1:全てを失った朝
死にたい 、 と 思った
ある朝、私は目が覚めなかった。
いつもの起床時間を少し過ぎたころ、身体を強く揺さぶられた。
そしてやっと目が開いた。
酷い頭痛がしていて、きのう友達と夜遅くまで遊びまわっていた自分にちょっと自己嫌悪した。
目の前には怒ったようなお母さんの顔。
おかしいな、今まで朝帰りしてもほったらかしだったのに。
怒ったお母さんの片手には真っ赤な目覚まし時計。
それは確かにこの部屋の目覚まし時計。
おかしいな、昨日の夜ちゃんとセットしたはずだけどな。
何か、お母さんが言っている。
やけに静かで、まだ脳が起きていないのかな、と思った。
でも、その目覚まし時計は11時を指している。
ああ、もうお昼なのか・・・そろそろ起きなきゃ。
お母さんが目覚まし時計を枕元に置いて何か言っている。
お母さんの口は確かに大きく動いている。
眉間には皺がよっていて、とても機嫌が悪そうだ。
きっと凄く、怒っている。
凄く怒っているはず、なのに・・・私にお母さんの怒鳴り声が聞えることは無かった。
まるで口パク、お母さんは真剣な顔でパクパクと口を動かしている。
あれ、おかしい。
おかしい。
何も、聞えない。
私は、すぐに目覚まし時計を引っつかんで床に落とした。
何も、音がしない。
お母さんが目を丸くしてこちらを見ていた。
そして、すぐにまたお母さんの口が大きくパクパクと動く。
ゆっくりお母さんを見上げる。
まだ、奇妙な夢の中にいるみたいだった。