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終わりなき理想郷  作者: DDice
空よ哭け、地よ呻け、空虚な夢物語は終わりなく
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八咫烏は見ている - その5

「だからそんなに桃花(ももか)ちゃんの機嫌が悪かったのね。」

「そうなんです!気分悪そうにすれば今度こそレイちゃん止まるかなって思ったら逆に連れて行っちゃうし!」

「ダメよ桃花(ももか)ちゃん。そういう時はねぐいぐい行くもんよ。そうすれば、振り放す気は起きないものよ。」

「あのなぁ、純情な乙女に変な知識植え付けないでくれ。どのみち、僕は止まるときは止まるし、止まらないときはどうやっても止まらないさ。」

「だからそれをやめてって言ってるでしょ!」

 車内で僕たち女性組で談笑していて、それを左から右へと聞き流しながら運転している(ひのき)君がちょうど赤信号で停車した瞬間に僕たちに向けて話し出す。

「それで、そっちがどうだったかは分かった。こっちが見つけた情報なんだが、(ひかり)ちゃんの親、既に両方とも()()()()だった。父は烏丸(からすま)孝標(たかすえ)の次男、烏丸(からすま)(じん)。母は鈴埜宮(すずのみや)(そら)。歴史書もあったが、どうやら烏丸(からすま)家と鈴埜宮(すずのみや)家、そして時雨(しぐれ)家は三竦みのようなものだったみたいだ。そして、近年になって時雨(しぐれ)家を烏丸(からすま)家が吸収したことで今の状況になったらしい。つまりだ、(ひかり)ちゃんは…言葉を選ばなければだが、双方にとって()()()()()()であったのだと思われる。まあ、仮説だがね。」

「ふむ。そうなると無理に連れていくというのも不味いんじゃないかな。それこそ、烏丸(からすま)だけでなく鈴埜宮(すずのみや)にもだが。」

「それなんだけどね、(ひかり)ちゃんは両親の死後の行方が分かっていないみたいなの。だから、生きているかどうかも分からないみたいなのよね。」

「それでも、小さな子であればどこかしらに保護されている可能性があるわけだから。そういう機関に行ってみるのも手じゃない?」

「逆に聞くが、一大家系である烏丸(からすま)家がそれを認識していないとでも思うのかい?」

 烏丸(からすま)財閥はサービス業に重点を置いた会社だ。宿泊、飲食、交通、少なくともこの街(萌葱町)の中で烏丸(からすま)財閥の恩恵を受けずに暮らすのは難しいだろう。

 それこそ、託児などの場合は知らぬわけがないだろう。個人の場合もあるだろうが、さほど大きい都市ではないからわざわざ好んでそんなことをする人もほとんどいないだろう。それに、そのような個人活動をしているならば気づかないわけがないだろう。

「そうだな。ないとは言い切れないが可能性としては低いだろう。そうなるとありえるのは、鈴埜宮(すずのみや)で保護されているか、もしくは…。」

「どこかで野垂れ死んでいる可能性。それか、考えたくはないが少女嗜好者(ロリコン)に襲われている可能性もある。」

「どのみち、気分がいいものではないわね。」

 (あゆみ)さんがそう言ったのを皮切りに車内に重苦しい空気感が張り詰める。

 実際、犯罪件数的には減少傾向にはあるがそれでも0ではない。ただ、この件に足を踏み込んだ時点でその懸念をする必要があるというのも、何とも言えないものではある。

 そこから2時間ほど、グネグネと道路を練り走りながら車を走らせて住宅街へと入り込む。すると、何やら変な感覚がこの身を包み、離れていった。そして、すぐさま急停車をされた。おかげで僕と桃花(ももか)の二人が激しく前の座席に激突する。

「一体どうした!?」と声を荒げると、

「急に人が現れてね。思わずブレーキを踏んだんだが...。」と冷や汗を浮かべながら苦笑いをする(ひのき)君が答える。

 すると、コンコンと運転席側の窓を急に出てきた人に軽く叩かれる。

 少しだけ開けて、(ひのき)君がどうしたのかと問うと、

「警察の者です。すみませんが、この近くで少女の誘拐事件が起こっていまして、一時的に立ち入りを規制しているのですが。」とその人物は警察手帳を提示しながら答える。

 その警察手帳には『警視庁(けいしちょう)公安部(こうあんぶ)対神性(たいしんせい)特務課(とくむか)弐級職員(にきゅうしょくいん) 穂積(ほづみ)伸二(しんじ)』と印字されていた。なるほど、()()()関連なのか。なかなか面倒なことになるぞ...。

「君、その少女って色白で長い銀髪の女の子かい?」と後部座席の方から聞くと、彼は困ったようにしている。

 どうやら、心当たりがありそうだな。であればと、(ひのき)君の左の肩を軽く叩き、「この先にいるかも」と小声で伝える。すると、(ひのき)君が左目でウインクし、窓の外にいる彼に対して、

「わかりました。では、先を急いでいるのでこれで。」と、一気にエンジンを吹かして彼をおいていく。

「あっ、この。待て!」と、彼は全速力で走りだす。彼も想像よりも足が速く、トップスピードは車とさほどの差がなかった。なかなか彼も化け物だな。しかし、トップスピードを超えてから徐々に彼の速度が落ちていきすぐに息を切らしたのだろう、後部の窓から彼が息を切らしているのを目にしながらそのまま進んでいった。




「それからは、君たちを発見して回収して逃げてきている。まあ、僕たちの今までの行動はこんなものさ。」

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