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短編小説

とある一週間。

作者: うわの空
掲載日:2013/08/25

 とある月曜日。

 とある人間は、一週間の長さに絶望していた。

 月曜日という一日すら長いのに、一週間はあと6日もある。

 絶望したその人間は、白線の外側に飛び込んだ。


 とある月曜日。

 とある人間は、新しい一週間を迎えられたことに感謝していた。

 余命半年と言われたあの日から、もうすぐ十か月。

 支えてくれた世界のみんなに、その人間は感謝した。




 とある火曜日。

 とある人間は、昨日の失敗を引きずっていた。

 もしかしたら、一生この鬱々とした気分のままかもしれない。

 途方に暮れたその人間は、黒いベルトを首に巻いた。


 とある火曜日。

 とある人間は、咲き誇っている花を見て目を細めていた。

 去年は失敗したけれど、今年は綺麗に咲いてくれた。

 じょうろを持ったその人間は、指先で真っ白な花びらに触れた。




 とある水曜日。

 とある人間は、不採用と書かれた紙を握りしめていた。

 いつまで経っても、この社会に自分の居場所は作れない。

 諦めきったその人間は、ふわりと浮かんで落下した。


 とある水曜日。

 とある人間は、泣きながら金魚に土をかけていた。

 出目金なんて可愛くもない、そう思ったのは二十年前だったはずである。

 私も長生きするからねと、その人間は約束をした。


 


 とある木曜日。

 とある人間は、落選という事実に愕然としていた。

 小説家を目指して三十四年。もう、芽が出ることはないのか。

 失望したその人間は、大量の薬で眠りについた。


 とある木曜日。

 とある人間は、落選という事実に頷いていた。

 小説家を目指して四十年。だが、自分の『最高』はここではないのだ。

 改めて希望を目にしたその人間は、にこやかに筆を執った。




 とある金曜日。

 とある人間は、孤独という言葉に酔っていた。

 金曜の夜だというのに、気軽に飲みに行ける相手もいない。

 ひとりに怯えたその人間は、手首に刃物を押しあてた。


 とある金曜日。

 とある人間は、孤独という言葉におののいていた。

 そこから助けてもらうには、自分が行動しなければならない。

 ひとりに怯えたその人間は旧友へ、「飲みに行こう」とメールした。




 とある土曜日。

 とある人間は、自分がいかに受動的なのかを思い知っていた。

 仕事の日はいいが、休日になった途端、するべきことが何もない。

 空白に耐えきれなくなったその人間は、海の底へと沈んでいった。


 とある土曜日。

 とある人間は、海と空を眺めに来ていた。

 特別なことは何もない。ただ、海と空が広がっていればいい。

 十年ぶりに部屋の外へと出たその人間は、世界の広さを見つめていた。





 とある日曜日。

 とある人間が、自殺を図った。

 救急車で運ばれた結果、自殺は未遂に終わり、後遺症も残らなかった。


 ただ、搬送先の病院で検査を受けた結果、違う病気を患っていることが判明した。


「あと半年です」と、医師は冷酷に告げた。

 あなたの望み通り死ねますよと、嘲笑うかのように。



 とある日曜日。

 とある人間は一時退院し、公園のベンチに座っていた。

 周囲を走り回る子供たちも、それをたしなめる親の姿も、見慣れた光景。

 足元に咲いている見知らぬ花は、かつてなら通り過ぎただけの情景。

 うんざりしていたはずの世界で、その人間は呟いた。


「――……死にたくない……死にたくない……!」




 とある月曜日。

 とある人間は、




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― 新着の感想 ―
[一言] 上は悪い方。 下は良い方。 って感じですか? 下の人はいい人って感じですかね? 生きたいと思っている、みたいな。 上の人は、逆に死にたがってる人ですよね。 この人たちって、全くつな…
[一言] ループというか繋がっているわけですね! 暗い人と明るい人、別の人かと思ったら、気持ちの持ちようの違いなんですね。 生きている人は、死にたくて。 死にそうな人は、生きたい。 とても面白かった…
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