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日本史と倭国史の違い

 大道寺家での話し合いを終えた辰巳とユノウは、宿屋へと戻り、状況を整理しながらまったりと過ごしていた


「平たく言っちゃえばさぁ、今回の話って、お殿様の母親が占いにハマって困ってます、ってことだよね」


 辰巳は座布団を枕にしながら、土壁に寄りかかって座るユノウに向かって、率直な感想を口にした。


「事実だけを言えば、そんな感じでしょうね。江戸が絡んでいるんじゃないかぁっていうのも、何か繋がりを示すような証拠があるわけでもなく、そうなんじゃないかなぁっていう疑いの域を出ませんからね」


「正直なところさ、ユノウは江戸が絡んでると思う?」


「うーん……なんとも言えないですね。話を聞く限りではクロっぽい感じがしますけど、疑っている人たちの意見しか聞いてないですから……。こういうややこしめの案件は、片方だけの意見を聞いて判断するのは避けるべきなんで、情報が集まるまでは、とりあえず背後関係とかは無視して、どうやって草月院様を占いから抜け出させるかってことだけを考えていきましょう」


「だな。……それにしても、改めて日本と倭国は違うんだなってことを実感したよ。知らない北条が出てきちゃったもの」


「一応、買ってきた本で倭国の歴史について簡単に調べてみたんですけど、色々と出来事とかに違いはあるにしろ、室町ぐらいまでは、ほぼほぼ日本史と同じような流れできてますね。源義経(みなもとのよしつね)が奥州に独立政権を作ったとか、新田義貞(にったよしさだ)が幕府を開いたなんていうことは起きてないです」


「ふーん、じゃあどこで流れが変わったんだ?」


 辰巳が考え始めたのを見て、ユノウは一旦話すのをやめた。


「応仁の乱……けど、大道寺さんの話だとそれっぽいことは起きてたみたいだし……あ、もしかして本能寺?」


 答え合わせを求めてきた辰巳に対し、ユノウは首を横に振った。


「残念。本能寺の変は起きてますし、明智(あけち)も敗れてます」


「うーん……じゃあ、関ヶ原だ、関ヶ原で西軍が勝ったんだ」


「あー、もうそこは流れが変わってて、戦い自体が起きてないです」


「え、関ヶ原起きてないの?」


 辰巳は思わず起き上がった。


「はい。あと大坂の陣も起きてませんし、朝鮮出兵のような大陸への侵攻もないです」


「ってことは、本能寺からの数年で流れが変わったってこと? まさか清須会議?」


「違います。流れが変わったのは、小牧・長久手の戦いからです」


「……えぇっと、それって秀吉と家康が戦ったんだっけ?」


 なんとなく名前は聞いたことがあったが、それ以上のことはよく知らなかった。


「そうです。日本史では、家康の優勢勝ちのような感じになってるんですけど、こっちでは秀吉が完勝し、この時点で家康が臣従してます」


「へぇ、全然違ってるね」


 よく知らない戦いだったせいか、それほどリアクションは大きくない。


「この戦いのあと、秀吉は四国・九州を平定し、征夷大将軍に任ぜられてます。さらに北条、伊達(だて)といった東国の諸大名も秀吉に臣従を示し、名実ともに秀吉の天下となりました。そして秀吉の死後、幼い秀頼(ひでより)が二代将軍になりましたが、秀吉の弟である秀長が副将軍としてしっかりと補佐したため、関ヶ原の戦いや大阪の陣の原因ともいえる、羽柴家家中の内紛が起きなかったので、羽柴の天下が今も続いてるって感じですね」


「ふーん、なるほどねぇ。……なんで、小牧・長久手の戦いから流れが変わったのかな?」


「さぁ、それはわからないです。ただ、この時代は鉄砲伝来や宣教師の来日など、日本史的に外国と絡むことが非常に多かった時だったんで、地球とは違う国々と絡むことによって、少しずつ流れが変わり始めて、そういった変動の蓄積が、たまたま小牧・長久手のタイミングで爆発したのかもしれません」


「あ~、なんかそれありそうだなぁ」


「あくまであたしの推測ですけどね」


 こんな風にだらだらと過ごしながら、河越の夜は更けていった。

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