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狩った鹿肉を焼く。うまい、うますぎる!

 日が落ちたところで、石を集めて作っておいた簡易かまどに火を入れた。

 夜なら煙は見えにくいし、かまどで火も目立ちにくい。

 たぶん煙は家が燃えるレベルでなければわからないだろう。

 これらはホルンの浅い素人考えだが、現実問題として食べなければ体力が落ちてしまうので背に腹は代えられない。


 火を通さなくても食べられるものを、成人男性が必要な量を集めている最中にカール騎士団と出会うとも限らないというのもある。

 それに目の前にある鹿肉というのにも、ホルンにとっては意味があるのだ。


「丸々一匹の鹿を食べられる……なんて贅沢なんだ……」


 ホルンは鹿を狩ったことはある。

 しかし、大抵の鹿は貴族に献上するもので、村人風情が食べられるのは祭りのときに出てくる小さな欠片くらいだろう。

 貴族の集まりであるカール騎士団と敵対した今、反逆者として狩った鹿を自由に食べることができるのだ。

 つい、ゴクリと唾を呑んでしまう。


「おっと、せっかくの鹿だ。ちゃんと料理してやらなければ……食材に感謝……! 豊穣神レイヤに感謝!」


 以前の雑に処理されて腐った鹿はニオイがきつく焼いてもパサパサだったので、今回はそれ用に色々と試してみる。

 きちんと血や内臓の処理、肉を川で冷やして、荷物にあった塩をふり、香草の大きな葉で包み焼きにすることにした。

 ちなみに〝鹿のツノ〟は力と俊敏さがある程度上がるらしく、解体も普段よりうまくできた。


「蒸し焼きにしている間に、疲れが取れるお茶も煎れておくか……」


 リュウエン草という疲労回復効果があるものを摘んでおいたので、それを煮出して茶とする。

 本当は天日干しで乾燥させた方が成分を抽出しやすいのだが、今回はこれで我慢だ。

 飲むと竜の炎を宿したかのように、身体の芯からポカポカとしてくる。


「はぁ~……落ち着く~……」


 貴族たちは貧乏くさい雑草茶と呼んで嫌うので、村人たちは自由に飲むことができた。

 様々な茶を仕事の合間に飲むことだけが村人の楽しみだ。

 今だけはホッとした気持ちで落ち着いていると、良い匂いが漂ってきた。


「うん、そろそろかな。うまくできているといいけど……」


 包んでいる大きな葉っぱをそのまま皿代わりにして、中身を確認してみた。

 ホワッと湯気が上がり、香草と肉の良い香りがよりいっそう漂ってくる。

 思わず生唾を飲み込んでしまう。

 愛用のナイフを使って一切れ食べてみることにした。


「……うまい、うますぎる!」


 想像以上に柔らかく、肉汁がしみ出してくる鹿肉。

 独特なニオイも香草がフォローしてくれていて、逆に癖になりそうな風味を演出している。

 舌の上へ躍り出てくる旨みが止まらない。

 それをリュウエン草の茶で流し込んでから、次は豪勢に大きな塊へかぶりつく。


「うんめぇ……!! 貴族はこんなものを独り占めしていたのか……!」


 今回使ったのは鹿肉の一部だ。

 これをお腹いっぱい食べても、まだ鹿肉は余っている状態。


「次は別の料理を作るかな……。それと日持ちさせるために干し肉……(いぶ)せればベーコンもいいな。……――ん? 何か森の様子が」


 夢見心地でそう考えていたのだが、ホルンは異変に気が付いた。

 森の少し遠くの方から明かりと、それに照らされる煙が見えたのだ。

 夜でこれだけわかるということは、かなりの物が燃えているのだろう。

 ホルンはこの状況に心辺りがあった。


「……もしかして、鬼の村が? カール騎士団はそこまでツノの種族を滅ぼしたいのか!?」


 ホルンは火の後始末をしてから、急いでその方向へ向かうのであった。

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