今日の1ページ ~笑顔~
「まさかあれが最後なんてね」
私朱音と親友の仁咲は、小学校に上がる前からずっと仲良しの幼なじみ。
「ほんとにね。もっと遊んでおけばよかった」
私達の住む地区で、2番目に広い緑公園。そこから30歩ほど歩いたところに、迅風という同級生が住んでいた。それこそ、小さい頃は私と仁咲と迅風でよく遊んだものだ。それはこの中学に入学してからも変わらなかった。
ある新学期の朝。
そこに迅風は居なかった。
迅風の下駄箱は、いつ見てももぬけの殻だった。
いつもそこにいた、恋愛感情なんかよりももっと大きな存在が、当たり前のように消えていた。
その事実は今になっても変わらない。
「どうしてだろうね。何も言わないでさ」
それから私たちは迅風に会っていない。
「きっと言えなかったんだよ。ほんと馬鹿じゃねーの」
私達は寂しさを隠すように、文句を言った。
もっと遊びたかった もっと話したかった
そんな言葉には飽きてしまった。
仁咲は気のせいかいつもより表情が沈んでいるように見えた。
「もうやめようよきっと帰ってくるでしょ」
この会話、何回目だろう?
それから私達は少し無言で歩いて、いつもの交差点の前で止まった。
「明日ってさ……」
部活の事を訪ねようとしたその時
「あれ…」
仁咲が向こう側の歩道を指さした。
「あれ、迅風じゃない?」
そこにいるのは確かに迅風だ
「うそ…」
「え、まってまじやばい」
「もう行っちゃうよ早く行かなきゃ」
青になるまでもう少し
こんなに信号待ちを長く感じたことは生まれて初めてだった
私達は走って信号をわたる
そして大きく息を吸ってめいっぱい叫ぶ
「迅風!」
少し辺りを見回して、不思議そうに振り向く迅風
私達に気づいて大きく手を振った
────それから、私と仁咲と迅風は、小さい頃からよく遊んだ緑公園のベンチにいた
しばらく会わなかったはずなのに、昨日も遊んだかのような感覚だった
仁咲はこれが親友なんだと言った
私もよく分からずにこれが親友なのだと言った
単純だねと笑った
迅風がふと口を開く
「来年の夏にさ、またここで遊ぼうよ」
いいね、と笑った
いっぱい笑った