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産声
一年が過ぎた。
セレスは分娩台の上で、声にならない悲鳴を上げた。
魔帝によく似たツノが、生まれてくるのを拒んでいるようだ。
忌まわしいほどの、強い証。
「腹を裂いたほうが早いのでは?」
という、声が聞こえた。
別の声が言う。
「陛下が――それを望んではいません」
必死に、産もうとしている傍で、勝手に、決断が下されている。
腹立たしい。
この子は、私が最初に抱き締めるのだ。
産声を聞くのは私だ。
◇
生まれた。
その圧倒的な命は、言葉を失うほど、尊い。
産湯に浸かり、原初の声を張り上げる。
暖かな布に包まれて。
ヴェルに似ている。悔しいほどに。
魔帝が分娩室に入ってきた。
その子を腕に抱く。
小さな指が、魔帝の親指を握ったのを、セレスは見た。
「セレス。セレス。セレス――」
魔帝はセレスの額に、自分の額を重ねた。
なんの――つもりだろう。
けれど、今まで、存在していなかった命が、そこにある。




