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サンタと校長先生

作者: 田錬悠

本当にふざけました。申し訳ございません!

 大きなおなかの校長先生は、いつも生徒の笑いもの。

 例えば、校長先生が廊下で転んだ時。おなかでぼよんと弾んで倒れる姿は面白いと評判でした。

 また、マラソン大会で校長先生が熱くなって走りながら応援したときなんか、上下に揺れるおなかがこれまた評判でした。

 しかし、校長先生は悲しいのでした。

 それは、生徒は校長先生を見るたびにくすくす笑ったり、嫌そうに顔を伏せたりするのです。全校集会の時の校長先生の話は誰も聞きません。校長先生も途中で悲しくなって、早く切り上げてしまうのです。

 

 校長先生はこの学校で一年目だったので、生徒となじみたいと思っていたのですが、それはなかなかかなわないようでした。


 そんなこんなで十二月。冬休みがやってきて、そしてクリスマスがやってきました。子供も妻も寝静まった家で校長先生は、ただただコーヒーを飲んでいました。そして、今日がクリスマスだということをうっすら感じると、小さく思いました。

「クリスマスにお願いをすれば、かなうのだっけ」

しかし、それもばからしいことだと思ったので、頭を振って、もう一口コーヒーを飲みました。


 するとどこからか、鈴の音が聞こえてきました。

 だんだんこちらに近づいてきます。

「どん!」

急に大きな衝撃音がなったと思うと、次の瞬間には、家の壁に大きなそりがささっているのです。

 校長先生は驚いて立ち上がりました。

 そこに真っ赤なスーツを着て、でっぷりとした男が入ってきました。

「いや、やってしまった。…ケビン!しっかり運転してくれよ」

そういうと、そりにつながれていたトナカイの中の一匹がうなだれました。

 

校長先生は恐る恐る男に近づいていきました。

「あの、あなたは…」

「いやはや、人がいたとは…。すいません。えー私は…」

男は思わせぶりに目をぱちぱちさせ、胸を張りました。

 校長先生は何が何だか分からず、黙っていると、男は脱力して言いました。

「サンタクロースですよ。ほら、クリスマスの」

「ああ、そうでしたか…」

校長先生はそうと分かると、子供が用意していたクッキーを差し出した。

「どうぞ、食べてください」

「ああ、ありがとうございます」

サンタは手袋を脱ぐとクッキーをつまみました。そして一瞬で食べてしまいました。

「ところで、あなた、何か悩んでいるように見えますが」

サンタが唐突に言いました。

「ん?壁が壊れたことなら修理費をどうしようかと悩んで…」

校長先生がそう言うと慌ててサンタが言いました。

「今すぐ直しますから!」

そして、指を鳴らすと、壁は元通りになっていました。

「で、私が言いたいのはそのほかのことですよ。悩み事が?」

校長先生はため息をついてソファに倒れこんだ。

「私は生徒に笑われているんです」

「生徒に…。ではあなたは教師か何かですか」

「ええ、校長をやっております」

「でも、なぜ笑われるのでしょう」

「このおなかですよ」

校長先生は彼のでっぷりとしたおなかをたたきました。

「生徒たちはこれが面白いらしいのです」

すると、サンタは急に校長先生の肩をたたいて同情するように言いました。

「分かります、それ。私もエルフたちに馬鹿にされてばっかりで…」

「そうなんですか?サンタはでっぷりした雰囲気が好かれると思っておりました」

「そうわけではないんですよ…。で、ダイエットをしようとがんばっているのですが、何しろ、やせてしまったら、イメージが崩れるではないですか」

「イメージ?」

「サンタって太っているイメージでしょ?痩せちゃ、子供たちががっかりするんですよ」

校長先生は黙ってしまいました。

「太っていることが大事っていうこともあるって今では思っていて…。

 ほら、太っている人がいないと痩せている人が目立たないっていうこともあるので。

 これは太っているものなりの社会への尽くし方ですよ」


「そうですね。そうですよね。私もダイエットをあきらめて、生徒のイメージを覆さないように頑張っていきます」


「まあ、ぼちぼち、行きましょうや」


そういうとサンタはもう消えているのでした。


校長先生は今も生徒の笑いものです。

でもそれでいいと思うのです。

改めてふざけたことを謝罪致します。

ここまで読んでくださり誠にありがとうございました。

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