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→殺してでも虹竜のツノを奪い取る

 どぎまぎしてしまっているホルンと、余裕綽々で嬉しそうなカナホが村の広場に戻ったところ、そこはすっかりと綺麗に片付いていた。


「お帰りなさい、ホルンさん。きちんと兵士たちは村の墓地に弔ってやりました」

「ありがとうございます、村長さん」


 一応、人間でもあるホルンは頭を深く下げて礼をした。

 こういう礼節などが戦いの中で忘れられてしまったら、それこそ本当にツノの種族の評判が下がってしまうだろう。


「おい、あのカールって人間の王子の亡骸が見当たらないんだが?」

「誰かが先に埋葬したんじゃね? ふぅ~……もうクタクタだぁ」


 しっかりと手を抜かずに働いてくれたらしく、鬼たちは座り込んでいる者もいる。

 ただでさえ家を焼かれ、襲撃された直後なのだ。

 村長としては『お気遣いなく』という風だが、ホルンとしてはどうしても気になってしまう。


「ホルンさんのために宴を開こうと思うのですが、メインとなる肉が足りなくて準備に時間が――」

「肉……あ、俺が狩った鹿肉が起きっぱなしになっているので取ってくる! 川で冷やしてあるので食べ頃のはずだ!」

「む、村の恩人にそこまでしてもらうわけには……」

「鬼のツノのおかげで力が有り余っている。まだまだこれを試したいという、この俺のワガママを素直に受け取ってくれ」

「ははは……まったく、ホルン様はどこまで素晴らしい方なのか……」


 褒め殺しという言葉がある。

 少し前までただの村人だったホルンは照れくささで死にそうだったので、すぐに野営をしていた地点まで向かうことにした。

 まだ結構な量が残っている鹿肉も、鬼の力があれば簡単に持ち運べるだろう。




 レベルアップした鹿のツノの素早さによって、かなり早く野営していた場所へ到着することができた。

 あの鹿肉の美味さを思い出して、どんな食べ方をするか楽しみになってしまう。


「同じように包み焼きにするのもいいけど、せっかく鬼の村だしなぁ……伝統料理みたいなのがあるかもしれない。東の国には鍋というものがあるとも噂で……」


 思わず顔をほころばせながら、鹿肉を冷やしている川を見た。

 すると、何かが鹿肉を食べているのが見えたのだ。


「あちゃ~……獣に食べられちゃったか~……」


 ホルンが残念そうにいうと、その何かがピクッと動いて立ち上がった。


「妾のことを獣と言うたのか? ほほう、その最大級の侮辱……半殺しにしてやろう……」

「えっ!? 子ども……!?」


 暗くてよく見えなかったが、それはまだ小さな子どもだった。

 妾という変な一人称を使っているので、たぶん女の子だろう。


「生肉を食べるなんて……お腹を壊しちゃうぞ!?」

「ん? なんじゃ、もしかして……今度は妾のことを人間だと勘違いしておるのか?」

「人間だと勘違い……ということは……」


 月明かりに照らされた女の子は見慣れない服を着ていて、氷の彫刻のような美しくも冷たい顔立ちをしている。

 驚いたことに、その頭からは剣のような大きなツノが生えていたのだ。

 後ろには太い尻尾も見えている。


「虹竜イダウェドが娘、氷竜アイスソードとは妾のことじゃ」

「に、虹竜イダウェド!?」


 ホルンはその名前を聞いて驚いた。

 忘れもしない、ホルンに虹竜のツノを与えてくれた恩人ならぬ恩竜だ。


「ふんっ、人間がその名を聞いて驚くのも無理はない……疎まれるのも、もう慣れた」

「ち、違う! そうじゃない! 俺は……!」


 ホルンは、イダウェドから娘のことを頼むと言われていたのを思いだして、急いで自らのツノを虹竜のものへと変化させた。


「これを見てくれ!」

「おっ、お主……そのツノは……そうか。違うとはそういうことか……」

「そ、そうだ! 俺は――」

「妾を疎んでいるのではない。父のツノを遺体から剥ぎ取り、妾に見せて嘲笑っているのだな……!」

「……えっ!?」


 その予想外の返答にホルンは言葉が出なくなってしまう。

 相手からの気迫は、見た目が子どもとは思えないほどだ。

 氷のトゲのような殺気が、ホルンの肌に刺さっているような錯覚すら覚える。


「殺してでも奪い取る……!」

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