理解できない価値観
「そろそろ休憩しましょうか」
「もうですか?まだ全然できない……」
「焦らなくていいのよ。ちょっとずつやっていきましょう」
「ありがとうございます……」
あれから数時間練習しても、一向に上手くならなかった。できるのは雲みたいにぼんやりとしたものばかり。このまま上達しなかったら殺されるのかな……。
……私はまだ、魔族の空間に慣れない。人間が住む地域よりも魔力の密度が高くて、吐きそうになる。闇精霊は魔力に耐性があるのだから、きっとこの症状は心理的ストレスによるものだろう。
魔力といっても、大気中には天系魔力と冥系魔力の2種類がある。光精霊は天系魔力を、闇精霊は冥系魔力を吸う。だから、私が今吸ってるのは冥系魔力だ。人間や光精霊にとってはあまり良いものではない。
いつか、この魔力に慣れてしまう日が来るのだろうか。この忌々しい魔力を何とも思わなくなる日が――。
そんなことを考えていると、不意にリリアさんの声がした。
「あら、ルシエル」
リリアさんが話しかけた先を見ると、そこには少し小柄な闇精霊がいた。
「リリア、久しぶり。そちらの方は新人さん?」
「カルミアよ。今日召喚されたの」
「よろしくお願いします」
そう言うと、ルシエルさんは微笑んだ。
「よろしく」
柔らくて優しそうな声。でも、どこか冷たい。
次の瞬間、鋭い棘が私に向かって飛んできた。
黒い魔力のこもった棘。
私は咄嗟に横にそれた。戦闘経験があるから、そんなに難しいことではなかった。……でも、本当に生まれたばかりの闇精霊だったら、あんな素早い攻撃を避け切れるわけがない。
「そんなに怖がらないでよ。冗談だし」
冗談であの攻撃? なんなの、この人……。
「ルシエル。この前もやめなさいと言ったでしょう」
「良いじゃん、死なないし。それにこれぐらい避けれなきゃ実践なんて無理でしょ?」
わかんない。なんで。それは攻撃する理由になるの? 死ななくても痛いよね? どうしてそんなことができるの。……やっぱり理解できない。分かり合えない。
「カルミア、ごめんなさいね。ルシエルはいっつも言うことを聞かなくて……」
「……大丈夫です」
リリアさんは優しい。気が利いて悪いところなんてひとつも見当たらない。……でも、だからこそ裏があるのではと私は疑ってしまう。
「この子、素質はあるね。どうして避けれたの?」
「え、えっと……」
聖女だったなんて言えるわけが無いなんて言おう……。
「その目、人間みたい」
「え……」
私は、苦笑いしかできなかった。ルシエルさんには、私がどのように映っているのだろう。もっと振る舞いを気をつけないとね。
「ルシエル、いい加減にしなさいよ」
「えー、だって面白いじゃん。僕は刺激がほしいの!」
ルシエルさんは退屈そうに足元を見つめていた。
面白い、そんな理由で。そう、闇精霊はいつもそうだった。戦闘中も笑ってて、こちらが苦しむのを楽しんでいた。自分が死ぬ時さえまでも。
私には理解できない。理解したくない。
「あんまりやるとご主人様が怒るわよ?」
「……別にいいよ。忠誠心なんてないし」
そう答えるルシエルさんは、少しだけ目を伏せているように見えた。
このキャラめっちゃ大好きなんです
ルシエル良くないですか!?
次回は3月9日更新です!
ストック溜まったら毎日更新にしようと思います
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