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ナギ  作者: karon
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祭りの終わったその後に7


 ナギが、浜に戻ると、網の繕いを再開させ始めた。

「もうじきだな」

 その言葉にナギは首をかしげる。

「もうじき、あの儀式の日がやってくる」

 それでようやく思い出した。二年に一度の割合で、子供をより分ける儀式を執り行う。

 男の子なら、山の男衆になって、獣を狩るか、それともすなどりびとになって海に出るか。あるいは、木を切り、細工師になるかそれぞれ振り分けて修行に入る。

 女の子は、織手の里に連れて行かれるかそれともそこに残って土の女衆になるか。稀にだが、ナギのように船乗りになる。

 船乗りだったナミは、もういない、夏の祭りと共に行ってしまった。

 祭りは、皆の祭りであると同時に、船乗りにとって一番大事な祭りだった。

 その次に大切なのがこの儀式だ。この儀式で子供から自分の仕事を決められ大人の一員として認められる。

 前の儀式のときはすなどりびとしか選ばれなかった。今度の儀式では、船乗りが選ばれるだろうか。

 ナギの心臓のあたりがざわざわとなった。

 手を止めるな。

 周りの大人がそう叱咤した。


 食事の時間になれば、捌いた魚の骨で出汁をとった土鍋に、どんぐりの団子が浮かんだ汁物をもらった。

 木をくりぬいた椀は、厚いので熱を通さない。

 木のさじでナギは汁物をかき込んだ。

 今日は子供の姿をよく見る。

 女衆の衣類の裾にすがりつくように子供がぶら下がっている。

 普段、子供は子供だけで群れている。産みの母親も、夜寝る前に引き取りに来るだけで、それ以外は余りかまわない。

 子供でもできる作業。小枝拾いや木の実拾い。そして、砂浜で、すなどりびとに混じって貝を掘ることもある。

 それ以外の役には余り立たない。

 ふとナギは船乗りになる前のことを思い出す。

 確かにナギは、母親と呼べる誰かといたはずだ。

 しかしその面影は茫洋とかすんでどの女衆が自分の母親だか思い出せない。

 たぶん母親のほうではナギのことを覚えているのだろうが、自分の母親だと名乗り出たものはいない。

 それはナギだけでなく。他のすなどりびとの見習いもまたそうだった。

 そういうしきたりなのだ。

 それでも、ナギは、土鍋をかき回す女衆の顔を舐めるように眺める。

 誰だったっけ。そう言って少しでも見覚えのある顔を捜してみた。

 しかし、ここの区別は付いても、それが自分の母親だかは結局わからなかった。

 世の中には男親という者もいるというが、それはもっとわからない。知っている者の方が少ない。

 ナギもまたおぼろげにすら記憶がない。おそらく最初から知らないのだ。



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