君の瞳に映る景色
春。薄紅色の花びらを舞い上げながら冷たさを孕んだ風が並木道を吹き抜ける。君は片手で横髪を押さえながら、楽しそうに花びらを追う。
夏。照りつける太陽が青々と葉の繁った木の下に濃緑の陰を落とす。暑さから逃げて来た君は木陰に憩い、しばらくすると陽射しの中に飛び出していった。
秋。赤く染まった世界でただ一人君だけは暗闇に沈んでいた。役割を終えた葉がひらりひらりと落ちていく。君の瞳からは透明な雫が落ちていった。
冬。しんしんと降り積もる雪に枯れ枝さえも化粧を施す。泣きはらした顔に表情はなく、巡る季節に君だけが取り残されていった。
君の瞳に映る景色から色彩が失われたその日。
僕は想いを自覚した。




