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Beatitudo Gate  作者: 小木優人
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シャリア・ディステネは目が覚めた。

窓からは太陽の明かりが射し込んでいた。

昨日の出来事は夢であってほしいと現実逃避をしたい。

が、ぐちゃぐちゃになった部屋と近くで寝ていた犬のアレクを見るとそうはいかない。


「アレク…起きて。」


寝ているアレクを優しく擦った。

ああ…お腹のとこが格段と──

などと私が気持ちよくなっているとアレクはゆっくり目が覚め、状況を把握したようですぐに私の魔の手から離れた。



─キングロット城第二控え室─


そこには石になったアリアがいた。

身代わりになり助けてもらった妹に深い感謝と出発の挨拶をする。


「アリア…せっかく守ってもらった命をもしかしたら無駄にするかもしれない。そんなダメな姉を許してね。絶対、あなたたちを元に戻すから…。」


最後にアリアに向かってハグをした。

アリアは冷たくて固かった。

耳元でごめんねと囁き、行ってきますとまた囁いた。


アリアを抱きしめ終わったあとは奥の衣装入れを開けた。

流石に少しは身軽な服装にしなければと旅の準備をする。


女性の着替えはものすごく時間がかかるとアレクはまだ知りもしなかった。



「うーん。いつもアリアに選んでもらってたからなー。こんなに面倒くさいなんて。」


足元には何着もの服が散らかっていた。

アレクはさっきまでいたはずなのだが、いつの間にか席を外していた。


試行錯誤の結果、気づかずに一時間も無駄にしていた。



白い生地に少し胸が強調される腰までかかるコートと

動きやすいように燕脂えんじ色のショートパンツに決定した。


その頃アレクは必要そうな道具をくわえてフラッと帰ってきた。


「アレクお待たせ。さて…皆にも挨拶しなきゃ。」


─キングロット城謁見の間─


お父様、兵士のみんな…私、シャリア・ディステネは旅立ちます。どうか皆さま見守っていてください。

と、手を組み、立て膝の状態でしばらく祈っていた。


祈りを終えたらアレクが吠えたので後ろを振り返る。

トコトコと歩きながらアレクは何かをくわえていた。


剣だった。

茶色の鞘を抜くと、剣は曲線を描いていた。

あとで聞いたところカトラスというらしい。

女の私でも軽くて振れる剣だった。


アレクはカトラスを置くとすぐ持ってきた場所へ戻った。

どうやら殺された兵士から持ってきている。

他の兵士は剣すら石にされている。


ちょっと複雑な気持ちになったが、その気持ちは捨てた。

今度は短刀をくわえてきた。

種類はグラディウス。鞘から抜くと剣の鍔付近には持ち主の名前が刻まれていた。

その持ち主の名前を声に出し、死人へと伝わらない感謝の意を述べた。


カトラスを腰の左側に、グラディウスを腰の後ろにそれぞれ帯刀した。


さて、準備は整った。

謁見の間の入口の扉を開け、廊下を真っ直ぐ歩くと外へと出る大きな城門がある。

城門までの廊下にも石像が何体もあった。

振り返ったりしない。絶対に元に戻すと決めたから。

顔を上げ、堂々と城門から旅に出た。



一面に広がる草原の中にキングロット城と街までを繋ぐ整理された街道。

暖かい風が草木を揺らし、風でなびいた草が街道にまで顔を出す。

少女と犬という組み合わせからして散歩しているかのように見えてしまう。


「外を歩くってこういう感じだったんだ…。もし何もなかったらこんな機会はなかったかな。」


手を後ろに組み、辺りを見回しながら歩いていた。

そんな調子でしばらく歩いていると遠くに木の板が見えた。


それに近い距離になると看板だと分かる。

内容は道案内のようだ。


オブフールの森

クォーサ山道

※ただいまベルンドラモンの繁殖期


地理的にはクォーサ山道を進んだ方がいい。

クォーサ山道を抜けると周辺に街が幾つかあるし、別の大陸に渡れる港街にもそう遠くない。

ただ、看板の下には注意書きがある。

そのベルンドラモンについても詳しく書かれた看板が隣にある。


炎翼龍ベルンドラモン

特徴としては、青い瞳に緑の長く硬い胴体。頭から背中まで届く炎髪。

炎を吐きます。

飛びます。

勝てません。

まさに畏怖すべき象徴です。

そんなベルンドラモンが繁殖期です。

そう。オスとメスがイチャイチャすることから始まり、色々ありますがよっぽどでない限り確実に死にますので繁殖期のベルンドラモンには絶対近づかないほうがいいです。


と、長々と書いていた。

だが、本当に真実かどうにも胡散臭くて分からない。

ちょっと大げさな気もする。

アレクに聞いてみるか。


「アレク。この看板の内容は合ってるの?」


「くぅ~ん。」


やわらかく鳴いた。

そして同じところを息を吐き出すように鳴きながらグルグル回り始めた。


「アレク…何してるの?」


「くぅ~ん。」


またやわらかく鳴く。

何を伝えようとしているのかが分からない。


「じゃあ、yesかnoかで反応して頂戴。看板の内容は本当なの?」


「く、くぅ~ん。」


まただ。

yesかnoかで反応できない。

ということは──


「もしかしてアレクも知らないの?」


「ワン!」


なるほど。どちらでもなかったということか。

じゃあ、ベルンドラモンについては…と聞くと首を振る。答えはnoということか。


「どうしよう。」


クォーサ山道を通らないという選択もある。

オブフールの森を抜けるとアミュエスの街がある。

そこで情報収集というのも手だ。


さて…どちらにしようかな。

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