アイホートの雛の追放 - その7
2017年07月21日(金)1時03分 =萌葱町警察署正面玄関=
「なかなか様になってきたんじゃない?」
頭がグラグラする。あれから何度も打ち合い、飛ばされては壁や地面に体を打ち付けている。
すでに体の節々からは痛みの電気信号が絶え間なく送られ続け、どこかで出血をしているのだろうか、徐々に刀を握る握力も弱まってきている。指先の感覚も、体温も鈍く、感じ取りにくくなってしまっている。だが、まだだ。まだ、この人を留めなきゃいけない。燈樫さんが頑張っているんだ。
ここで、倒れるわけには...。
グラりと視界が歪み、端から霞む。そして、冷たい地面の感触が俺を包み込む。
「さすがにもう限界か。」
カチャンと鞘に刀を納める音がする。
「6年前、私たちが出会ってから今に至るまで。君は、大きく変わった。だけど、まだ足りない。」
地面に仰向けに倒れている俺の横にしゃがみ込み、俺の下顎を無理やり開かせられる。
「ほら、呑みな。苦いけど効果は覿面だよ。」
そう言って俺の口の中に粉のようなものを注ぎ込まれる。
「まだまだ、強くなってもらわなきゃいけない。でも、しいて言うのであればね。」
最後の力を振り絞って嚥下をする。
「私と戦いながら別のことを考える余裕があるってのはなかなかすごいことなんだよ。」
ドクンと心臓が大きく跳ね上がる。ドクン、ドクンと心臓が次から次へと血液を送る。手首、掌、指の付け根、第一関節、第二関節、指先。じんわりと血液が行き渡り、暖かさを感じる。そして、感覚が鮮明になる。視界のぼやけも徐々に収まり、夜空に光る星々たちが俺を見下ろしているのが鮮明に映る。
「わかってたんですか。」
「流石にね。多分だけど、津雲巡に用があるんでしょ。」
まあ、わざわざ警察署に来て戦いに来る理由はそれか俺の任務ぐらいしか無いだろうしな。簡単に想定はできるだろうな。
「・・・かないませんね、ほんとに。」
「で、個人的には通してあげたい気分満載だけど、これが仕事だからさ。私はもう行かなきゃなんだよね。」
【霞城流 明光】
【細胞機械 試作品 6号】
刃と機械が俺の真上でぶつかり合う。
「だからって行かせると思う?こっちにもいろいろ事情があるんだけど。」
「それはお互い様、じゃないかな。」
俺を挟んで二人が向かい合う。このままだと俺巻き込まれる...?
「どこぞの人が何やらヤバいものも解き放っちゃったみたいだからね。ここは無理にでも押し通させてもらう。」
【霞城流 奥義 六華覇衝】
「ッ...!」
寸でのところで文野が避ける。しかし、一手遅れた分パーカーの胸部部分が切り裂かれる。
「馬鹿!女の子の胸部分を切り裂くとはお前ほんとに女かよ!」
「いや、そう避けたのあなたでしょ。それに、切り裂かれる胸がなくてよかったわね。」
「・・・チィッ!そーですよどうせもうこの身体は成長しませんしーだ。そっちこそサラシで抑えてるけど結構限界なの知ってるんだぞ。おとなしくブラでも買ったらどうだ。」
「だったら今度買い物に付き合ってくれるかしら...って、スポブラぐらいしか買わない人には酷だったかしら。」
何でか分からん、何でか分からんがこれは非常にマズい。いや、時間稼ぎとしてはいい。ちょうどいいんだがトークテーマがマズい。何がとは言わんがマズい。それにこのままだと...。
「ハハッ...」
文野は俯き、そこには何もないことを再確認してから、奈穂さんの方に向き直る。そして、「ぶっ飛ばしてやる!」ほらマズいことになった。
多少は飲まされたあのよくわかんない粉のおかげで動けるようになってきたので巻き込まれないように端へ這いずって避ける。
文野はどこから引っ張り出してきたのかと言う程の夥しい量のドローンをこれまたどうやって操作しているのか不明だが編隊飛行をさせながら奈穂さんに襲い掛かる。
それに対して奈穂さんは的確な刀さばきで一台一台をいなし、的確にプロペラの部分を剣先で砕き壊してる。バケモンすぎるだろ。
しかし、やはりというか数の差には勝てないようで服の裾が切り裂かれたり、髪の毛が先から少しずつ刈られたり、刀の先が刃こぼれさせられそうになっている。
これが女同士のガチバトル...。なんて恐ろしいの....。




