表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

【小短編】気取りじゃない

作者: 小早川黒豆
掲載日:2026/06/15

(あい)ちゃーん」

 私は友人の、藍ちゃんの元へ行った。

「ん?」

 彼女は大きな目をパチクリさせて私を見た。

「ちょっと、ここの式なんだけどさ」

「あぁ、そこ難しいよね。ここね、意外と簡単で……」

 優しくて、なんでも教えてくれる優等生な彼女のことが、私は好きだった。恋愛的な意味じゃない。「友達として」だった。

「ありがとう。藍ちゃん。これで、期末はくぐれるよ」

「ちょっとは勉強しなよ」

 藍ちゃんは誰でも笑顔にするような顔で笑った。

「するよー。絶対ね」

「うん、約束ね」


 異変に気づいたのは、数日後だった。

「あれ……」

 筆箱に入れておいたネコの付箋がない。

 おっかしいなー。無くしたかなと思っていた。でも、筆箱を開けっぱなしにしてた私が悪いかーと思っていた。

 しょうがない。お小遣いが入ったらまた買お。


「藍ちゃん。ごめん。ここも教えて」

「いいよ。どれかな?」

 いつも通り、元気な笑顔で彼女は言った。

「あ、ねぇ、藍ちゃん」

「ん?どうしたの?」

 ほんとにごめんね。疑っちゃって。

「付箋がね、なくなちゃったの。知らないかな?藍ちゃんって、私と席が近いじゃん」

 ピクリと、藍ちゃんに体が震えた。

「し、知らない」

 ガタガタと彼女は震えていた。

「ん……?大丈夫?寒い……?」

「いや、だい、丈夫だよ」

「藍ちゃん?」

「……………………ごめん」

 藍ちゃんは小さく言う。

「なに?どうしたの?」

 藍ちゃんは、自分のポケットから、私の付箋を取り出した。

「ごめんなさい、ごめんなさい…………」

「何やってんの⁉︎」

 驚いてしまった。それで、大きな声を出してしまった。怒ってなどいなかった。今じゃ、弁解するような場所はない。

「その、盗癖で……」

 私は乱暴に付箋を奪い返した。

「…………」

「…………」

 しばらく、無言だった。

「優等生ぶってたの……?」

 思わず、そう聞いてしまった。

「…………ごめん。なりたい自分になってた。ダメだよね。友達の物を取って……信じてたのに…………アアーーーーー‼︎」

 藍ちゃんは、沈んだかと思ったら、頭を抱えて大きな声で叫んで何かを吐き出しているようだった。袖から見えたのは、いくつもの切り傷。

「藍ちゃん……………」

 藍ちゃんはカバンさえ持たずに、帰ってしまった。

 残ったのは、私とカバンだった。


 藍ちゃんのカバンを持って帰ってしまった。土曜日は勇気が湧かなくて、届けれなかったけど今日は持っていける決意ができた。

 インターホンを鳴らすと、藍ちゃんのお母さんが出てきた。

「あ……藍のお友達?」

 妙に沈み込んだ顔をしている。

「どうかされましたか?」

「あの子ね、何回も自傷してたの」

 目線は私に向いていない。

「でも、昨日……睡眠薬を大量に飲んで、首を吊ってたの」

「そんな……」

 もう、どうしようもなかった。

 もう一回だけ藍ちゃんに会いたかった。

 お話をしたかった。

 あと1日早ければ、藍ちゃんは救われたのだろうか。

 でも、私が言ったところでダメだったのだろうか。

 そんな考えが巡っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ