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終わりなき理想郷  作者: DDice
空よ哭け、地よ呻け、空虚な夢物語は終わりなく
16/60

再び舞い降りて、地を踏みしめる

色々終わったので再開

 そしてあれから苦節六年。どうにかこうにかやり切った俺は警察官となり、そして対神課に所属するための最終試験を受けるために再び萌葱町(もえぎちょう)に舞い戻ってきた。

 ただ、それだけでなく坂下(さかした)さんからのおつかいもあるのだが、まあとりあえず警察署に行って最終試験を受けてからでも遅くは無いだろう。



「やあ、久しぶり。どうだった、警察学校の日々は。」と、待ってましたと言わんばかりに奈穂(なほ)さんが出迎えてくる。

「まあ、どうにかこうにかって感じですね。そういえば、最終試験の担当者って誰ですか。」

「そうだね、まずはそれについてだよね。君の最終試験の担当はね、私だよ。」

 いや、いやいやいや。俺も馬鹿じゃないからしっかりと対神課について調べていたからわかっていたんだが、対神課の最終試験は壱級職員が担当しているらしい。それもたった10人しかいない職員がだ。そして、誰もがそれぞれの得意を元に試験を繰り出してくるらしい。聞いた限りだと坂下(さかした)さんは致死性の高い任務を何度も何度も繰り返して解決させることを最終試験としている。まるであの時の事件のようなものだ。そしてこの人は、

「私が君に課す最終試験はね、私に何が何でも一撃を入れること。正面突撃でも、夜襲でも、奇襲でも。どんな手を使ってでも私に一撃を入れればいいの。」と(のたま)いだした。

 正直に言って無理でしょ。あの現場に俺もいたんですよ。あんな化け物に真っ向から空中戦を持ち込んでトントンな人間に一般人にほど近い人間が一撃入れれるとお思いで?

 まあでも、それそれの得意だもんな。あの人、聞いた限り公安の最高火力とか言われてるんでしょ。そりゃまあ、攻撃力の異常さはこの目で見てはいたけどさ。山を切り裂く人間に一撃入れろとか無理すぎでしょ。

「そんなに悩まなくってもいいのよ。奈穂(なほ)ちゃんの試験を一発でクリアした子はいないから気楽にやるといいわよ。」と急に後ろから話しかけられる。

「姉貴、人の背後をとる癖、また出てるよ。」

「あら、そうね、ごめんなさい。私、穂積(ほづみ)香苗(かなえ)っていうの。よろしくね。」

 穂積(ほづみ)香苗(かなえ)、その名前は聞いたことがある。確かこの人も壱級職員だったはずだ。俺も馬鹿じゃないからしっかり対神課について調べているさ。それで分かったのは壱級職員は化け物ぞろいということ。公安内での最大火力の称号を持つ奈穂(なほ)さんに、時間遡行(タイムリープ)ができるという特性の坂下(さかした)さん。魔導技師の谷津倉(やつくら)さんに公安最強の称号を持つ浜崎(はまさき)さん。ほかにも数人いたがあまり覚えてはいない。

 そして、内部情報曰く穂積(ほづみ)香苗(かなえ)さんの持つ特性は、空間の掌握。うん、まったくわからん。まあ、いつか目にすることがあるだろうし特段気にする必要はないだろう。

「えーっと、どうも。確か最終試験に来た(こがらし)さんですよね。案内役の穂積(ほづみ)伸二(しんじ)です。よろしくお願いします。」

「こちらこそよろしくお願いします。ところで、案内役とは?」

「まあまあ、待ってください。まずは最終試験についてから説明しましょう。まず、あなたはこれから最終試験が終わるまでここを離れることが禁じられます。今回に関しては霞城(かじょう)さんたちが任務を終わるまでが最終試験の期間です。その間、基本的には寝食をこの街の中で行っていただきます。そして案内役である僕は試験内でのあなたが取る行動などを確認させていただきます。その結果によって(こがらし)さんに行ってもらう職務が変わります。」

 つまり、優秀な結果であればより難易度の高い仕事を割り振られる、そう考えていいんだろうな。

「ただまあ実のところ、今回の最終試験というのはあまり重視しておりません。過去に坂下(さかした)壱級職員の最終試験と同じ状況下で大多数の人命救助を成し遂げているという時点でほぼ結果としては出ているのですが。ただ、そこにいる二人が(こがらし)さんの今の実力を確認したいと言い出し始めたので仕方なく、という感じです。そんな感じなのであまり試験に関しては気を抜いてやっていってください。さて、それではここで油を売っていてもしょうがないので仮眠室まで案内しますね。」

 なんだろう、無駄に公安内での俺の評価が高いというのが分かったのにあまりうれしくない。

 つまりこの人が言いたいことって『あなたは既に結果が決まっているけれども、この人たちが駄々をこねたので仕方なくあなたに最終試験を受けさせます』ってことでしょ。うわ、すごくヤダ。

 すっごい嫌になりはしたが、ここで俺が駄々をこねても平行線で何も変わらないので渋々こちらが折れることとしよう。やれるかどうかは分からないが、どうにかして一発ぶち込んでこの試験を終わらせてやろう。

 そう考えていると奈穂(なほ)さんに呼び止められる。

「あ、そうそう。最終試験は今から開始だからいつでも来ていいよ。」


 この人は戦闘ジャンキーか何かなのだろうか。ただまあ、いつ開始するのかが分からなかったからさっさと開始の合図を出してくれるのはありがたいか。でも、今日はなんだかんだで疲れたし一回休ませてもらうことにしよう。なぜならば、明日は坂下(さかした)さんのおつかいをする必要があるからな。何気に体力仕事だから今日ぐらいはのんびりしてもいいだろう。

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