祭りの終わったその後に6
この里の長老を勤めるおばばは二人いた。
一人はやせて背が高く。一人は小柄でやや太りじしだ。
対照的な容姿の二人はその気性でも対照的だった。
一人は癇症気味で、もう一人はおっとりとして動じない。
二人はいつも一緒に、オルハを見ている。
対照的な二人だけれど、オルハに対しては容赦ないのがいつも同じだ。
オルハはおばば達の跡取りだと言う。
オルハが跡をとるのはあと数年の後だろうけれどいつも厳しくおばば達に仕事を覚えさせられている。
糸かせを扱うオルハの目は真剣そのもので、ナギの姿も目に入っていない。
それを幸いに、ナギは自分の領地である海に戻ろうとした。
オルハと口をきくのはうんざりだったから。
糸と紐を抱えてナギはもと来た道を戻ろうとする。
その時、オルハが振り返った。オルハの目が釣りあがるのが見えた。
何か言おうと立ち上がったのをおばばに打ち据えられる。
「手を止めると、編み目が狂う」
おばばの重々しい声がした。
渋々、オルハは再び布に向かう。
ナギは一息ついて、その場を後にした。
今度は道を下っていく。この村は、山の天辺にある。それは一番神様に近い場所だから。
神と人を仲立ちする巫女の役割も、この村の女達は担っていた。
布は、神を祭る儀式の際にも使われる。
定められた木に祈りを込めて編まれた布を巻きつけ、紙のよりしろとする。
その重要な布を編めるのは、おばば達二人のみと定められている。
いずれ、オルハがその役目を引き継ぐらしい。
そうなったらオルハはまた威張りくさるのだろうか。
ますますナギはうんざりとした。
そんなものは見たくもないと。