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終わりなき理想郷  作者: DDice
時を駆け、聖夜に舞い降りる
15/31

聖夜至りて、災禍は終わる

「それでは一応事件を解決したということで、乾杯!」


 聖夜前災(せいやぜんさい)から二日後、俺たちは文野(ふみの)の部屋で祝勝会を始めていた。が、いくつか気になることがある。

「なんでそこに車いすに乗って包帯でぐるぐる巻きになっている奈穂(なほ)さんが居るんですか。」

「全身に火傷を負ってるけどそっちはそこまででね。体中に筋肉と骨がズタズタになっていたみたい。あの時はアドレナリンのおかげで痛みがなかったけど今じゃ腕を動かすのすら至難の業って感じ。まあ、あと二、三日したら回復するだろうけどね。」

霞城(かじょう)さん、それ結構人間やめてませんか?」

「そんなことよりさ、なんで私の部屋で祝勝会してるのさ。家主である私は納得してないんだけど。」

「まあまあ、皆さん落ち着いてください。色々話したい気持ちもわかりますけど、まずはそこでしゃべりたがっている(まもる)さんに話させてあげましょうよ。」

 皆それぞれが生きているという現状を噛みしめながら和気藹々(わきあいあい)と今を過ごしている。

「よし、じゃあ飯を食べながらでいいから今までとこれからの話をする。まず(こがらし)。お前には昨日に伝えた通り今後どうするかを決める必要がある。祝勝会が終わった後に聞くからよく考えてくれ。それと、他のみんなもだ。青木(あおき)文野(ふみの)和泉(いずみ)。お前らもこれからどうするか考えておくといい。もっとも、文野(ふみの)には面白いやつが来ているみたいだけどな。」

 そう言いながら坂下(さかした)さんはひらひらと一通の封筒を見せつけている。

DEMデウス・エクス・マキナ社から直々の封筒だなんて結構将来が有望じゃないか。まあ、一つ気になるのはこれがゴミ箱に捨てられていたことなんだが。そこんところ、どうなんだ。」

 DEMデウス・エクス・マキナ社。確か俺の記憶違いじゃなければIT企業の最先端を進む大企業のはずだが。わざわざ一個人に直接送りつけてくるってことは、想像以上にこの人優秀なんじゃないのか。

「どうなんだって言われても、わざわざそんなところに行く気にもならないし。それに、あそこに行かなくても私が大天才ということに変わりはないからね。そんなことに時間を費やせるほど暇はないのだよ。」

「そうか。まあ、お前がそう考えるのならいい。ちゃんと未来のことを考えているんだからな。さてと、まあ今回はそんなことを話すために集まってもらったわけじゃない。お前たちも気になっているだろうアレについて少しわかったから共有することにする。」


 長い話だったから要約をすると『アレは光プロジェクトと呼ばれるものによって生み出された産物らしい。そして、本来はあそこまでの凶暴性はなく友好的な存在らしいが、何らかの影響で凶暴性が高まりあそこまでの被害を起こしたらしい。また、捜査を進めていくにつれ鈴埜宮(すずのみや)烏丸(からすま)の双方が関与していることが判明。その後、両企業に捜索が入り結果的に鈴埜宮(すずのみや)家現代当主である鈴埜宮(すずのみや)(さかえ)と本プロジェクトに関係するそれぞれの企業の研究員、作業員、従業員含め37名をテロ等準備罪として書類送検した。』ということらしい。

 なんともまあ、あっけない幕切れではあったがいつものような日常が戻ってきたと考えればこれでよかったのだろう。そして、俺はこれからのことを考えなければいけない分岐点にいる。

 あの事件(聖夜前災)で結局俺の両親が死に、頼る先がなくなった俺は坂下(さかした)さんと昨日話していた。最終的に、高校の卒業までは国から支援をしてくれるのだそう。だから、坂下(さかした)さんが聞きたいのはその後、卒業してからどのような道を選ぶのか。今まではぼんやりと生きてきたが今の俺には明確になりたいものがある。それは、―――




 祝勝会もほとんど終わりみんなが片づけを始める中、俺と坂下(さかした)さんは文野(ふみの)の家のベランダに出ていた。

 雪も降り始めており、吐く息すら白く空気を濁らせた。けれど、あまり寒く感じはしなかった。

 そして坂下(さかした)さんに向けて一言、俺がどうしたいかを伝えた。

「その選択に後悔はないんだな。今なら引き返すこともできるが、本当にいいんだな。」

「何度も聞かなくても、俺の意志はそう簡単には変わりませんよ。俺は、公安になりたいんです。」

「・・・そうか、わかった。だがそこまで行く前に、まずは警察になる必要がある。ただ、そこまで気張らなくていいさ。これから頑張ればいい。だから、しばらくは普通の日常を噛みしめろ。戻りたくなっても、入っちまったらもう戻れないからな。」

そう言うとポケットから煙草とライターを出して煙草に火をつける。そして、雪の降る空の下に煙草の煙が混じり、消えていく。

 今年のクリスマスはいつもと違ってなんだか暖かくて、そして今までのどんな時よりも冷たかった。

前日譚完です

第一章は4月から更新再開しますのでそれまでしばしながらお待ちください


おまけ ~キャラクターの軽いご紹介~


【凩 和葉 (こがらし かずは)】

本作のメイン主人公

適応力的には最強だがそれ以外はいまいち

ただ、いろいろ技術を吸収するのでこれから強くなる


【和泉 奏介 (いずみ そうすけ)】

メンタル雑魚だけど魔術適正あり

発想力や学力とかも群を抜いて優秀だが傾倒すると帰ってこなくなる

この中では最初に死ぬぐらいには弱い


【青木 江西 (あおき えにし)】

足&戦闘要員

感じは近所にいる優しいお兄ちゃん

乗り物の操作はピカイチだし、戦闘の心得もある探索者の鏡


【文野 徠 (ふみの きた)】

世界最強のメカニック

実はこの中でも最年少なのだが、誰よりも発想力が強い

一人で世界を破壊しようと思えばできる変態


【坂下 鎮 (さかした まもる)】

既婚者の時間遡行者

壱級職員の中では雑魚(普通の人間では上位存在)

実はこの能力自体はこいつ自身の力ではない


【霞城 奈穂 (かじょう なほ)】

武力だけなら最強の刀術使い

壱級職員の純粋な力であれば最強だが、現時点ではそこまで

霞城流は元は刀術ではなく舞の一種

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