集えよ、災禍を逃れし者たちよ
「なんで、ここに?」
俺ら二人は、本来ここに居るはずのない男が居ることに驚きを隠せなかった。そして、奏介の隣に彼が座ると、
「君たちに、今回の事件に関して協力して貰いたい。」と、率直に言った。
今回の事件、つまり聖夜前災についてだろう。しかし、どういうことだ。今は一体どうなっているんだ。そのように、脳内が疑問に苛まれていると坂下さんが口を開いた。
「あー、とりあえず説明をしておいた方がいいか。まず、今は12月23日の14時48分。あの時から2時間程巻き戻っている。」
「…はい?」
今この人、『巻き戻った』と言って、いやいやいや。そんなことあり得るのかよと言っても、現に俺ら二人の意識はここにあるわけで。じゃああの爆発は今は起きていないのか。だったら早く行かないと、でも行ってどうするんだ。といった風に脳内の思案が何週も何週も巡り巡っていると坂下さんが喋り始める。
「思案に耽っている最中で申し訳ないが、あまり時間がないので続けさせてもらうよ。あの爆発事故だが、どう考えても不可解が過ぎる。そこでだ、君たちにはあの爆発による被害を減らしてほしいんだ。」
「減らしてほしいって、一体どうやって減らすんですか。仮に僕らが避難誘導するとしても時間が圧倒的に足りなくないですか?」と奏介が坂下さんに提言すると、
「それに関してはいろいろ考えてある。ただ、そのためにはここでただ喋っているだけじゃどうしようもできないからね。ここは俺が払うから先に外で待っていてくれ。」と坂下さんが喋る。そして、俺らはなされるがまま喫茶店の外へと追い出されていった。
追い出された直後、俺らの目の前までヘルメットをかぶった一人の好青年がやってきた。そして、
「君たちも坂下に呼ばれた口かい?」と俺らに聞いてきた。その声を聴いて、俺が思い浮かべたのは一人の男性だった。
この街、萌葱町のランドマークである萌葱山の管理を任されている伊藤浩輔さんがヘルニアで入院しており、現在バイトで入っている大学生の人がいる。確かその名前は、
「もしかして、青木兄さん?」と思い浮かんだ人物の名前をあげてみるとその人物はヘルメットを外す。するとそこには見覚えのある青髪、思った通り青木兄さんだった。
「正解っ!いやぁ、互いにずいぶんと面倒なことに巻き込まれちゃったみたいだねぇ。せっかく休みだって言うのに散々って感じ。困っちゃうよねぇ。」と青木兄さんはへらへら笑っていると、カランカランと音を立てて坂下さんが喫茶店から出てくる。
「お前ら知り合いだったのか。というかあと一人居たはずなんだが。青木君、彼女はどこに行ったんだい?」
「彼奴ですか。そう言えば見てないですね。どこに行ったんでしょうねぇ。」と二人が首を回して周囲を確認しているのに追従して俺らも首を回して周囲を確認するがそのような人影はない。そして、探すのを一旦あきらめた坂下さんは自前のメモ帳にさらさらっと何かを書くと俺たちに破って渡してくる。
「まあ仕方ないか、とりあえずここに居る3人には俺の電話番号を渡しておく。だから、死ぬ気で覚えろ。時を戻すと電話履歴とかもすべて消えるからな。2時間で覚えるんだ、頼むよ。」と言う坂下さんに対して奏介は、
「それで、結局どうやって被害を減らすんですか?」と坂下さんに聞いた。
その瞬間、「それは私が説明しよう!」とローラースケートで少女が走って来た。
「あー、やっと来たか。今回協力して貰う最後の子である文野君だ。」と坂下さんは苦虫を噛み潰したような顔で彼女を紹介している。それに対して彼女は、
「違う違う、天才発明家の文野徠ちゃんです!」と不服そうにしながらも、彼女は奏介の疑問を解消しようとしていた。
「さてさてさーて、どうやってあの惨劇の被害を減らすかですが、単純に言えば強制的に立ち退きをしてもらうしかありません。というか、それ以外の方法だとあの爆発自体を止める必要があるのですが、端的に言えば不可能ですね。どうやっても時間が足りません。それに原因不明ですから解決を目指すのは困難であると考えます。」
そう端的に、淡々と告げている彼女はまるで人造人間のようだった。しかしながら、彼女の瞳には並々ならぬ熱情を垣間見えた、気がする。
「そのため、我々の最終目標としては死傷者数を100名以下とすることです。」そう彼女が告げた瞬間、
「もっと、助けられないのか?」となぜか自然にも俺の口から言葉が吐き出されていた。
「...不可能ではないです。しかしながら、前ループ時の世界線での死傷者数はおよそ2万人。そのため、1万9900名の命を助けれさえすればA評価です。それ以上は爆発の中心にまで介入する必要がありますが、あなたの命が惜しいのならやめる方が善いと進言はします。」と、彼女は少々言葉を選びながらも俺の質問に答えてくれた。少しの静寂が間を抜けた時、
「ちょっといいか?」と青木兄さんが静寂を切り割った。
「結局避難誘導をするとして、単純な呼びかけとかじゃ効果は薄いと思うんだけれど。どうするつもりなのさ。」その問いに対して彼女は、
「いくつか案はあります。ただ、その案を実行するためにはいくつか下準備が必要なのです。たとえば、電波妨害をするにもテレビ局などの全体に送れる通信環境が必要なのです。」と言ったが、どう考えても犯罪ではないだろうか。そう思い坂下さんの方を見たら、彼は何も聞かなかったように仏のような顔をしていた。その瞬間俺は、彼女の言っていることに関して坂下さんは考えるのをあきらめたな、と察するのだった。
思ったよりも進まなかった!!!