土の祭り 6
ナギとスナドリヒトの年少の者達は篭に木の葉を集めていた。
あちらの木は朱の炎のような色。あちらは春の花のような黄色。朱から黄のさまざまな段階の木の葉を篭いっぱいに積むと。土の女衆がこの日のために掘り抜いた大穴のところまで持っていく。
ちょっとした家くらいの大穴の中には、土の女衆が捏ね上げた壷や皿が並べておいてある。
そして土人形が幾体か、中心に鎮座している。
あれは呪いに使うのだ。この祭りが終われば冬まであっという間だ。
その間に病にかかるものたちのための呪い。
ほかの子供たちも続々と、篭を持って集まってくる。別の子供たちが持っているのは枯れ枝だ。
枯れ枝は、組んで、壷や皿の間に置かれる。
その後にナギが運んできた木の葉を撒き散らす。
軽い木の葉は山盛りにしてもなかなかいっぱいにならない。
ナギは再び木の葉を集めに戻る。
いつの間にか木に登った仲間が思いっきり枝をゆすって木の葉を落としている。
手でいくらすくってもなかなか集まらないので、適当な枝を折り、その枝でかき集める。
再び篭いっぱい集めると、あの場所に向かう。
木の枝を組み終わり、集めた木の葉を穴に敷き詰め始めていた。
ナギの持ってきたそれも穴に流し込まれる。
穴のふちばかりが大きく盛り上がり、真ん中はいつまでたっても埋まらない。女衆の一人が、穴に降り、篭を受け取って、真ん中に木の葉を積み上げ始めた。
大きな穴は、朝から作業を始めても。日が高く上る時間にならないといっぱいにならなかった。
赤と黄色とところどころ茶色や緑。さまざまな色合いに穴は埋め尽くされた。
これから再び織りのおばばたちが現れて清めの儀式を行うことになる。
土の女衆の祭りはこれから、日が暮れてからが本祭だ。
ナギは一度寝床に戻った。サザとミギワがおなかをすかせて待っていたので、木の実を挽いて焼いたものを分けてやった。
二人は何か言いたそうな目をしていたが。それでも何か言うのを諦めた。
同じようにすでにさめてしまったそれを同じようにもそもそとナギは食べていた。
二人が何を言いたいかうすうす察してはいた。しかしそれは言ってもどうしようもなく、聞いたほうもどうしようもないことだった。
やりきれない沈黙。おじじが現れて、サザとミギワに食べ物を与えた。
「これは夜食べる分だ。今は食べちゃいかん」
二人は夜の間ここで待っていなければならない。二人の表情は乏しい。
ナギにも覚えがある。その時は三人だった。
その二人は今はいなくなってしまった。
祭りの本祭。それは炎が主役だ。枯れ枝に日がつけられ。それを穴にたっぷりと集められた木の葉に投げ込まれる。
炎は徐々に大きくなっていく。そして昼の光で見たよりも鮮やかな赤に埋め尽くされる。
おばばたちの祈りの声。そして、土の女衆が、果実をかもして作られた酒が振舞われる。
肌寒くなってきた夜に。ぼうぼうと燃える火は暑く。ナギは少し離れた場所で座っていた。
この炎が燃え尽きるまでが祭り。
笑いさざめく大人たちの傍らで、ナギはただ炎を見ていた。