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3話

 従者の一人は赤毛の青年。名を“ジェ・リヒター・フォン・ミカリエス”と言う。長い名だ。

「俺は一見普通の赤毛なイケメンだけれど、実は神族と魔族のハーフで、ピンチの時とかに眠れる力が爆発したりするんだぜ! その時は暴走する力を抑えきれず記憶が欠落する神秘性も兼ね備えているんだぜ! でも、ハーフなのは俺も知らない設定で後々衝撃の事実的なイベントで暴かれていくドラマ性もあるんだぜー!」

 く〇長い解説だ。〇そみたいな設定だが、面倒なので聞き流した。


 もう一人の従者は、やたら耳の長い金髪の少女。名を“イデア・ラ・フォーゼ”と言う。しかも巨乳だ。

「私は少し耳の長い普通の町娘――かと思いきや、国王の悪政で滅ぼされたエルフの村で奇跡的に生き残った最後のエルフ。手柄を立てて王に近付き復讐しようと考えているけれど今は従順なフリをして勇者様に仕えているの。あと胸のサイズはFカップ。調子が良い時はGよ」

 頼もしい従者達だ。そして、頼もしい巨乳だ。



 ――西の地へ向かうには船が必要で、船を使うには持ち主の商人バハラダが求める“神の像”を渡さなければいけない。それは遠く北にある“サガの塔”という所の最上階に隠されているらしい。

 サガの塔は百階建ての巨大な塔で、その中には魔王クラスの魔族が無数に居るそうだ。流石に計算高い状況判断ができる子な私は危険だと判断して、バハラダにイデアの胸を揉ませた。

 そのお陰で、無事に船を入手して西の地へ向かう事ができた。皆が幸せになる決断ができる、勇者的行動だ。

 巨乳は富を齎す事もあれば破滅をも近付ける。私は十数年前の過ち、キャサリンちゃんの巨乳を思い浮かべて暗雲渦巻く西の空を見つめていた。海の潮風が旅に出ているのだと実感させる。


 あっ、そういえば赤毛のナントカと云う青年は、胸を揉まれるイデアを見て、何かしらの秘めた力を解放する感じになって面倒臭そうだったので海に投げ捨てた。危険な芽を早めに摘むのは社会人の鉄則だ。

 ……男女の二人旅だ。

 これは、恋とか芽生えたりするロマンスの神様どうもありがとう的な展開が訪れること必至。あのやたら長い耳をピンピンしたり、巨乳をツンツンしたり、引っ張ったり、()()り回したり好き放題できる! 私を転送してくれた何処ぞの魔術師さん、どうもありがとう!


 西の空を見飽きた私は、船の甲板で切なそうにしていたイデアに目をやると、いつの間にやら目の前に居た。もう、唇をちゅーーーと伸ばしたら触れてしまいそうな距離……そして、やや触れる巨乳。

 なんという突撃ラヴハート。これは、もしやキッスな展開ではなかろうか!

 年甲斐も無く高鳴る鼓動、膨らむ股間、チクリと走る腹痛……。

 これは、この痛みは恋の病的なアレか? 否、見下ろした腹部に見えるのは赤の景色。突き刺さるナイフと、そこから止めどなく流れ落ちる我が血液。そして、その先にはついつい下ろしてしまったズボンとか。とか。

「この屑がッ! 勇者と云えど、やはり人間は皆同じだ! 此処で貴様の旅路を黄泉の国へと向けるが良い!!」

 イデアは侮蔑する様な眼差しでナイフを私の腹部深くへと差し込み、そう吐き捨てた。私は流れ落ちる赤に耐え切れず、世界が歪んで暗闇へと滲む。

 嗚呼、これ死んだらセーブポイントに戻るとかあるんだろうか……そんな非現実的な世界で現実離れした事を思い浮かべながら、私は暗闇の底へと沈んだ。

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