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魔王の恋人  作者: つきG
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【3】終活

アウロラが自身の寿命を悟った日を起点に、アスタリオスが必要日数を約200日と算出した。

うち100日をタマシイのモト作成に使うとして、残り100日・・・・。


(人間寿命100年て長くね?)


今この世界、平均寿命50歳だけど?

貴族に限定するならもうちょっと長いか。


「ええええ。そんなに長生きしてどうするのよう」

「次は!わたしを看取ってもらうんだから。ありあまるくらいあって十分です。」


いや、貴方を看取ってから長いのとか、めんどくさ・・・・。

まあいいや、頑張って生きていきます。ハイ。

残り寿命160日あまりを、夫婦楽しく有意義に・・・・、何して遊ぶ?


「まずは母体になる女性探しだね。もう決まってるの?コッチで決めていいの?」


あー、これは仕事に没入して辛いこと忘れたいんだな。

ハイハイ。まずやることやっちゃいましょうか。


「ハイ、は1回」


むかつくな、お前。

             *


父母は選んで良いとのことなので、「ついでにみんなシアワセだといいんじゃないか」と子供がいない夫婦を何組かピックアップして、面談予定だ。

何しろ生まれる女児は「魔王」の生まれ変わり。

一応ちゃんとした人間の子供になる予定だけど、タマシイの材料が魔王の寿命なもんだから、正直ソッチのスペックがいつ顔をださないとも限らない。

さらに言えば生まれる前から「結婚してください」と30歳近く年上の男が手を挙げているわけだ。

この二つを飲み込んでくれる懐深いご夫婦でないと計画に支障をきたしてしまう。


アウロラの転生は天界でも、神の直々の指令の降った一大プロジェクトとなった。

アウロラを宿す母体には様々なギフトが与えられる。

そのうちの一つが、望むならアウロラの転生体以外の普通の人間の子供を授かる権利。

もしも今生で子供をもつ予定でなかったとしても、その運命を曲げてくれるらしい。

スゲエ。

天敵だと思ってた天使がギフト一覧持ってきた。


「交渉材料にするといいよ」


にっこりしながらリストを渡されたときは複雑な心境になった。


(こいつらに複数でかかられたら魔王1体なんかひとたまりもない・・・・のよねえ。)


「え?魔物だって神の創造物だよね。広義の仲間だと思ってる。」


ハア。


「でも人間の『祈り』に応えて降臨するときは、キッチリ仕事するけどね。」


うわー・・・・。そうなの。

天使なんて避けまくってたから、そんなことだとは知らなかったよ。


「人生楽しんでね」


親指立てられた。

ええと、ありがとうございます・・・?


「あとさあ、その辺に聖獣いるじゃん。」


いるね。苦手。


「アレ魔物だよ。人間殺したことがないってだけ。」


マジかよ!

そういわれてみてみれば、ああっすごくわかりにくいけど、ホントに魔物だわ。

やろうと思えば支配下における!

・・・・いいのか天使よ、そんなこと教えて。


すると虚空に視線をさまよわせた、おそらく神に意向を確認しているのだろう。

こちらに向き直り、美しい笑顔を見せる。

キレイなんだけど・・・・慣れねえ。


「話せたってことは教えていい、みたいだから。ナニカの役に立ててね。」


しかも活用していいの?!

なんか敵視してたのバカみたい。


「アウロラはきっと、天使なんかより・・・・、ああ、『コレ』は語っちゃイケナイのか。」

「?」

「うん、がんばってね。」

「ありがとう」


アウロラも口に出して礼を言ってみた。

そして、観察と検証の結果、ルミナリオのランベール伯爵夫妻に白羽の矢が立ったのだ。


          *


本日はお日柄もよろしく。


人のよさそうな、ドリアン・ランベール伯爵、そしてリモーネ夫人を前にして、魔王とそのオトコはちんまり腰かけていた。


「お子様をお望みとのことですが、アタシ転生して赤ちゃんになって生まれる予定なんです。お父さんとお母さんになってもらえないでしょうか。」


「・・・・・」

「・・・・・」


あんまり時間は長くとれない。

なぜならばこの国には「光の御子」という天使の生まれ変わりがいるからだ。

天使とは和解したのでは?

いやいや、コイツに限って言えば、人間側の「祈り」に応えて降臨し、それこそ「職務遂行中」なわけである。出会ったらガチバトルに発展すること請け合い。

この国に長居すると察知される危険性大なのである。

アスタリオスは夫妻がルミナリオ在住であることに、そりゃもう難色を示したが、


(アタシなんだかこのお二人気に入っちゃったんだよね。)


ふられたら仕方ないけど、話だけ聞いてほしいな、とやってきた。


「まあ、君のお父さんとお母さんだから、君が選んでいいんだけどねえ」


ため息つきながらも妻の要望に抗えない優しいダンナである。


訪ねてみれば、リモーネ夫人は赤ちゃんが出来ないストレスと周囲からの重圧に絶望して、自殺未遂をやらかしていた。

邸内がバタバタしてるのを良いことに、ご夫妻のところへずかずか上がり込んで自己紹介。


「こんにちは。魔王です。」


あ、ダンナが天を仰いでる。

いーじゃん、どっちみち全部話すんだし。


     *


ややポカンとしてるけど、夫人の方はだんだん顔に生気がもどってきた。

ずっとアウロラの顔を見ているが、その目は期待に満ち満ちている。

アウロラも夫人の目を見返してにっこりした。

その様子を見ていたダンナ二人は事務的に話を詰め始めた。


「詳しいお話を伺っても?」


ランベール伯爵が先を促す。










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