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終章-青い星の光-

 数年後、カラフはフィーナと結婚した。

 カラフの残った左手には結婚を示す指輪がはめられていた。


 しばらくして、フィーナのお腹には子供が宿った。

 フィーナは子供の名前の候補を新しく思いつくたびに、「これはどう!?」とばかりにカラフに紙に書いて見せてきた。

 書いた紙の枚数は100を超えたが、結局子供が生まれてから名前をつけることにした。



 ――子供が生まれた。

 名前はティナだ。

 とても元気が良い子に育ちそうな、良い名前だとカラフは思った。


 ティナは成長すると、はつらつとした明るい子に育った。

 声の出ない母親の代わりに買い物などは幼い頃から手伝った。

 その他にも家事や畑仕事なども積極的に手伝い、両親思いの素直な子に育っていった。



 ティナは成長し、当時のティカと同じ年になっていた。

 その頃になるとティナにも魔力が宿り始めてきたようだった。

 男であるカラフには魔力は宿らないが、魔力の血筋はしっかりと娘のティナに受け継がれていた。


 次のティナの誕生日にカラフは宝石をプレゼントした。

 あの魔力を宿していた宝石である。

 ティナは喜んだが、同時にその石に僅かに魔力が残っていることを感じ取った。

 ティナはその魔力を使い、母のフィーナに"奇跡"を起こした。


 その日からフィーナは声が再び出せるようになった。

 フィーナは泣いて喜び、娘のティナを強く抱きしめた。

 ティナも母親に喜んでもらえて嬉しかったようで、いつにも増して満面の笑みを見せていた。

 だが、一瞬見せたティナの「どやっ!」と言わんばかりのしたり顔は、かつてのティカと瓜二つだった。


 それからフィーナはいつか木陰の下でいつものように歌っていた旋律を歌った。

 その歌声はあの時と変わらない、透き通った優しい声だった。



 ティナは成人すると、旅に出た。

 一人前の魔術師になってたくさんの人を救うための魔術を磨くんだと、ティナは誇らしげに言った。

 カラフもフィーナも大層悲しんだが、かつてカラフが「勇者になるんだ!」と意気込んでいた時代を思い出すと、

 やはり血は争えないなぁと、最後はカラフもフィーナも納得して送り出した。

 ――ただし、季節に1度は必ず手紙は送る事、と条件付きで。



 手紙はひと月に1度は送られてきた。

 その度に、娘の冒険活劇にハラハラとさせられ、かと思ったら次の手紙では気になっている人がいるなどと恋愛相談が始まったりした。

 カラフとフィーナはその度に笑い転げたり、はらはらしたりと大忙しだった。

 2人は手紙の内容が気が気でなく、毎日のようにティナへ手紙を送った。

 (カラフは主にティナの恋愛事情が気になっていたようだ)



 それからしばらくして、ティナは遠く離れた大きな国で結婚したと報告があった。

 離れた場所での結婚式だったのでカラフたちは向かうことが出来なかったのが悔しかったが、とりあえずティナが幸せそうなので良しとした。

 それでも、やはりどんな相手かくらいは気になるので手紙で尋ねると直ぐに返信が返ってきた。


 どうやら医術を熱心に研究している学者とのことだった。

 人を救いたいと旅立っていったティナらしいと、カラフたちは思った。


 その手紙にはティカの手書きの旦那さんの似顔絵らしきものが同封されていたが、

 ティナには絵心がありすぎるのか、結局カラフたちには相手の容貌はよく分からなかった。

 ちなみに、最初カラフがその絵を見たときに「……虫の絵か?」と言ったのは絶対にティナには聞かせられない。



 ――ティカに子供ができたと手紙で報告があった。


「ついに私たちもおじいちゃんとおばあちゃんになったのね」


 フィーナは柔らかな笑みを浮かべてそう呟いた。


「ああ、ティナも立派になって。本当にあの子が生まれてきてくれてよかったよ」

「――本当に」

「今度、帰ってくるのか」

「うん、手紙には次の夏には帰って来ると書いてるよ」

「孫にも会えるんだな。楽しみだなぁ」

「うん、本当に。――本当に、幸せ」

「――本当に、幸せだ」


 庭の長椅子に2人して腰掛けながら星を見る。

 カラフの左手にフィーナがそっと手を重ねる。


「この村の星を、孫にもはやく見せてあげたいね」

「ああ、この村の星や月は青く輝いて見えるからな。きっと驚くぞ」


 そうして、2人はゆったりと星を眺め続けた。


「――あ、流れ星」

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