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終わりなき理想郷  作者: DDice
時を駆け、聖夜に舞い降りる
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聖なる夜を前にして災いを討つ - その2

 15時22分、俺と青木(あおき)兄さんはバイクで作戦実行地点に到着していた。

「こちら青木(あおき)。所定の位置についたぞ。」と青木(あおき)兄さんは坂下(さかした)さんに支給されたトランシーバーで他の地点で待機しているだろうみんなに報告をする。するとトランシーバーから「了解」と返答が返ってきた。

 それを横目にして俺はあの障壁を生成し始める。大体どうやればいいかは奏介(そうすけ)から聞いたからそれに合わせて生成の仕方を調整する。

 反り立つ壁のようなイメージで障壁を組み立てる。大体合ってるだろ。

「たぶん行ける。そろそろ時間だよな?」

「15時26分、もう来るよ!」

 そう青木(あおき)兄さんが言った瞬間地面が呻き始める。そして地面が隆起し、ソレが姿を現した。それとともに噴煙が巻き上がり煙の塔となる。そして、煙が多少なりとも落ち着いた瞬間にトランシーバーから、

「作戦開始。」と坂下(さかした)さんの声が言い終わった瞬間、奈穂(なほ)さんがいの一番に攻撃を仕掛けた。


霞城流(かじょうりゅう)  木霊討(こだまうち)


 そう言いながら奈穂(なほ)さんは鞘ごとあの化け物に突き打った。そして大きく後方に跳躍した瞬間、トラックが大爆発を引き起こす。その推進力を使ってさらに奈穂(なほ)さんは萌葱山(もえぎやま)の方向へと飛び出す。

 それを視認した俺たちは障壁を張るのをやめて既に準備万端な青木(あおき)兄さんのバイクに飛び乗る。そして俺らが発進した瞬間、煙の中を突き抜けて飛翔する物体を見た。あの化け物が後方へ下がる奈穂(なほ)さんに向かって飛び立ったんだ。しかし、眼前から来たものだから奈穂(なほ)さんもしっかり対応できたみたいで約1メートルぐらいだろうか。そこまで飛んできたあの化け物に刀身を向けて、


霞城流(かじょうりゅう)  鎌鼬(かまいたち)


と掴もうと伸ばしてきたであろう手を刀身で弾いた。しかし、反対側の腕がブクブクと玉虫色(たまむしいろ)の触手のような風貌と変わり、またしても奈穂(なほ)さんに襲い掛かる。奈穂(なほ)さんは攻撃を弾いた所為で防御が間に合わない。このまま攻撃が直撃するかと誰もが思った瞬間、ギャリギャリと扇風機が何かを巻き込んだような音が響いた。

 よく見てみると触手をドローンのプロペラで巻き込んで無理やり攻撃を発生させないようにしていた。ここを好機と見たか奈穂(なほ)さんが再び刀を鞘に仕舞い込みあの化け物に突き落とす。


霞城流(かじょうりゅう)  木霊討(こだまうち)


 同じ技を食らわせ落下していくあの化け物が地面に落ちる直前、大爆発を引き起こした。

 何が起きたのかと目を丸くしているとトランシーバーから文野(ふみの)の声が聞こえた。

「あれは多分だけど()()()()と思う。さっきの爆発の時もだったんだけど炎を纏ったりすると動きが鈍くなってる。霞城(かじょう)さん、もう少し後ろにガソリンスタンドがあるからそこで爆発を引き起こせない?」

「厳しいかな。さすがにアレの相手をしながら行動するのは無理。現に今も防戦一方だしね。」

 それを聞いていた青木(あおき)兄さんは、

「俺らならいけると思う。ヘイト誘導さえしてくれればこっちでなんとかできるって伝えてくれ。」と言われてしまったので言われるがままそのことをトランシーバーを用いて伝えると、

「じゃあ、頼んだよ(こがらし)君、青木(あおき)君。」と文野(ふみの)に言われた。

「よかったんですか、そんなの引き受けちゃって。」と青木(あおき)兄さんに聞くと、

「いやさ、あっち(文野徠)はあんなかっこよく奈穂(なほ)さんを救助していてこっちが何も貢献なしっていうのはさ、なんか嫌でしょ。何かやらなかったら絶対後で文野(ふみの)が『えぇー、私たちは霞城(かじょう)さんの命を救ったのにあなたたちは何をしてたんですかぁ?』って言われるのが目に見えて分かる。」とバカみたいな偏見にまみれた意見で何を言ってるんだとも思ったが、実際考えてみるとなんだかんだ言ってたことは間違ってなさそうだし、なんだか癪に障る。

「じゃあ、絶対に活躍しないとっすね。」とちょっと乗り気になったのを感じたのか青木(あおき)兄さんはアクセルを強く捻ってバイクを気持ち早く走らせた。


 にしても、あの時も言っていた通りまだ隠していた奥の手みたいなのもあったのか。ただ一つ気になるのは、まだあの透明な斬撃を使っていないということ。そうなるとあの触手と同時併用はできないのか?

 どう考えてもあそこで奈穂(なほ)さんを殺すためならあそこで透明な斬撃を使った方が確実にやれるはずだ。だったら尚更使わなかったことに疑問が残るというものだ。まあ、ただの杞憂だといいんだが...。

 そう考えているうちに目的のガソリンスタンドにたどり着いた。どうやら奈穂(なほ)さんが着地するまでほんの少しだけ時間の余裕があるみたいだ。

「結局ガソリンスタンドを爆発させるってどうやるんですか?」

「まず、ガソリンスタンド自体爆発させることは難しい。ただ一つだけやる方法があるとすれば、拳銃だよ。」そう言うと青木(あおき)兄さんは懐から拳銃を一丁取り出して俺に渡した。

「ここから逃げるとき、適当でいいからぶっ放しまくってくれ。その前に、ガソリンスタンドのガソリンを駄々洩れにしてくれるとより爆破させやすいかもな。僕は先に消火機器を無効化するから待ってて。」と言ってガソリンスタンドの裏手へと入っていった。なので戻ってくるまでガソリンの給油口を片っ端から荒らし、ガソリンを駄々洩れにした。ガソリンスタンドの人、ごめんなさい!

 そうしていると裏手から青木(あおき)兄さんが戻ってきて、

「もうそろそろ奈穂(なほ)さんが着くから離れるぞ。」と言って、バイクのエンジンを入れる。そして俺がバイクにまたがった瞬間、ドンッとガソリンスタンドの天井に何かが飛来した音がする。十中八九奈穂(なほ)さんだろう。そして、その目と鼻の先にあの化け物が居た。そして俺は体をひねって青木(あおき)兄さんから託された拳銃を片手に持ったが、照準を合わせきれずに引き金を引いた。しかし、反動が思いのほか強く俺を含め青木(あおき)兄さんも態勢を崩しそうになったが何とか持ちこたえた。そしてガソリンスタンドの方は幸運にも着弾したようで、少しずつだが燃焼が始まっている。

 そして、奈穂(なほ)さんがガソリンスタンドの屋根上でまた、


霞城流(かじょうりゅう)  木霊討(こだまうち)


と技を放った瞬間。瞬く間に空気が燃え、轟音とともに大爆発が発生する。そして、奈穂(なほ)さんはあの化け物を盾にしてこの爆発を耐えたらしく、そのまま宙を舞ってさらに萌葱山(もえぎやま)の方へと誘導する。あの人、なんかどんなところにいても適応できそうだなと小並感ながら思った。

 俺の右腕が拳銃を撃ってからずっと痺れているが、これで一応最低限の仕事はしただろ。

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