行っちゃやだよぉ……」