長い道のり
「カルミア、問題よ。闇精霊はどうやって攻撃すると思う?」
「え。えっと、……魔力を吸って魔法で?」
「そうよ。じゃあ、戦いの中で最も大事なことは?」
「うーん……。相手に隙を見せないこと、とか?」
聖女の時はそれが1番大事だった。自分が怪我したら回復出来ないから、攻撃されないようにする。それが聖女の当たり前で、身体に染みついている。
でも、闇精霊の戦い方は違うのかな。
「それも大事ね。でもね、1番大切なのは魔力を切らさないこと」
「へ? 魔力って大気中から永遠に吸えますよね……?」
「そうね。でも人間は大気の魔力を奪うの。まだ被害は少ないんだけどその内増えてくるでしょうね。魔力を奪うのは使うためじゃなくてこちらを衰弱させるためなのよ。魔力が枯渇すれば攻撃出来ないどころか窒息して死ぬのよ。だから、戦闘中でもこれだけは忘れちゃだめよ」
「……ひどい」
「え……?」
「ひどすぎませんか、人間。戦いは、正々堂々とするべきですよ。窒息って、そんな苦しい殺し方……」
たとえ敵でも、殺すのは“相手が苦しまない方法”でだよ。本当は殺し合いなんかじゃなくて言葉で分かり合えればいいのだけど、それが無理なことぐらい私にでもわかる。魔剣だったら痛みは一瞬だ。それなのに、わざわざ魔力枯渇を狙うなんて……。人間も残虐だな……。
ルーカスはそんな事しないよね。あの人は、優しいから。
「……そうね。酷い殺し方よ。お互い勝つために必死なのよね」
「…………」
そう答えてくれたリリアさんはどこかやるせない表情をしていた。
***
「まず、基本の花よ」
「花……?」
そんなの、あったっけ。闇精霊って読唱も前触れも何もなしに魔法使うよね……?うーん……。
「私達は花を媒体として魔法を発動するのよ。実体はないから精霊にしか見えないのよ」
「あ、そういうこと……」
だから見た事なかったんだ。ん……精霊だけ? セフィロスには見えてたってこと!? あの子から何も聞いてないよ。なんで教えてくれなかったの!? あの子の私をからかう笑顔が浮かんでくるよ……。
「……どうしたの? 何かあった?」
「あ、いえ!なんでもありません!」
気をつけないと……。
「そう。花はね、魔力をぎゅーって固めて出すの!」
「ぎゅー……??」
あれ? リリアさんって意外と大雑把……?
「ほら。こんな感じよ」
そう言って、リリアさんは私にお花を見せてくれた。
一面に広がった、空から垂れ下がったような薄紫の藤の花。
圧巻だった。これだけの量の魔力を闇精霊は扱えるのか。人間が太刀打ちできないのも無理はない。
「……綺麗ですね」
「そうね。花の種類は精霊によって違うのよ。あなたはどんな花を出すのかしら? 楽しみだわ」
うぅ……。期待しないで……。
ぎゅーって何ですか。それじゃ分かりませんよ!!
……とりあえずやってみよう。魔力をお花にするイメージなのかな? それとも圧縮してから? まず圧縮してみるか。
「……あら。……最初は誰でも失敗するものよ。だから、落ち込まないでね……?」
そう。私がかろうじて出せたのは、花とは言え難い物体だった。ただ白いだけで、形が不安定な……。
練習したところでできるようになるのかな? まだまだ道のりは遠そう……。




