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魔王の恋人  作者: つきG
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【7】 魔王対光の御子

新人メイドを前面にだすようにして、古参のエルムがフォローしておもてなしする方針で対応する。

入ったばかりのメイドのマーシャはもはや泣きそうである。

「ちゃんとついてるから」とエルムに宥められ前に出る。



「先ぶれもなくスマンな」

光の御子、御年35歳独身。

・・・・・ホントに30代ですか?と言いたいくらい若々しい。

20歳くらいにしか見えないところは、魔王の呪いのかかってるアスタリオスと同じだ。

若さって呪いかよ。

そしてそのご身分と美しさでなんでまた独身よ?

差し出された乾いた布で無造作に銀の髪を拭いながら、火のそばへご案内される。


(お拭きした方がよかったんでしょうか。)

(この方たぶんさわられるのおキライだろうだから。)

こっそりささやき合う。本音は「対象がいるところで私語をするな!」と注意したいところだ。が、今叱ればマーシャの方が格下であることが露見する。


エルムは魔物だが、オーレリアの側仕えをするために、メイドとしての技量も仲間と競い合って研鑽を積んできた。


「雨がやめばすぐ発ちたいのだが・・・・」


ぜひ、そうなさってください!という本音を隠し、やっと「主は不在ですが、ごゆるりとお過ごしください」と申し上げる。


「確かに宿を借りることになるかもしれんな。」


息をひそめて様子をうかがっていた魔物使用人が顔を覆う。

雨脚は強くなるばかりだ。


「ランベール家は全員王領か?」


さあ、困った。ウソをつけばバレる。なぜならルミナスの行き先は王領であり、たどり着いてしまえばオーレリアが残っていることがわかるからだ。


「お嬢様が残っていらっしゃいます。」

「ふむ」

「病がちでいらっしゃいますので、ご挨拶にまかりこせぬことお許しください。」

「ランベール伯の娘御ならばまだ幼かろう。」

「はい御年7つになられます。」


主不在の家でその娘に興味をもつとは。

エルムの目が知らず険しくなる。


「そう警戒するな。この嵐で寝付くことができずに怯えているのではないかと思ってな。ましてや知らぬ者が泊るとなれば、恐ろしかろう。」


室内に入ったりしないが、


「部屋の外から声だけかけておこう」

(なんだとおおお???)


が、ここで案内しない選択肢はない。オーレリアは音楽室だ。階上の彼女の部屋へルミナスを案内する間にベッドにもぐりこむのは不可能だ。


(寝てます!で押し通す。)

「ご案内いたします。」


(おそらく「お嬢様は寝てます」で通すのだろうな。だが。)


アスタリオスはルミナスを良く知っていた。


(誰もいない部屋と寝ている人間の気配の区別のつかないような方ではない・・・・!)


先生のお顔がどんどん怖くなっていく。


(すごく困っているんだわ)


アスタリオス先生はびっくりするくらい何でもできる人だ。

ダンスを踊るときはオーレリアを優雅にリードしてくれるし、「寒くない?」と聞くや否やちゃちゃっと自分で薪割りして暖炉をあたためたり、お父様と難しいお話をすることもある。

先生も困ることがあるんだ!

オーレリアになにかお助けできることはあるかしら?

とりあえず「しー、でね。」と言われたことはしっかり守り、お口を手でふさぎつつ様子を見守る。


(ままよ!)


エルムが子供部屋の扉を開ける。

そうっと「お嬢様・・・・」と忍び声で呼びかける。

もそっとベッドの中で動く気配があった。


(誰か、身代わりをしてくれてる・・・・)


心からホッとして振り返り、「申し訳ありません、おやすみのようで」す、と最後まで続けられなかった。

ルミナスの剣がのど元に突き付けられていたからだ。


「何を・・・・なさいます。」

「ランベール伯令嬢をどうした?」


剣呑な空気をまとったルミナスがそれでも静かに問う。


「ベッドの中にいるのは魔物の気配」

「!」

「お前はこれで3つわたしにウソをついたな?」


口を開くことができない。何か答えたら斬られる、切っ先がすでにメイド姿の魔物を斬ると語っている。


「まず、人であると。ふたつめに室内に娘がいる、と。」

「おまけにお前は男だな。」

いや、

「魔物だからオスというべきか。」


答える間の命を許そう。


「ランベール伯一家は生きているのか?王領に向かったのは本物のランベール伯爵なのか?」


大変!

答えたら最後エルムが斬られてしまう。彼ら魔物従者はオーレリアの大事な家来だ。


「だめ・・・!」


金の瞳が輝きを増す。


「いけない、オーレリア!」


アスタリオスが体で覆って庇おうとするが、その腕をするりとすり抜けて、光の御子に向かって走る。体が金色の淡い光に覆われる。

両の手の間に黒々とした闇の塊を作り出す。





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