混乱
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一方、浚われたトラハを追っていたホルンは焦っていた。
「この馬車の進路は……俺が元いた村の方向だ……。しかも、そっちから煙が上がっている。もしかしたら、村が燃やされて……」
ホルンとしては、元いた人間の村が燃やされることに対してはそこまで気にしていない。
ツノが生えたホルンを追放しようとして、誰も助けようとしなかったのだから。
しかし、そこにトラハがいるのなら別だ。
「トラハがあそこに連れ去られたとしたら、ツノのせいで酷い目に遭うかも知れない……。いや、でも……なぜ村が燃やされている? 鬼の村のついでに人間の村も燃やしているのか? そんなことをする意味は……」
推理する材料を持ち合わせていないホルンからしたら、この状況は混乱するしかない。
早すぎる追加の隊や、偶然の巡り合わせなどでわかるはずもない。
「くそっ! どちらにせよ、トラハを救い出さなければ……!!」
一心不乱に走り続けるホルン、村まではもう少しだ。
――というところで、前方を歩いている小さな女の子を見つけた。
それは見間違いようもなく、今探している相手であるトラハだった。
「トラハ……!?」
「ホルンお兄ちゃんだ!!」
ホルンはすぐにトラハが走って来た側に立ち、最大限の警戒をした。
トラハが逃げてきたということは、追っ手がいるはずだからだ。
最悪、これはホルンへの餌として用意されたシチュエーションで、もう今の段階で罠にハマっていることすら考えられた。
「……何もない?」
一分ほど気を張り詰めたが、普段と変わらない森だ。
誰かが追ってきたりしている気配もない。
「トラハ、大丈夫か? 何かされなかったか?」
「うん、縛られてたけど、人間の兵士さんがこっそりと逃がしてくれた!」
「に、人間の兵士が逃がしてくれた……?」
ホルンは、その場でトラハから状況説明を受けた。
どうやら人間の村が処理されていく中で、同じ年頃の娘を持つという兵士が猿ぐつわと縄を解いてくれたらしいのだ。
「今までのツノの種族への扱いを見ると、どう考えても罠……なんだけどなぁ……」
しかし、罠だとしても、何かを仕掛けてくる気配がない。
「善人か……? いや、でも、それなら……うーん……」
「タイチョーって人が、お金のために、って言ってた」
「金のためか……」
普段は善悪のためではなく仕事としてドライに戦い、その中の兵士の一人が個人的な判断でトラハを逃がしてくれたのだろう。
ツノの種族への悪意と、人殺しの快楽のためにやっていたカール騎士団とはまた違うタイプらしい。
「とりあえず……トラハは無事に確保した。俺がいた村……のことより、氷竜アイスソードのことが気になるな」
トラハを助けようとして捕まってしまった氷竜アイスソード。
ホルンに対しては死ぬほど厳しい対応をしてきたが、トラハに対しては優しかった。
「竜のお姉ちゃんを助けてあげて!」
「一つ聞いておくけど、そのトラハが見た隊長……魔術騎士サンドマンはどれくらい強い?」
魔術騎士というのは、魔術も使える騎士というハイブリッド職だ。
騎士の近接攻撃力と、魔術の多彩な対応力が合わさって単純に強い。
その魔術も、サンドマンという男は一瞬で氷柱の対属性である火を出現させたりと、腕前もかなりのものだろう。
オマケに言葉巧みに時間稼ぎをして伏兵を使ったりと頭まで良い。
そんな相手に現状勝てるのか、ホルンは確信を持てない。
最善の手段としては、このままトラハを鬼の元へ送り届けて、ホルンはどこか英雄の国から離れた遠い地へ逃げることだ。
「そ、それは……」
「もしかして俺よりも強いかもしれない?」
トラハは答えなかった。
まだ小さいので、嘘を吐けないのだろう。
しかも、下手をしたらホルンが自分のせいで死んでしまうかもしれないのだ。
それでも氷竜アイスソードが見せた優しさが脳裏によぎってしまう。
トラハは迷い、混乱して、言葉が出ない。
見かねたホルンはしゃがんで、トラハと視線を合わせてニッと笑った。
「でも、トラハに格好悪いところは見せたくないな。竜のお姉ちゃんには恩があるんだろう? このホルンお兄ちゃんが助けに行ってあげるから安心するんだ」
「ホルンお兄ちゃん、大好き!」
子どもらしい満面の笑みを見せるトラハを見て、ホルンは少し後悔していた。
(下手をすると死ぬかもしれないなぁ……。しかも、氷竜アイスソードも解放したらまた襲ってくる予感がするし……)
子どもの前で良い格好をしたい、という自分は馬鹿だなと自覚するのであった。
面白い!
続きが気になる……。
作者がんばれー。
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<(_ _)>ぺこり




