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鋼鉄の夢  -Iron Dream-  作者: からす
第二章 明日への逃避
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第97話

短いですがお許しください

 ミュータントのガキとの殺し合いから一週間。その間で、ご主人様と話したごみの利用計画がスタートした。その翌日辺りからゴミがトラックに詰め込まれ、壁の向こう側へと運び込まれた。三日目あたりから処理された人間の放流が始まって、徘徊するゴミを捕獲・処分し始めてくれた。おかげで、コロニーの治安は明らかに改善されたように思う。

 今日もコロニーを巡回していて、一度しか襲われなかったし。この分なら夜間の工場の稼働再開も近いだろう。また空気が汚れる代わりに、物流の供給量が戻って価格も安定するはず。生活も少しは楽に……なるだろうか。なってくれたらありがたいが。

「んで、今日は何の用だ」

 早朝に玄関の扉を叩く音がしたので出てみれば、やってきたのはご主人様。招いた覚えはないが、何のために来たのか。

「私は君らの働いた。だから、君たちにも働いてもらう。そうでなければ割に合わないだろう」

 筋の通った話だ。人を動かそうと思えば対価は必要不可欠。人生の貴重庵時間の一部をもらうわけだから、見合った対価を差し出すというのは道理。

「で、お前は何を求める」

 どうせこのご主人の事だ。きっとまた無茶な要求をしてくれるのだろう。どれだけ嫌いな相手だろうと、義理は果たさねば。恩を受けたら必ず返さねばならない。いつまでも借りっぱなしでは信用を損なう。信用を損なえば、何かあった際に真っ先に疑われる。つまりは命の危機にさらされるわけだ。そうでなくとも人間関係に亀裂が入ることは間違いない。快適な生活を求める俺には都合が悪い。

「敵を殺せ。それだけだ。とても、シンプルだろう?」

「ああ、馬鹿な俺にもよくわかる」

 シンプルイズベストとはよく言った物。わかりやすいというのは素晴らしく価値のある事だ。同時に、そのめんどくささもよくわかる。どこの誰を何人殺すかにもよって、難易度が大きく変動する。

「まさか、敵のコロニーに直接殴り込みしろなんて言わないよな」

「そのまさか、なのだよ」

「ハハッ」

 ちっともつまらないのに、笑えてしまう。いや、笑えなさ過ぎてかえって面白く感じているのだ。なんてでたらめな感情だろう。

「お前、俺よりバカだろう」

「失礼だね」

「気を悪くしたなら悪かったな。だがコロニーの場所は。規模は。それもわからなきゃ、殺す以前にたどり着くことすらできん」

「規模はともかく、場所については把握済みだよ。偵察に行ったエーヴィヒの一人が、死んで、送られてきた情報を解読してね」

「万能だな、エーヴィヒは」

「お褒めにあずかり、光栄です」

 兵器にも、食糧にも、女にも、偵察にも使える。

「本来の役目とはかけ離れてるがな」

 彼女は不老不死の実現のために作り出されたと聞いている。これもばかげた話。おぼろげな夢をつかむようながら、不完全にも実現されている。素晴らしい発明が、こんなことに使われている。過去の人間。発明者が見たらなんというか。

「科学とは、往々にして開発者の意志から離れて使用されるものだ。例えば、三百年前の人間だが……アルフレッド・ノーベル。知っているかい?」

「いいや」

「なら説明が必要だね。ダイナマイト、爆弾を開発した人間なんだが、それは岩を爆破するために造られた。しかし人を殺すためにもつかわれた。もちろん彼の本位ではない……彼女も、同じようなものさ……不死身の兵隊というのも、開発目的の一つに入っていたかもしれないが」

「ま、それはいい。使えるものを使わないのはもったいないしな。で、どこだ」

「詳細は後に伝えるよ。腕利きを何人かそろえて、君たちの頭のところへ集めてくれ。また遠征部隊を組む」

「またか」

 これで遠征は二度目。一度はお礼参り。その帰りに、仲間が大勢死んだ。そして今度は……

「今度は何人死ぬか。それは敵が? 味方が?」

「両方だ。正直もう殺し殺されはうんざり。引退したいよ」

 だが、生き方を変えるには遅すぎる。たぶんベッドの上じゃ死ねないだろう。殺す技術以外は何も持っていないのだし、学ぶ時間もない。

「世界征服しよう、そうすれば世界は平和になって、争いもなくなるさ」

「……やっぱり馬鹿だろお前」

 

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