不浄の猟犬と炎の鳥 - その4
2017年07月21日(金)1時18分 =呪い屋=
「ふぅ...。」
とりあえず4人全員の処置は終えた。使った道具を仕舞い、容態を診る。
最初に体の違和感からか意識を顕現させたのはレイと呼ばれていた少女だった。
「ここは...、どこだ?」
そう言いながら上体を起こすのを彩花さんが補助する。
「正直俺は詳しいことは知らないから、彩花さんの方から説明してやってくれ。」
「ん、正直に言うと私も詳しいことは分からないのです。ただ、何らかが原因で皆さんのお腹が膨張して...、はじけ飛んでいたぐらいしか分からないのです...。」
そう聞いたレイだが、あまり取り乱すような様子は見えずに淡々と疑問を投げかけてくる。
「・・・そうか。それなら、なんでボクは生きてるんだ?」
「多分だが時雨家の力だろうな。」
投げかけられた疑問に俺が間を割って返答をする。
「この地に根付いていた貴族の一つだ。土着信仰と深く関係のある烏丸家、先進技術を取り込んだ職人気質の鈴埜宮家、退魔や呪術といった日本古来のオカルティズムで民衆の支持を集めた時雨家。これらは萌葱御三家と言われる貴族どもだった。そして、時雨家には力の象徴ともいえる秘法があった。それが、解き戻りの秘法。俺が知ってる中で少なくとも過去に干渉できるものはそれと他2つしかないな。」
マシンガントークチックな話し方で二人はポカーンとしている。
「あー、まあ簡単に言えば時を巻き戻したんだろうな。」
そう結論付けてやると、「ああ。」と、理解したような顔をする。
「うーん。俺もとんでもない世界の人間であることは否定しないんだけどさ。君もなかなか肝が据わってるよね。」
「それほどでも。二年前にバカみたいな事件に巻き込まれたもんでね。ちょっとやそっとじゃ驚かないよ。まあ、それにしても次から次へと、こう、現代科学を正面から握りつぶすようなものが現れると本当に参っちゃうね。」
ニッと呆れたような笑みを浮かべていたが、きょろきょろと周囲を見渡してから再びこちらに向き直って、
「そういえばボクの細胞機械の行方を知らないかい?」と聞いてきた。
「細胞機械...、そういえば小熊って人がなんかでかい機械のことをそう言ってたかも...。」
と答えると、「なるほど。」と一言言って彼女は立ち上がる。
「すまないが、出口を教えてくれないだろうか。細胞機械を呼び戻しているんだが、ここじゃ狭すぎるんだ。」
確かに、俺が出会ったアレのサイズじゃ出すのは難しいか。
「そこの廊下を道なりに進めば外に出れるよ。だけど...、いろいろ覚悟は決めておいた方がいいと思うよ。」
先ほどの光ちゃんの様子も加味してそう助言はしておく。それに対して、「わかった、ありがとう。」と言い残し出ていこうとした瞬間に「待って...。」とか細い声が聞こえる。
その声の場所に三者全員の視線が移る。その声は桃花と呼ばれていた子からだった。しかし、その目は未だ開かず瞼で閉じられており、悪夢にうなされているように藻掻いていた。
この感じ、何かトラウマ的なものが刺激されている...のか?
しかしながら、精神面にまで作用する物、それも、正の面に作用する物は全くと言ってない。つまり、自然治癒か何かしらの精神回復法以外の方法しかないというもことだ。
「...確か、津雲だったか。桃花を背負って連れて来てはくれないか?」
んー、どうしたものか。
実際、その案自体は悪くはない。ただ、まだ二人眠ったままであると考えるとその決断をするのも難しい。どうしたものかと悩んでいると彩花さんが俺に向かって言ってくる。
「残りの方々であれば私の方で大丈夫なので、一緒にいってもらっても大丈夫です。」
「...分かった。じゃあ、頼む。」
正直、悩ましいが俺も外の状態は気になるしお言葉甘えることにする。
優しく桃花さんを背負う。そして、レイさんと共にゆっくりと外へ向かうのだった。
4月以降の火曜,金曜にカクヨムで内容を再編して、もう少し見やすい形に加筆したりしたものを投稿していくのでもしよければそちらもどうぞ。
差し当って序章『時を駆け、聖夜に舞い降りる』の前半5話(第一話『鈍く光るはいつかの夢』~第八話『霧深く、やがて刻限は迫りくる』)を事前公開しておきます。
序章は全10話で進める予定です。




