第四話 冒険の始まり
カイルと別れてから8年。
トールは15歳になっていた。
外は大雨が降り村人は家にこもる中、トールはアシュとともに村の外れの迷宮・5層にいた。
「絶対に制覇する!」
ボスは奇しくもあの時襲われた影獣と同じオーガであった。
巨体に見合わぬ素早さで振り下ろされる腕を大剣で受け流し、体勢を崩したオーガの腕を斬りつける。
「かてえな……首を狙うしかないか……」
モンスターの中でもタフなオーガは、斬られた腕から血が流れるが動じた様子はない。
何事もなかったかのようにトールを倒そうと再び腕が振り下ろされる。
「キュキュ!キュキュキュ!!」
アシュが何事かを唱えるとトールの全身に力がみなぎってくる。
そう、アシュはあの時与えられたオーブによって能力を一時的に上げるバフの能力を得ていたのだ。
「ありがとうアシュ。この一撃で決める! 影迷流・猛虎斬撃!!」
スパンッッ!
ぼとりと落ちるオーガの首。
そのまま影となって消えていき、コアと古ぼけた腕輪だけが残されていた。
「よっしゃー! やったなアシュ!」
「キュキュキュ!」
戦利品をもって村へと帰還するトールたち。
迷宮から出ると、雨はやみ、夕日とともに虹がかかっていた。
その日の夜。
「「「かんぱーい!!」」」
トールと村人たちは集まって宴会をしていた。
「あのトールがなあ……冒険家になるなんてなあ……」
「ソニックさんには感謝してるよ! なんたって俺の剣の先生だからね!」
「ハハッ。瞬く間に超えられちまったけどな」
ソニックがしみじみと言う。
この日は迷宮を制覇し、晴れて冒険家となったトールの祝賀会ともありいつになく盛り上がる村人たち。
トールへの祝いや激励も終え、そのまま夜は更けていく。
翌朝。
未だに眠る酔っ払いたちの脇を抜け、一人家の裏へと向かうトール。
そこには4年前に看病の甲斐なく亡くなってしまった祖母のお墓があった。
「ばあちゃん、育ててくれてありがとう。俺は今日この村を発つことになるけど、いつか勇者になってまた会いに来るよ。」
亡くなった祖母に別れを告げていると祖父のロベルトがやってきた。
「トール。体には気を付けるんだぞ」
「うん! いままで本当にありがとう。じいちゃんを一人残していくのは心配だけど……」
「なーに! 心配するな。いざとなればちょっと頼りないがソニックや他の村のみんながいるからな」
「そっか。……俺、絶対勇者になって帰ってくるから」
「ああ……いつまでも待っているよトール」
「よし、まずは西のラムテフ迷宮に向かおう! 仲間集めもしなきゃな。」
こうして古ぼけた腕輪と片耳のピアスを付けた大剣使いの少年と1匹のカワウソの冒険は始まった。
「俺は勇者になる!!!」
ひとまず終わりです。
評価が高かったり、モチベーションが保てれば続き書いていきます。