不浄の猟犬と炎の鳥 - その2
2017年07月21日(金)1時20分 =遼太郎深層心理内=
とりあえず、今の状況を冷静に分析しよう。
一つ、鴻と俺で狭間と戦っていたらティンダロスの猟犬とかいう化け物が襲い掛かってきた。
二つ、俺の二重人格みたいなものとか言ってる女が俺の体の主導権を握っている。あと、狭間が言う分にはそいつは同じ部署の壱課に所属しているらしいがそうなると味方であろう狭間を焼き殺そうとした理由がわけわからん。
三つ、なぜか呪い屋から逃げて来た光ちゃんがバケモンみたいな触手を体から生やしてるし、何でか分からんがとても苦しそうにしてる。
四つ、そんな光ちゃんをこの主導権を奪った女は焼き殺そうとしている。
そうなると体の主導権を奪う必要があるんだが...どうしたものか。まずもって体の主導権を奪うなんて芸当できるのか?いや、少なくとも今回こうやって意識を引き込まれたわけだから何らかの行動で主導権を奪うことはできるだろう。ただ、この場にあるものと言ったら...外界を写しているこのモニターみたいなものだけだが...触れてみるか?
指を触れる。まるで水面に触れたかのように形容しがたい感覚に苛まれながらも腕を前に差し出す。
すると、トンッと押され床に背面から倒される。弾かれた...と言うよりは追い出されたに近いか。
であれば、と勢いよく腕を突っ込み鳥羽を引きずり出し、逆に俺が体をうずめる。
だが、鳥羽の体幹が強い所為なのか中々吹き飛ばず二人でモニターの中で取っ組み合う形となってしまった。
「あんた...あそこで寝てればいいものをっ!」
「そうさせるかよ!光ちゃんたちは絶対に殺させやしない!」
「あんな化け物になんて、未来永劫あなたが関わる必要はないのよ。」
「光ちゃんは化け物なんかじゃない!お前こそ何なんだ、変な炎を使って、敵味方問わずに燃やそうとするとかどっちが化け物なんだろうな!」
「でも少なくともあなたはこれ以上踏み込む必要はないのは確かでしょう?あなたはただの人間なのよ。あなたに死んでほしくないから私はこうしているのよ!」
「だったら余計なお世話だ!お前の力なんかなくても俺が死ぬことはない!」
「・・・」
俺がその一言を叩きつけた瞬間、彼女の手の力が一瞬緩んだ。その隙を俺は見逃さなかった。そのまま外へと投げ飛ばし、主導権を奪い取る。
さて、ここからどうするべきか...。そう考えようとした途端、後ろへと手を引っ張られる。何とか踏ん張り耐える。
「しつこい奴だな!今が大事な局面だということ分かってんだろうな!」
そう大声で言葉を投げつけると、
「分かってるわよ。だから、共闘関係を組みましょう?」と言われる。
狐につままれたかのような表情を後ろに向けた俺は、何処か腑に落ちないがそれでも納得したような鳥羽の表情を目にした。
「私は誰も殺さない。代わりに、ここでのあなたの生存のために他者を害す方法以外のとれる手を取る。その代わり主導権を返す。それでどうかしら。」
そう告げる彼女の瞳には強い意思を感じ取れた。強い葛藤を感じ取れた。強い狂気を感じ取れた。
「...これが終わったらしっかりとお前について話を聞かせてもらう。それでいいな?」
「...いいわよ。じゃ、協力関係成立ね。」
とりあえず、誰も殺さないと言質をとった。何の役に立つかは分からないが、それでも言葉に出させるだけでその行為を行うのに嫌悪的な意識が芽生えるって言うのをどこかで聞いた覚えがある。
さて、とりあえず主導権は取り戻したわけだが、ここからどうするべきだろうか。
とりあえず、一番の問題は光ちゃんの暴走状態。それ以外は鳥羽の炎を使えばある程度対抗できるということも分かった。一先ず、光ちゃんの行動を見てからしか何も言えないな。
そう考えながら、外の世界をのぞき込む。
2017年07月21日(金)1時20分 =呪い屋近郊=
「光ちゃん、大丈夫だ。落ち着いて、深呼吸をしよう。ほら、吸って、吐いて。な?」
とりあえず光ちゃんを宥めてみる。だが、あまり効果がないどころか、縦横無尽に振り回していた触手が俺の方に向かって飛んでくる。
【狛凪流・陰 十六夜】
薙刀に青い炎が乗り、鋭く伸ばされた触手を弾く。どうやら炎が苦手なようで一発喰らってからはうかうかと手を出さなくなった。
ただ、触手は周囲にいるまた別の標的に当たりを付ける。運悪くその先に居たのは、桐藤さんだった。




