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護衛Show

「♪隠れても無駄よ、私には、わかる。悪い奴らぁは、おしおきしなくちゃ。それが私の、役目だからぁ~」


 ワミは光の壁で辰巳と夏を守りつつ、ノリノリで電撃魔法を放っていく。


 普段とは趣向を変えたのか、魔法使いらしい黒服ではなく、黒い着物を身にまとい、とんがり帽子にはきらびやかな花飾りがあしらわれていた。


 また今回はアカペラではなく、伴奏もセットだ。


「なんか、歌謡ショーを見ているみたいだな」


 辰巳は魔法使いにお願いされ、ピアノやドラム、バイオリンなどの伴奏者を切り出していた。彼らは楽器を演奏するだけで、相手を攻撃することはない。


「歌声も素敵ですけど、音楽も素敵ですね」


 夏は曲に合わせて手拍子をしている。

 伴奏が加わったことで、最初の襲撃時以上にエンターテイメント感が強まっていた。


 そしてこの異様な状況に、襲っている側の忍者たちは面食らっていた。


「くそっ、なんなんだこれはっ!」


 リーダー格の忍者は苛立ちを露わにした。


「兄貴、どうします? このまま戦い続けたとしても、あいつを始末できるは思えないんですが……」


 部下の忍者が指摘したように、眼前に立ちはだかるワミによって、忍者たちは夏に近づくことすらできていない。それどころか、魔法攻撃によって戦闘不能に陥る者が相次いでいた。


「……悔しいが、俺もそう思う。畜生、この歌のせいで調子が完全に狂った」


 森の中に響いていたのは、戦闘中のBGMとしてはミスマッチとも思える演歌調の曲で、忍者たちは完全に戦闘のリズムを崩されていた。


 もっともワミからすれば、これは戦闘用のBGMではなく、自身の気分を高めるために歌っているのであって、その場に合っている合っていないなどはどうでもいいことだった。


「じゃあ、撤収しますか? 今ならまだ、倒れている連中を連れて逃げ帰ることができそうですから」


 部下の忍者からの問いかけに、リーダー格の忍者は悔しさを滲ませながら答えた。


「……是非もないか。助かるものを見捨てていくわけにはいかないからな」


 そう言うと、仲間に向かって口笛で撤収の指示を出した。


「これで任務の失敗が確定か……。任務遂行のためなら、犠牲を無視して行動すべきなんだろうが、俺にその判断はできないな……」


「それが兄貴の良いところですよ」


「なんだ、お前まだそこにいたのか」


「へへっ。兄貴がそう思ってくれているからこそ、俺らは安心して兄貴に命を預けられるんですよ。だからその……落ち込まないでください」


 部下の忍者が、普段見せないような真面目な顔で心配しているのを見て、リーダー格の忍者は思わず吹き出した。


「ぷっ! 真面目な顔が似合わねぇな。けど、お前の気持ちはわかったから、さっさと行け」


 部下の忍者はうなずくと、負傷している仲間のもとへ向かった。


「さて、永島のオヤジになんて言い訳するかな」


 リーダー格の忍者が見つめる先では、仲間の忍者たちが煙幕の展開や負傷者の回収などを行い、素早く撤収作業を進めていく。


「♪逃げたいのなら、お逃げなさぁい。去るぅもぉのに、去るぅもぉのに、興味はないかぁら~」


 煙幕によって周囲の視界は奪われていたが、その意図を察しているワミは、平然と歌い続ける。

 無論警戒は全く怠っておらず、忍者たちが逃げ去っていった方向とは真逆の位置から、毒矢が放たれるのを察知するや、すぐさまそれを叩き落した。


「けどね、かかってくるのなら、お相手いたすわ。その時は、逃がしはしませんから。覚悟してください」


 ワミは演歌によくあるセリフのような歌い回しをすると、攻撃してきた忍者を魔法で痺れさせた。


「くっ、しくじったか。かくなるうえは」


 虜囚(りょしゅう)になることを恐れた忍者は、舌を噛んで自害しようとした。


「♪ねぇ、言ったでしょ。逃がしは、しないって。たとえ、それが、たとえ、それが、黄泉よみの国であぁってもぉ~」


 ワミは直感で異変に気づくや、間髪入れずに二の矢となる攻撃を放ち、ギリギリのところで忍者の自害を阻止し、身柄を拘束した。


「♪これで最後かしら。仇なす者は、仇なす者は、もういないみたいね~。それならこれにて、私の役目も、終りでしょう」


 ゆっくりと頭を下げるワミに向かって、辰巳と夏は大きな拍手を送る。


 それを見て伴奏者たちも役目を終えたことを察し、二人に向かってお辞儀をすると、楽器とともにスーッと姿を消していった。


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