第二話「戦闘専門学校」
俺が通う「Sage Tactics On/Off情報センター付属第三戦闘専門学校」は、地上5階地下2階の比較的大きな校舎だ。中学校、高校、大学、大学院と、幅広く戦闘教育についてカバーしている。体育館、プール、訓練所を完備しており、Sage Tactics On/Off情報センターが運用している。そもそも、戦闘専門学校というものは未知の生物に対抗するため、日本の軍事力を上げ、国土を侵犯されないようにするために開校された。とはいっても日本で初の試みなので、先生方は大いに苦労したそうだ。ちなみに先生全員自衛隊の人である。戦闘専門学校は今のところ5つ設置されている。札幌、山形、東京、大阪、福岡と、各地方にひとつづつある。「第三戦闘専門学校」は山形県に位置されている。
「ルイス、今日の授業はどんな感じなの。」
「今日は情報技術Aと中学剣術B、中学銃術A、体育、あと中学魔法Aだ。」
魔法はおとぎ話ではなく、現実に存在している。といってもこの前の騒動の後、STO情報センターが技術公開をしたばかりだ。最初知ったときは嘘だと思った。だが、百聞は一見に如かず。魔法を見せられ、戸惑いつつもなんとか納得した。
「へー。剣術の授業あって良かったじゃん。」
剣術というものは以前から存在していた。だが、使われてはいなかった。洗車などの軍事機の存在である。でもそれだけでは未知の生物に対応できないということで剣術もSTOセンター向けにアレンジして、公開された。実際剣術の方が俺は好みだったけどな。
「まあな。」
「剣が使えるっていいな。」
「でもお前、魔法がうまいからいいだろ。」
「で、でもっ戦士みたいに剣で戦いたかったよ。その方が格好いいじゃん。」
「変わってるな。普通女子なら魔法とか好きそうなもんだが。」
「私は魔法しか適正なかったの。今でもショック・・・」
「まあまあ、剣術なんて、毎日俺と一緒に練習してるじゃないか。芽里奈も少しづつだけどうまくなってきてるよ。」
「ホント!///」
芽里奈は褒められてうれしいのか、笑みを浮かべる。
「とはいっても俺にはまだ及ばないけどな。」
「よっぽど自信があるんだね。私が魔法で倒そうか。」
「や、やめてくれ。」
コイツの魔法の能力の精度は学年の中でもトップクラス。剣では俺が上だが、魔法で戦う芽里奈とは正直戦いたくない。前に戦ったら、Tシャツが焦げて、死にかけたからだ。
「冗談だよ。ほら、さっさと教室入ろ。」
ガラーと扉を開いた。
「ルイス、今日は遅かったな。」
と声をかけたのは俺の友達、千川亮だ。
「ああ、寝坊してしまって。」
「相変わらず、のんきなヤツだな。」
「寝坊するのは仕方ないさ。だって俺なんだから。」
「自覚、あったのか。」
わざとらしく驚いた、千川。
「千川は俺が起きるの遅いって知ってるだろ。」
「まあ確かにな。なんせ会ってもう3年になるし。」
こいつとあったのは1年生のときだ。なんやかんやあって、今は仲良くしている。
キーンコーンカーンコーン
「おっ、時間だな。そろそろ席に座ろうぜ。」
「ああ。」
そういって俺は席に座った。
俺のクラス3年2組の担任、鈴木怜先生が黒板の前に立つ。
「えー、みなさんおはようございます。今日は・・・」
- - -
2時間目には中学剣術Aだ。この教科では普通の授業の他に、模擬戦などの実技も含まれている。
「剣術は剣道と似て非なるものである。剣道は剣の道によりそい、己の精神を鍛えるのが目的である。対して剣術は剣で敵を殺すのが目的である。ここに違いがある。」
先生は黒板に書いてゆく。
俺としては模擬戦の方をやりたかったのにな。はぁー。
ため息をつく。だって模擬戦の方が実戦に向いている。こんなことしても戦場ではまったく役に立たない。そう思っていた。
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時刻変わって今日の昼。
「昼飯食おうぜ。」
「分かった。芽里奈もどうだ。」
「うん。私も行くよ。」
俺、芽里奈、千川で、外の芝生へと向かう。
昼食のパンを食べる。とりあえず食べ終わると、芽里奈に訊いた。
「芽里奈は将来何になりたいと思ってるんだ?」
芽里奈は頭を抱えて悩んでいた。
「・・・そうだね。私は魔法使いにでもなろうかな。」
「魔法使いというより、魔法戦闘技術者だろ。」
「あーそうだったね。」
てへへとはにかんで笑う。
「そっか。芽里奈は実戦で戦うのか。」
「とはいっても、まだまだ能力は足りないからね。高専にも進むつもり。」
「・・・芽里奈は夢があるのか。いいな、俺は訓練用の剣を振ってることしかできない。」
「だけど、ルイスは剣術誰よりも努力してるじゃん。きっとなりたい職業がいつか見つかると思うよ。」
「そうそう。ルイスならきっと見つけ出せると思う。自信を持てって、相棒。」
千川が肩に両手をのせた。
「ありがとさん。俺は剣が好きだけど、正直何になったらいいか、まだ決めかねてる。でも今年は受験生だ。さっさと決めないとな。」
2人から励まされ、俺は微笑を浮かべた。