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ツノ集め開始

「ふわ~あ……朝か……。昨日は村長たちと話し込んで寝るのが遅くなってしまったな……」


 ここは村長の家だ。

 朝日で自然と目覚めたホルンだったが、正直なところまだ寝ていたい気もする。

 周囲には『ぐが~ぐが~』とイビキをかいている鬼の男衆が眠っていた。

 村はかなりの家が焼けてしまったために、男衆は村長の家に集まって雑魚寝して、平気だった家の寝室を年寄りや女、子どもなど譲ったのだ。


 その場で氷竜アイスソードの情報も集めていた。

 どうやら聞いた話によると、実際には会ったことはないのだが、裏切り者の娘として広く知られていたそうだ。

 その印象は悪い物だったらしいが、ホルンは真実を話して誤解を解いておいた。


「本当はツノの種族は無実……。しかも彼女は娘というだけで世界中から迫害され、一緒にいた人間の母親は殺され、長い年月たった一人でツノの種族の汚名をそそごうと足掻(あが)いていた……か」


 その状況にいくつもの感情が浮かんできてしまうが、不思議と明確に感じたのは〝虚しい〟だろうか。

 悪い意味などではなく、もし自分がそんな状況だったら――というのが強い。


「次に会ったら、もうちょっと話してみたい……気もする。あの凶暴ささえなければだが」


 今は力が弱っているので、まともに対話できるチャンスなのかもしれないと思った。


「まぁ、それでもたった一人でツノの種族の汚名をそそごうだなんて……世界の常識を変化させるようなものを……。いや、俺も目指すところは一緒だったか」


 どこかふたりは似たもの同士なのかもしれないと、フッと笑ってしまう。


「ホルンさん!」

「うわっ!? 村長、起きてたのか!?」


 物凄い勢いで村長が立ち上がっていた。


「ぜひ、ツノの種族の旗頭になってください!」

「え、えーっと……旗頭……つまりリーダーってことだよな……?」

「はい! ホルンさんが鬼だけではなく、竜や他のツノの種族すべてを率いるのです! ホルンさんなら可能です!」


 まだ酔っ払っているのかと思う勢いで村長はグイグイくるが、ホルンとしては受ける気はない。


「俺の器じゃムリだって……。そういうのは虹竜イダウェドの娘のあいつの方が適役だ」

「で、ですが!」

「さってと! 起きたし何か身体を動かしたいな! 仕事はあるか、村長! できれば試したいこともあるので、森の中へも行けるものが良い!」

「はぁ……わかりました。ここはホルンさんの意思を尊重(・・)します。村長(・・)なだけに」

「なんて?」

「では、お願いしたい仕事が――」




 ***




「森の奥にある木材置き場の様子を見に行ってほしい……か」


 森の中をホルンが進み、その斜め後ろにカナホが付いてきている。


「まったく、お父様もお客様であるホルンさんに対してこんなことを頼むなんて!」

「いや、俺が何か仕事をくれと言ったから……」

「さすがホルンさん! 私たち鬼に対しても謙虚で、なんて献身的な……!」

「あ、あはは……」


 目的の一つとしては、カナホから距離を置きたかったというのもあるが本人の前では言えない。

 なぜか付いてきてしまったので、今さら断れないが。


「えーっと、村の家屋などを新しく建てるために木材が必要ってことだよな?」

「はい! ホルン様も知っていらっしゃるかと思いますが、建材となる木はその場で切り倒してすぐは使えません」


(なんか過大評価されているけど、俺は村育ちでもそっち方面の仕事はしてなかったから知らないぞ……。すぐに否定しなきゃ――)


「俺は村育ち――」


「あ、正確には伐採してすぐにでも使えますが、乾燥する内に木が縮んでしまうために調整が難しいという感じですね。そのため、事前に木材乾燥を行ってから使いやすくする感じです」


(……割り込み失敗した。陰キャあるある)


「今回は森の奥にある木材置き場に結構な量が蓄えられているので、そちらで村の住居を作ろうということです。ちなみに自然乾燥だけではなく、魔術を使った高速乾燥もあります。お抱えの魔術師がいるところではそれが主流らしいです」


 そこでようやく木材の話が止まったので、次はホルンの会話ターンだ。


「えーっと、俺は村育ちだけど、そっち関係の仕事はしていなかったから知らなかった。解説助かったよ」

「そうだったんですね。それでもきちんと聞いてくれたということは、知識にも貪欲なんですね!」


(うわぁ……なんてポジティブな捉え方なんだ……)


 失望させたら殺されるのでは? というカナホに対してちょっとした恐怖を覚えつつも、浮かんできた疑問を聞くことにした。


「ところで、木材を取りに行くのならもっと大勢で来て運んだ方がよくないか? なんで俺……もとい俺たちだけで様子を見に行くだけなんて面倒臭いことを……」


 カナホの親である村長が二人をくっつけようと画策している――という線は、さすがにカナホが飛び入り参加だったので可能性は少ないだろう。


「あ、それを言い忘れていましたね。村では常識だったので」

「というと?」

「木材置き場はモンスターの縄張りになってしまったらしく、廃棄状態になっていたんですよ」

「も、モンスター……?」

「なので、ホルンさんにお仕事として頼んだのではないでしょうか」


 人間の村育ちのホルンは、その話に驚いてしまった。

 モンスターというのは、大抵は野生動物よりも凶暴な生き物だ。

 それが村の生活圏内に出現するというのは常識で考えてありえない。


「突然、モンスターが現れるようになったのか?」

「いえ、そうではないですね。以前からモンスターは出現していました」

「なんでそんなところで暮らして――」

「昔……私たち、ツノの種族は国を解体され、各自がバラバラに過酷な場所へ住むことになりましたから……」


 言葉が無かった。

 住む国を奪われ、しかも人権がないかのように危険な土地を与えられたのだ。

 以前は世界の不穏分子たちの戦力を奪うために国家解体を行ったという常識だったが、真実を知った今となっては人間たちが非道すぎると感じてしまう。


「鬼たちに犠牲を出しつつも、それでも何とか暮らしていけてたのですが……最近モンスターがさらに勢力を伸ばしてきてしまった感じです」

「再び木材置き場周辺を使えるようにしたらいいんだな」

「い、いえ。あくまで様子を見てきて、すでにモンスターが撤収しているかどうか確認するというだけの仕事で……」

「なんかモンスターを倒したい気分だから、いたら倒すぞ」

「ホルンさん……」


 とは気合いを入れた表情で言ったものの、ホルンとしては現在の力でモンスターを倒せるのかどうか不安でもある。

 こんなことは、あの氷竜アイスソードと戦う前だったのなら考えもしなかっただろう。


(もし、モンスターが彼女と同等かそれ以上だった場合はまずいな……)


 そこで計画していたことを実行する。


「カナホ、この森の中でツノがある生き物を見つけたら教えてくれ」

「ツノがある生き物ですか……?」

「そうだ。これからのためにツノを集めて少しでも強くなっておきたい」

「はい! わかりました!」


 ツノを収集することによって戦いの幅が広がるはずだ。


(……たぶん!)

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