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鋼鉄の夢  -Iron Dream-  作者: からす
第二章 明日への逃避
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ガレージ

 鬱陶しい頭の説教から解放されて、また家に戻ってきた。一度糞不味い合成食料で腹ごしらえをして、出動の準備にとりかかる。

 他所のコロニー産の機体と、支配階級から送られてきた競技用機体。正直どちらを使うのも気が引ける。片方は自分が殺した奴の所有機体だし、もう片方は俺の生活から平穏の二文字を奪い去った憎むべき支配階級からの贈り物。格下の人間への同情、あるいは施しのような形で与えられたもの。

使うべきか、使わざるべきか。荒事になる可能性を考えれば迷わず使うべき。頭だってその可能性を考えて、準備をしてこいと命令したのだろう。

 もちろん戦わなくて済むならそれに越したことはない。相手に戦意がないと確信できるなら非武装で行ってもいいだろう。話だけ聞けば戦意がないように思えるし。だが、信じるに足る証拠がない。エーヴィヒは付き合いの中での行動で殺意がないのを証明しているので、全てはまだ無理だが一部は信用できる程度まで関係は良くなっている。だが彼らには信用できる事が何一つとしてない。信じるのは危険だと、知識が警告する。

だから、出来る限りの用意をしてから向かうべきだ。

 さて、考えが少しズレてしまった。今考えているのは、アースを使うのは決定事項ということで、どちらを使うかで悩んでいる所。

 個人的な心情を除けば競技用を使わない理由はない。全てにおいて、コロニー産のアースよりも性能が上回っているのだし。それでも悩むのは、糞よりも役に立たないプライドが邪魔をするからだ。だが、その糞よりも劣る物体のせいで命を落とすほど馬鹿らしい物もない。

「どっちを使うべきだと思う」

 いよいよ困って、隣に座る少女に声をかける。

「性能で考えれば、わざわざ応えるまでもないと思いますが」

「だよな」

 性能が高ければ、それだけ何かあった時に生き残れる確率も上がる。エーヴィヒの言うとおり、考えるまでもないことだ。

 それに、こいつが届けられた時も思ったじゃないか。送り主に罪はあっても、贈り物に罪はない。この機体も、哀れみから送られたものではなく、俺に迷惑をかけた事への謝意の現れと受け取り方を変えれば、使うことへの抵抗も薄れる。それでも完全に抵抗がなくなるわけではないが、自分の命を守るためなのだ、という一押しで自分を納得させる。

「じゃあ、こいつを使おうか」

 残る片方は壊れた時のスペアにでも使おう。そうと決まれば、早く準備をしなければ。頭は気が短い、きっと毛が無いから心に余裕もないのだろう。あまりのんびりしていてはまた頭に怒声と罵声のシャワーを浴びせられてしまう。

「よし。やろう」

 メンテナンスのために端末をつなぎ、異常やパーツの劣化などがないかをチェックする。といっても終わるまでは少し時間がかかるため、その間に持っていく武装を選んで、クレーンに吊り下げて運ぶ。持っていくのはいつもの定番セット。背中武装に20mm2連装機関砲。80mm9連装ロケットランチャー。手持ち武装に12mm対人機銃と新しく買ったシールド。その裏にレーザーブレード。そして、腰のハンガーに実体ブレード。このセットなら、この前の化物みたいな重装甲目標が出てこない限りは対応できるはずだ。

 屋内クレーンで重たい肩部武装を持ち上げて、アースの真上に持っていく。それから機体への取り付けを開始。少しずつ武器を降ろしていって、武器を爆砕ボルトで固定。レンチでしっかりと締めたら、次はレーザーブレードを。他の武装と同じようにクレーンで持ち上げて、機体の腕と合わせて、金具で固定。ケーブルでバッテリーとつないで、機体の準備は完了。手持ちのは乗ってから手に持てばいい。

「手慣れてますね」

「何年も乗ってるんだ。慣れもする」

 端末に目を移すと、ちょうどチェックが終わっていた。ログをさかのぼってみるが、異常を示す黄色または赤の文字は見当たらない。機体表示もオールグリーン、異常なし。

「ところで、見慣れない武装がありますが。腕に取り付けたそれ、何ですか?」

 ……そういえば、レーザーブレードのことは誰にも教えていなかった。故意に教えなかったわけではなく、誰にも聞かれなかったから誰にも教えてないだけで。教えてもいいんだろうか。

 しばし、顎を撫でながら教えてもいいかどうか考える。

 即決。

「秘密だ」

一応私にとっては切り札のような物だし、アンジーのように身内で、完全に信頼の置ける相手ならならともかく、こいつは一応敵側。今はそうでないとはいえ、いつ敵に回るかわからない相手に切り札を教える訳にはいかない。

「そうですか」

 随分とあっさりと引き下がった。もう少し食いついてくるかと思ったが。

「お前も行くなら機体のチェックしとけ」

 整備不良で、いざというときに役立たずでは笑えない。一人で死なれるのは構わないが、道連れは御免だ。

「必要ありません。つい昨日、あなたが寝ている間に確認しましたから」

「ならいいか」

 確認して間もないし、一度も動かしてないなら。端末に触れて装甲を開く命令を出し、観音開きになった前部装甲に足をかけ、背中を預けるように乗り込む。袖に腕を通すように、アースの腕に自分の腕を入れると、それがスイッチになって機体の電源が入る。目の前の画面に様々な情報が表示されていき、最終的に機体の外の光景が映る。それと同時に内側のクッションも膨らみ、装甲と体の隙間を埋める。

「システム、通常モードで起動します」

 無駄に音質の良い起動音声だ。こんな細かいところまでコロニー産とは違う。腕を動かしてもラグは殆ど無い。骨董品と同等あるいはそれ以上の反応速度。機動力も、決闘紛いの殺し合いをした時に十分なほど見せつけられたのを覚えている。腹立たしいが、認めざるをえない。これはいいものだ。

 しかし、これほどの機体を使っておいて俺に負けたエーヴィヒはどれだけ性能を活かせていなかったのか。宝の持ち腐れだな。

アーマード◯アだと、装備を選択したらガチャガチャ勝手に装備されるけど、これではその過程を書いてみる

クレーンガチャガチャ。


あと、いただいたイラストを元に「カスタムメイド3D」というソフトを使ってヒロインを再現してみました。

微笑み

挿絵(By みてみん)

嘲笑

挿絵(By みてみん)



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