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終わりなき理想郷  作者: DDice
時を駆け、聖夜に舞い降りる
12/31

聖なる夜を前にして災いを討つ - その3

「仕方ない。メンテ中だったけどこんな状況だし、全部展開するしかないか。」

 地上は火の海となり、空を当然のように飛び移る二人を追いかける。それを横目に文野(ふみの)さんはドローンの制御をするためのタブレットとにらめっこをしている。

 もう少しすれば住宅街を抜けて萌葱山(もえぎやま)の裾野に入る。そこまでいけば多少暴れても住宅街や避難した人たちに危害が加わることはないだろう。周囲には人の姿もないし、車しか...。


 ()


 あの車、見覚えがある。ナンバープレートもなんとなくだが覚えがある。アレは、

文野(ふみの)さん。今すぐ僕をあの車の方に近づけさせてください。今すぐ!」と声を荒げて訴えると理由は分からずともすぐさま僕が装着しているドローンを操作してくれた。

 あの車は、和葉(かずは)の家の車だ。なんでこんなところにまで来ているんだ。避難してくれれば、避難?

 まさか、和葉(かずは)を探していたのか?

 だとしたら不味い。このままだとあの戦いに巻き込まれてしまう。すぐにここから離さないと。


 しかし、僕の手が届く前に()()が来た。


 わざわざあの化け物はこっちの車に方向を転換して突っ込んできた。意表を突かれて奈穂(なほ)さんの動きがワンテンポ遅れた。僕じゃ届かない。いや、()()()()


『▤▨❖☒▥▤☒!』


 あの化け物の軌道がずれる。しかし、それではあの化け物は止まらない。両腕を玉虫色(たまむしいろ)の触腕に変化させ車に張り付いた。だが、()()()()()遅らせた。


霞城流(かじょうりゅう) 奥義(おうぎ)  六華覇衝(りっかはしょう)


 横一文字に化け物を切り裂いたそれは顔面から肩、腹を通り足に至るまでそぎ落とす。ただ何度も見ている。あれは、殺せてはいない。全員が切り離した方に注意を向ける。



 ()()()()()()()()()



 背後からぐじゅぐじゅと再生する音がエンジン音に紛れて幽かに聞こえる。気づいた数名だけがそちらを確認して見てしまった。内部に入り込んでいる(もう手遅れだ)ということを。

 車の中から悲鳴が聞こえる。しかしそれはすぐに止み、車も止まった。


 僕は、助けられなかった。助けられたはずなのに。一番早く気付いたのに。なのに、僕はなにもできなかった。どうして、どうして、どうして...。





 あれはもうだめだろう。自責の念に駆られている。おおよそ予測はついたが、見知った人物なのだろうそれを半分見殺しにしてしまったというのは中々、心に来るものがあるだろうね。でもここは戦場、自己の危機管理を怠った彼らの方が悪いだろうとは思うがそんなこと言うだけ無駄だろう。和泉(いずみ)君を近くの住宅街のベランダに置いておくことにする。放心状態の彼なら特に何か気にすることはないだろう。それ以上に気にするべきなのはアレだ。

 なぜ霞城(かじょう)さんではなくあの車を襲ったのか、理由はわからないけども何か意図があるのだろう。

 霞城(かじょう)さんが再び燃やそうと車を切ろうとした瞬間、車の窓という窓から赤い汁を滴らせうねうねと芋虫のような小さい何かが飛び出してくる。しかし、そのまま気にせず霞城(かじょう)さんは、


霞城流(かじょうりゅう)  煌々流転(こうこうるてん)


と車を横に真っ二つにした。多分乗っている人物は死んでしまっているとはいえ酷いことをする。まあ、死んでいるかもしれない人物よりまだ生きている数万人の方が大切だということは重々承知だ。そして、切られた車は爆発を起こし、周囲に巻き散らばった芋虫みたいなもの諸共燃やし尽くした。しかし、爆発によって跳ね上がった霞城(かじょう)さんに対して距離を一気に詰め寄り化け物は攻撃を加えようとするが難無くその攻撃をかわして、


霞城流(かじょうりゅう)  木霊討(こだまうち)


と突き上げる。そして刀を鞘から抜刀して流れるように、


霞城流(かじょうりゅう) 奥義(おうぎ)  天衣無縫(てんいむほう)


萌葱山(もえぎやま)の方へ薙ぎ払う。そしてそのまま宙を舞い、あの化け物は萌葱山(もえぎやま)の裾野に着弾する。私を含め和泉(いずみ)君を除く全員が着弾地点まで急ぐ。バイクに跨っている二人は住宅街の家々に阻まれて遠回りを強要されているらしく、このままいけば私と霞城(かじょう)さんが先に到着するだろうけど、坂下(さかした)はバックアップだから前線を張りに来るには遠すぎるだろうから来れないだろうね。まあ、あの人も暇ではないだろうから多分何かしてくれてはいるだろうけど、まあそんなことを今考えても仕方ない。今考えるべきはアレの攻略法だ。


 確認できている限りアレの行動パターンは見ていた限り五種類ある。

 一つ、玉虫色(たまむしいろ)の触手。強度はそこまでないが汎用性が高い。それ以上に全体を液状化に近いことができるようなので攻撃が通りにくい原因もそれかもしれない。

 二つ、不可視の斬撃。これに関しては気配で判断するしかない。ただ、ここまで使ってこないとなると使うのには何か条件があるのかという点で勘繰らざるを得ないね。

 三つ、芋虫。何らかの方法で生み出しているが脅威度は不明。そこまで耐久力とかもなさそうだからあまり気にする必要はない...かな。

 四つ、空中浮遊。あの動きを見ていて分かったけれど、アレは()()()()()()()。それ以上に、落下しているような動きで空中を移動しているから重力を変えるみたいなインチキな力があってもおかしくはない。

 五つ、不死。絶対死んだと思える状態でも復活する。多分破片の一つでもあれば復活するっぽいけれど、詳しくは不明。ただ、二体になって復活する、みたいなことはないみたいだから復活する方は自身で決めれる可能性が高いね。

 相当な無理ゲー過ぎるけど、どこかに絶対破綻する点があるはず。そこまで超人無敵みたいな存在なら必ずどこかに負荷のしわ寄せがかかっている点が絶対にあるはず。逆になかったらどうすんのって感じだけど。


 いや、待てよ。確かあれは火で動きが鈍る。ということは、もしかしてだけど攻略法見つけちゃったかもしれない。その推論を確かめるためにトランシーバーで坂下(さかした)に直接伝える。

「ねえ坂下(さかした)、あるものを今すぐに用意してほしいんだけどいいかな?」

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