第三話 別れと約束
短め
「カイル、もう行っちゃうの……?」
「ああ、やりたいことは終わったからな」
数日後、カイルは飛行船に乗って村から旅立とうとしていた。
「そっか。悲しいけど……でもカイルとはまた会える気がするんだ!」
「ほう……俺たちがいるのは、この間の影獣とは比べ物にならないほど強いやつらがいる大迷宮だぞ?」
「うん、僕、いや、俺は勇者になる!」
「ッ!? そうか。勇者がどういうものかわかっているのか?」
「うん。いつかカイルたちにも負けない仲間を集めて! 7大迷宮を制覇して! 俺は勇者になる!!」
「ハハッ。言うじゃねえか。だが勇者にはこの100年誰もなれていない。それをお前が出来るのか?」
「できるっ!!!」
「じゃあ俺と約束をしよう」
「約束?」
「ああ、お前がいつか頼もしい仲間とともに大迷宮を制覇したとき、俺の仲間と一緒に酒を飲みかわそう。いいか、その時まで絶対に死ぬんじゃねえぞ!」
「うん、約束する!!」
カイルたちを乗せた飛行船は西の空へと飛び立っていった。
トールは飛行船が見えなくなるまで見つめ続けていた。
それからトールの修行の日々が始まった。
朝から薪割りや薬草摘みなど家の手伝いをし、午後からはランニングや素振りなどの基礎トレーニング。
あの時助けられたカワウソはアシュと名付けて行動を共にしていた。
村の迷宮探索のリーダー・ソニックと模擬戦を行うこともあったが10歳を超えたころには村の誰もトールには勝てなくなっていた。