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考えすぎる先輩

作者: 豆電球

5月8日 16時27分

〇〇教室にて


「先輩いきなり呼び出しって何かあったんですか?」


「ああ いや少し相談したい事があってね」


「あぁ… なるほど それで 相談したい事って? なんですか?」


「最近思うんだ 私は 自分 を見失っているのではないのかと」


「はぁ…」


「私は友人関係というのは人生において必要な物だと考えている だがそうそう馬が合う人は居なくてね よく会話をする時は思ってもない嘘や表情を繕っては友人関係を保っているんだ」


「あぁ… まぁ大体の人はそんな感じなんじゃないですかね?」


「いや そうなのだがな… それについて、君はどう思う?」


「どう思うって… いや なんというか…」


「とても気が合う人なんてこの人生そうそう会わないというか」


「それに嘘で笑ったり同感したりするのは良くあるというか…」


「会話なんてそんなものと言うか…」


「意外と言葉にするのは難しいですね…」


「そうだな だが ほとんどは君の言うとおりだと思うよ」


「だが私はそれが最近億劫に感じてきてね」


「億劫なんて言葉 会話で使う人あまり居ませんよ…」


「嘘をついて友人関係を保つ」


「それはつまり偽りの自分を作りあげ、本当の自分の本性を隠していく」


「嘘で固めて作り出した自分とは それはもはや自分では無いのではないかと思ってね」


「いずれ本当の自分が偽りで埋められて 本当の自分が掘り起こせなくなると思うんだ」


「そうして本当の自分は自分から消え去っていく」


「そうして残った自分は 自分 であって 自分 ではない」


「あぁ… ややこしいですけど まあ確かに言われればそうかもしれないですね…」


「でもそんな自分も私は良い…とも言いきれませんが悪いとも言いきれないと思いますよ」


「というと?」


「そもそも人間なんて嘘と本当が混ざり合わさって出来た生物みたいなもんですよ」


「それと その嘘で固めた というのは言い方の問題で考え方次第では余計な部分を削ぎ落として改善していくアップデートとも言えるのでは?」


「だが削ぎ落とした部分は?そこはどう思うんだい?」


「そこは正直仕方がないと思います みんな成長していけば子供の頃の悪癖やら悪い所も改善されていくように」


「その削ぎ落としは決して 自分を削って無理矢理変形させるというより 自分を綺麗な形に整えて良い自分に変えていく」


「とも捉えられるのでは?」


「ほう… 確かに 君の言う事も一理ある」


「ありがとう すまないね わざわざ付き合わせて」


「いえいえ! 大丈夫ですよ」


「最近よく考えすぎてしまうんだ 昔からの悪い癖でね」


「そこで生まれた疑問を誰かに相談したくてね」


「なるほど…」


「…良かったら飲み物でも奢りましょうか?たまには奢ります

よ」


「本当か?すまないね」


「はい それで先輩は何を飲みたいですか?」


「んー… ミルクティー…だね」


「先輩って珈琲好きそうなのに 意外と甘党ですよね」


「そうかい?」



5月15日 16時31分

〇〇教室にて


「先輩 また呼び出しですけど何かあったんですか?」


「ああ それがまた相談したいことがあるんだ」


「あぁ… なるほど それで今度はどんな相談ですか?」


「あぁ それが最近 友人が困っているらしくてね」


「友人がバイト先で喧嘩したらしいんだ」


「はぁ… なるほど…」


「それで… どうした方がいいと思う?」


「え? どうした方がいいって… 何をですか?」


「ああ すまない いや 友人を慰めたり解決する方法を提案するべきかと思ってね」


「ああ…なるほど 先輩たまに説明を省きがちですよ…」


「うーん… というか何が原因で喧嘩を?」


「何と言うか趣味の話で喧嘩をしてしまったらしい」


「はぁ… そのぐらいすぐ仲直り出来るんじゃないですかね?」


「それが本人はかなり参っているらしくてね」


「うーん 正直先輩はどうしたいんですか?」


「…私は正直 どうでもいいんだ」


「え?」


「でも先輩は友人を慰めるか解決するかで考えているんじゃ?」


「いやそれは建前で 本当はどうでもいいんだ」


「え〜…」


「君はそんな私をどう思う?」


「え? どう思うって…」


「私は自分をよく 人間として駄目なのではないかと思うんだ」


「善の心が無いというか道徳心にかけるというか」


「あぁ…」


「いやでもそんなもんだと思いますよ」


「というと?」


「あー… なんというか 人 って意外と他人に興味が無いと思っているんですよ」


「いや全員が他人に興味が無いという訳では無いですよ?」


「でもぶっちゃけ他人の喧嘩とか揉め事なんてどうでもよくないですか?」


「そういうのを慰めたりする人ってほとんどは 本当に友人を救いたいとかでなく 友人を救っている自分 に酔ってるんじゃないですかね」


「例えばというか少し話が変わるかもですけど有名人が亡くなってしまったりした時とか最初は 亡くなってしまって悲しいです

やら あなたを私達はずっと忘れません やら言いますよね」


「でも1ヶ月後には 8割は忘れています 残酷な話です」


「そんな感じで皆 他人には興味が無いもんだと思いますけどね……」


「…なんというか君は 口が好調に回り出す時 毒があるというか尖った意見を出してくるね」


「え? そうですかね?」


「ふふっ だが君のような正直な意見 嫌いじゃないよ」


「すまないね 実は友人の話 というよりは私という人間について相談したかったんだ」


「なるほど… なんかすみません あまり力になれなくて…」


「いや 大丈夫さ 十分 力になってくれたさ」


「そう…ですか… わかりました… ありがとうございます」


「…今日は私が飲み物を奢ろうか?」


「え!ほんとですか!」


「あぁ 後輩に奢らせたままというのはあれだろう?」


「やったぁ! それなら…微糖の…珈琲がいいです!」


「ほう… 苦くないのか?」


「微糖ですし先輩みたいな子供舌では無いですよ」


「何か言ったかい?」


「いや なんでもないですよ〜」



5月22日 16時24分

〇〇教室近く 廊下にて


「今日は呼び出しは無いみたいだなぁ…」


「うーん 少し暇だなぁ…」


「おや 奇遇だね 後輩くん」


「! あれ 先輩じゃないですか」


「どうしたんですか今日は 珍しいですね」


「ああ 今日はのんびり過ごしたい日でね」


「どうだ 良かったら近くのカフェにでも一緒に行かないかい?」


「え!本当ですか! 行きます行きます!」



5月22日 16時57分

〇〇カフェにて


「注文は何にしたい? 後輩くん」


「うーん… そうですね〜 少しお腹すいてるんですよね〜」


「じゃあ…このナポリタンで!」


「分かった」


「…すまない このナポリタン1つと…」


「このチョコレートケーキ1つ それとアイスミルク1つで頼むよ」


「先輩… 本当に甘党ですね…」


「あぁ 甘い物を食べる時が1番の幸福だと言ってもいい」



5月22日 17時13分

〇〇カフェにて


「やっぱナポリタンはたまに食べると本当美味しいっすね〜…」


「ふふっそうか 口元にケチャップがついているのはそのせいかい?」


「先輩… 早く言ってくださいよ…」


「……突然なんだが君はこの 人生 についてどう思っている?」


「……ん すみません 口拭いてて聞いてませんでした

なんですか?」


「… 君はこの 人生 についてどう思っている?」


「えぇ… 凄く難しい話ですね…」


「うーん 本当の自分を見つける…とか 何かを極める…とか…」


「夢を実現させる…とか もういっそ楽しみまくる…とか?」


「ああ そのような考え方がきっとたくさんあると思う」


「…先輩はどう考えているんですか?」


「私はな 人生 というのは何の意味もない物だと思っている」


「あぁー…… ちょっと難しいですね… 例えばどういう所ですかね?」


「たとえば…さっき夢を実現するというのが人生と言ったが…」


「君には世界一の料理人になる!という夢があるとする」


「はい…」


「もしなったらどうする?」


「え?」


「夢が実現して料理人になれた」


「そしてどうする?」


「あぁ… どうって… 別になるのが夢だったらそれでいいんじゃ?」


「そうかもしれないね だけど私はそこが疑問でね」


「それが本当に 人生 と言えるのか」


「何事においても極めるやら自分探しやら楽しみまくるやら」


「その後は? 極めて? 自分を発見出来たら? 楽しんだら?」


「うーん…」


「あぁ…その道のりが重要なんじゃないですかね」


「そこに辿り着く努力とかが素晴らしいものやら何やら…って感じ?とか」


「そうだね 確かにそのとおりだ」


「だが所詮 そこ止まり」


「その範囲に人間の人生の選択肢は留まり続けている」


「人生とは その程度のもの なのではないだろうか?」


「その程度… かなり敵を作りそうな考えですね…」


「でもいいんじゃないですかね」


「というと?」


「いや 人の生 と書いて人生と言うぐらいなのだから 人で出来ることで収まるのは当然なんじゃないですかね」


「その中から自分の送りたい人生 題材を選んで」


「少ししかない時の中 努力して自分なりの人生を描いていく」


「尊い物だと私は考えますけどね」


「… 君は面白いね…」


「私の考えと違うとても良い考えだと思う」


「君との会話は飽きないよ」


「そ、そうですかね」


「あぁ さっきの私の考えを少し改めることにするよ」


「人生というのは何の意味の無いもの だが尊いもの」


「それ…変わってますかね?」


「いや とても 変わったよ」


「そうですか…」


「というか…話に夢中で気が付かなかったんですけどもう夜ですよ」


「あぁ そうだね そろそろ会計にしようか」


「ここは先輩…もちろん…?」


「あぁ 奢りだ」


「やったぁー!ありがとうございます!」


「あぁ とても良い意見を聞けたからね その代わりさ」


「今度は焼肉屋さんで話しましょうね!」


「… 私に奢らせる気かい…?」


「え い、いや違いますよ」



5月29日 16時36分

〇〇教室にて


「今回も呼び出しですけどまた何か相談ですかね?」


「あぁ そのとおりだ すまないね」


「いえいえ 嫌いじゃないっすよ先輩との会話は」


「そうか… だがもしかしたらこれが最後の相談になるかもしれないんだ」


「…え?」


「いやそこまで深く意味をとらえないでほしいんだ」


「きっと私の悪癖もこれで最後…かもしれないということだ」


「そう…なんですか…」


「あぁ だからいつものように相談にのってほしいんだ」


「わかりました… それでその 相談 って?」


「以前 友人関係について考えるのが億劫と言ったことがあっただろう?」


「えぇ ありましたね」


「最近 考えるという行為 全て そう感じてしまうんだ」


「はぁ… 確かに前から先輩は深く考えすぎる癖がありますもんね」


「どんな事にも疑問を持ってしまう」


「疑問を持つ自分にすら 疑問を持つようになってしまった」


「なるほど… それは辛いかもしれませんね」


「そこでなんだが… どうすれば良いと思う?」


「え… んー 難しいですね…」


「…」


「実は…1個 思いつきはしたのですがあまりにも非人道的な考えというか…」


「聞かしてくれ」


「分かりました…」


「その…なんというか…し、いや人生を… いや…」


「えっと……」


「………」


「…あぁ なんとなく分かったよ」


「私も思いつきはしたんだ」


「きっとそれは 死ぬ だろう」


「……はい」


「でもこれはあまりにも無謀というか極論というか…」


「いやそれが最短の近道なんだろうね」


「きっとこの世界には 考えに考え抜いて 最後の最後これを思いつき亡くなった人がたくさんいるんだろう…」


「いじめやら何やら 理由は色々ある」


「…でも先輩はその1人になるなんて言わないですよね…」


「…」


「えっ…まさか…」


「ふふっ」


「もし死ぬと考えていたなら私はとっくに死んでいるさ」


「さっき 私も思いつきはした と言っただろう」


「先輩… 流石に冗談じゃすまないっすよ…」


「ふふっ 悪かった」


「でも… 死ぬ が違うならどうするつもりなんすか…?」


「いや 私はこのまま考え続けながらこの人生を過ごす のが良いと思っているよ」


「どれだけ辛くても我々は生きていかなければならないからね」


「そもそも 死ぬ なんて怖い事したくなんてないさ」


「…先輩って怖いって感情あったんすね…」


「君は人の心をある意味 物理的に刺すのが上手いようだね…」


「でもそうっすよね」


「面倒で自分勝手 他人より自分を優先する」


「自分さえ良ければそれで良い」


「意味の無いことを考え続ける 答えなんてないものを」



「それが 人間 ですよね」



「…そうだね」


「…さて今回はこれで終わるとしようか」


「でもこれで最後の相談ってのは少し悲しいっすね…」


「………」


「何を言っているんだい?」


「え?」


「これからも君には相談にのってもらうよ」


「前も言ったが 君には 私に無い素晴らしい考えを持っている」


「これからもよろしくたのむよ 後輩くん」


「先輩…」


「まじで自分勝手で面倒ですよ…」


「ふふっ 少し刃が鋭すぎるからもう少し丸く研いでくれると助かるよ」


「…それでなんだか 実はまだ相談したいことがあってね」


「え〜 まだあるんすか… さすがに内容濃すぎっすよ…」


「ふふっ すまないね」


「まぁ 別に大丈夫ですけどね〜」


「そうか… それでなんだがな………」




考えすぎな先輩 終










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