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爛れた心に口づけを。狂愛の魔帝と、殺せぬ魔女の物語。R15  作者: 島田まかろん三世


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 あれから――100年はとうに過ぎた。


 噴水のある中庭で。

 ローズクォーツに似た髪。側頭部からは、捻じれた黒いツノ。

 赤色の瞳は、幼い。


「僕、夢で、()()()()()を見たよ。凄く大きくて、怖かった」


「なにか、側近の私(じいや)に、隠しごとでもあるのですか?」


「……じいやにも、言いたくない」


 拗ねる幼子。

 二本足の年老いた狼は、ふふっと微笑んだ。


「さあ、皇后陛下に、朝のご挨拶に参りましょう」


 手を引く狼の背中は、少し丸まっており、銀色の毛艶は、濁り始めている。

 けれど瞳は、金色に深く澄んでいた。


 心地好い広さの部屋に、天蓋付きのベッド。

 そこに、しわしわの人族が、仰向けで横たわっている。


 周りを囲むのは、凛とした悪魔族のメイド長とメイドたち。

 そして、側頭部から雄々しいツノを生やした威厳ある青年が、傍らに静かに控えていた。皇太子だ。

 その隣には、気品を備えたオリーブグリーンの瞳――皇太子妃。


 狼は、ベッドに歩み寄り、骨張ったしわだらけの手をそっと取った。

 敬愛する我が半身。


「陛下」


 その声に導かれるように。陛下――と呼ばれた人族の女は、満足げに一度だけ小さく息を吐くと、静かに、静かに、その永い旅路を終えた。


 ◇


 迎えに来たのは、彼だった。

 彼は、萎びたその手を、取る。


「おかえり」


 どちらがおかえりか、わからない。

 ただ永遠に、もう二度と、その手が離れることは――ないのです。


           ~完~


 ※コメントです。

 お付き合いいただきありがとうございます。

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