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ナギ  作者: karon
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祭りの終わったその後に5

 網の手入れも、すなどりびとには、大切な仕事だ。ナギは、網の修理のために、織手の里に糸をもらいに行く役目を命じられた。

 ナギは憂鬱だった。織手の里にはオルハがいる。

 オルハは嫌いだ。いつもナギを悪く言う。

 オルハ以外の織の女衆は好きでも嫌いでもない。彼女達は土の女衆と違って動き回らない。小屋の中で黙々と糸を布にしている。

 織の女衆にも役割があり、土の女衆のように、山野に分け入り、糸の材料を探すものもいるし、その糸の材料を糸にするために叩いたり、水に晒したりと忙しく動き回る女衆もいるが、それ以外は大概、細い糸を縦糸に何度も絡ませ、黙々とそれ以外は何もしない。

 織手の里は、山をずっと登った場所にある。かろうじてある細い急な道を苦労しながら、登っていく。

 ナギの両手に、干し貝の袋が握られている。その袋と対価になる分だけ、糸をもらってくるのだ。

 この回避と袋分の糸なら帰りの荷が軽いと言うことはないだろう。ますます憂鬱になった。

 視界をさえぎるこずえの影からようやく。目指す村が見えてきた。

 近くの小川で、晒していた木の皮を持ち帰ったらしい恰幅のいい女がナギの姿を見つけた。

いくつかの小屋の中ではナギよりも小さい子供達が糸束を使って、組み紐を作っていく。

これが、この里で最初に教えられる仕事だと、いつか教えられたことがある。

ナギが、最初に海で泳ぎを教えられたときのように。

そして大きく入り口の空いた小屋の中で、オルハが作業しているのが見えた。

長い爪で糸を掬い。捌いて組み紐を作る要領で、それよりももっとたくさんの糸束を用いて。絶え間なく手を動かしている。

オルハにナギが見えていないように見えた。

「ナギ、用事はなんじゃ」

 そう言って出てきたのは、織手長のおばば達だった。

 ナギは袋を差し出し、網を修理する糸を分けてほしいと頼んだ。

 すぐに糸とごく細い組み紐が用意される。

 おばばの指も、ものが掴むことができないほど長い爪をしている。それが一番難しい作業を任されているものの証しだと。おじじ聞いたことがある。

 オルハのことを思えば、すぐに納得できないものを感じたが、それでも、おばばのことはナギなりに尊敬していた。


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