後片付け
「カルミア、どうだった?」
「……綺麗でした」
今でも、ありありとその情景が目に浮かぶ。一面に広がる華美な黒薔薇と、針のように突き刺さる深緑の棘。ルシエルさんは、あの光景を1人で生み出したのだ。
「そう、良かった」
「……良くないでしょ」
そう異議を唱えたのはリリアさんだった。
「なんで?」
「……どうして自分から攻撃を受けるのよ」
今、ルシエルさんの身体は血まみれだ。人間の鮮やかな返り血と闇精霊特有の冥系魔力が詰まった漆黒の血。
「いいじゃん。僕の勝手でしょ?」
「……あなたのことを心配して言ってるのよっ!!」
リリアさんの声は震えていた。
「心配なんかしなくていいのに。お節介だよ」
「お節介でも言うわよ。……本当にあなたが死んだらどうするのよ」
リリアさんは真剣だ。ルシエルさんのことを本気で心配している。……でもルシエルさんは軽く受け流す。その溝は、私にでもわかるくらい深い。
「僕が死んでも誰も困らないでしょ」
「……ご主人様が悲しむわよ」
あの魔王は、ルシエルさんが死んだら悲しむのだろうか。私には、魔王がそんな感情を持つようには見えない。……私がただ知らないだけなのかもしれないけど。
「ご主人様、きらい」
「ルシエルっ!!」
……ルシエルさんは魔王が嫌いなんだ。
魔王が嫌いな闇精霊もいるんだね。みんな忠誠心が高いのだと……。
「僕らはただの駒だよ。使えなくなったら捨てられる、ただそれだけの存在なんだから」
ただの駒――私達は命を縛られている。魔王の判断1つで首が吹き飛ぶ。……捨て駒と感じたって、仕方の無いことなのかもしれない。
「ルシエル。カルミアの前では言わないでちょうだい」
「この子に夢を見させるつもりなの? 理想なんていつか崩れるよ」
理想。私の理想は――なんだろう。人間に戻ること? またルーカスと話すこと? 人間と魔族が争わない世界? 分からない。でも、叶えたいことはたくさんある。夢物語だと嘲笑われても、私は諦めたくない。
「……夢を見ることは悪いことではないと思います」
「それは、子どもの考えだよ」
闇精霊にとっては、私は未熟者の理想主義者なんだろう。……でも、私は自分が折れるまで諦めたくない。私の思いは誰にも止められないよ。
「カルミア、気にしなくていいわよ」
「……は、はいっ!」
「リリアはあのこと忘れたの?」
「……っ。もう終わったことでしょう」
リリアさんは珍しく動揺していた。
「あのこと、ですか……?」
「……いろいろあったのよ。また今度話すわ」
教えてはくれないみたい。
「この死体たち、魔族のとこ持ってかないと」
ルシエルさんの言葉に促されて私の視界に入ったのはたくさんの死体だった。
もう美しい黒薔薇はこの場になくて、悲惨な景色だけが目に映る。
さっきまで生きていた生物が、その原型を留めていない。頭と胴体が首で斬られて。鎧まで一緒に斬られて血で汚れている。
怖い、怖い、怖い――
私ルシエルめっちゃ好きなんですけど同じ人いませんか!?!?
感想待ってます!!




