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爛れた心に口づけを。狂愛の魔帝と、殺せぬ魔女の物語。R15  作者: 島田まかろん三世


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魔女の卒業試験

 一進一退の攻防が続く中、伝令の声が悲鳴のように響いた。


「北の城門が――! 食い破られています!!」


「私が行きます」  


 セレスは魔帝の言葉を待たず、黒い風となってその場から転移した。


 辿り着いた北門は、文字通りの阿鼻叫喚だった。  

 屈強な魔族の兵たちが、赤色の影――吸血鬼ノスフェラトゥたちの牙によって、紙細工のように八つ裂きにされている。石床は瞬く間にどす黒い血に濡れ、絶望が城壁を侵食していた。


 セレスは無言でオリハルコンの杖を薙いだ。

 奔った黒い衝撃波は、吸血鬼ノスフェラトゥたちを肉片へと変え、死の淵にいた兵たちが驚愕して見上げる。


「セレス様!!」

「皇后陛下……!!」


「負傷兵の手当てを。ここは、私が引き受けます」


 セレスの視線の先。月明かりに照らされた草原に、一人の男が立っていた。  

 すらりとした長身。麦畑のような金色の髪。湖の底のように静謐で、感情を失った瞳。


 ――モルヴァン伯爵だった。


 セレスは彼の目の前に、羽毛が落ちるような静かさで降り立った。  


「……どうして」


 震える問い。だが、答えは夜空から降ってきた。  

 魔術で練り上げた白い翼をはためかせ、光の粒子を撒き散らしながら降り立つ、聖者。


「――やあ」


 ヘルミスだった。

 その穏やかな微笑みが、戦場の血生臭さの中で異様なほどに浮き立っている。


「地下で見つけたんだ。()()を」


「先生が、杭を抜いたのですか?」


「そうだよ、セレス」


 ヘルミスは、無表情で立つ伯爵の首筋に、白く細い指先を這わせた。


()()は、僕の血を少しばかり吸って、以前よりずっと強くなった」


 聖母のような微笑みを浮かべ、ヘルミスは愛弟子を見つめる。


「やはりきみには、卒業証書を渡すべきではなかったんだ。きみはまだ、何もわかってはいない。……さあセレス。最後の試験の時間だ。()()に勝って、僕を絶望させてごらん」


 ヘルミスが両腕を広げると、背から白い翼が開いた。

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