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魔王に討たれた聖女、転生したら魔王の手下の闇精霊でした~それでも私、魔王討伐を諦めません!~  作者: 夜月海歌


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8/8

戦闘ぎらい


「あら、起きたかしら?」


 あれ、寝てた……?


「あの後、そのまま倒れちゃったのよ」

「え……」


 指先が冷たい。握ろうとしても、力が入らない。喉の奥に、まだ鉄の匂いが残っている気がする。


 あの後――あの惨状を見たときだ。

 ばらばらの、死体、血にまみれる景色――。


「カルミア、大丈夫?」

「…………っ」


 私は、戦闘に慣れていると思っていた。でも、あんなの見たことない。……当たり前だ、私は勝利した戦闘にしか参加していないのだから。あれを、あの光景を見て正常でいられる人間などどこにいるのだろう? 無理だ、少なくとも私には無理。


 身体が、震える。恐怖が、私を支配する。


「……カルミア、ごめんなさいね」


 その瞬間、少し意識が遠のいた気がした。ぼんやりとした、まるで毒にでも侵されたような。


「……落ち着いたかしら?」

「あ……」


 私は気づいた。リリアさんが精神干渉をして私の恐怖を和らげてくれたことに。


「……ありがとうございます」

「良いのよ。……本当は、あまりするべきではないのだけどね」


 それはそうだ。精神干渉は――薬にもなるけど、本来は毒。精神力の弱い人間だったら、壊れる可能性だってある。闇精霊は例外なのだろうけど。……それでも危険なのは同じだ。


 ……でも、あのまま恐怖に呑み込まれていたら? それよりは、全然いい。今は心が凪いでいる。さっきまでの恐怖が存在しなかったかのように。


 ……リリアさんには申し訳ないことしたね……。


「……ごめんなさい、取り乱してしまって」

「はじめて実戦を見たのだもの。仕方の無いことだと思うわ」


 ……はじめてではないんだけどね。


「……ルシエルは闘い方が派手なのよ」

「あれが普通ではないのですか、?」

「あれはやりすぎよ。まあ、ああいう戦い方を好む闇精霊もいるの」


 良かった……。あんなことしなくていいのね?


「カルミアは戦闘が嫌い?」

「……出来ることならしたくないです」


 嫌い。戦闘なんて大っ嫌い。


「そう。それでいいのよ」

「え……?」


 闇精霊は闘いが好き。違うの?


「忘れたら駄目よ。……私はもう無くしてしまったから」


 リリアさんは諦めたように笑っていて、私にはそれがちぐはぐな印象に思えた。リリアさんも、昔は戦闘が嫌いだったってこと……? 闇精霊でも、人によって違うのかな?


「ご主人様もね、戦闘が嫌いなのよ」

「え、ご主人様が?」


 あの魔王が戦闘嫌い?


「ええ。誰よりも平和を望んでいるお方よ」

「……そうなのですか?」

「そうは見えないのかもしれないわね。……でも、あの方がいるから大きな争いが起こっていないの」


 ……そうなのだろうか。

 私は、魔王のことを何も知らない。知らないけど、それでも信じられない。魔王は私を殺した。人を殺すのが、平和を望む者がすること?


 ……やっぱり私は魔王のことは信じれない。


「カルミア。戦闘が嫌いなら、強くなりなさい。強ければ、あなたも相手も傷つけることなく決着をつけれるのよ」


 嫌いなのに、強く――。皮肉だ。


「弱いと、あなたが負けるか相手が苦しむことになるから。それが嫌なら、努力するの。あなたならできるわよ」


 ……一理あるとは思う。相手に勝てないくらい弱ければ、私は死ぬ。前世みたいにすぐ死ぬかもしれないし、ちょっとずつ痛みにもがきながら死ぬ可能性だってある。私が勝てたとしても、弱いと一撃で殺せないのだ。時間が経てば経つほど相手を苦しめることになる。


 それなら、強くなった方がいいのだろうか。それは、どちらかといえば人道的な道なのかもしれない。


 でも、そう合理的に考えてしまう私が憎い。私は人間だったはずなのに、少しずつ闇に染まりかけている私を許せない。


 ……ルーカスには、こんなところ見せられないね。

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