表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ナギ  作者: karon
17/40

土の祭り 5

 ナギはわくわくとした気持ちで、普段は食事に来る広場に来ていた。

 そこに、おりのおばば達がいち早くやってきて、塩と酒で周囲を清めていた。

 そこに積み上げられた粘土の前に女衆たちはそろって並び、おばば達が振る布で頭部を清めてもらっていた。

 それが終わると、それぞれの場所に陣取って粘土を掴む。

 蛇のように細長く伸ばすとそれをそれぞれの器の形に形作る。

 手の中で勝手に土が変形していくかのようにその動きはすばやくよどみない。

 そして、二人係でもっとも大きなものに取り掛かっているそれは巨大な壷だった。

 大まかな壷の形を作ってしまうと。其れに、縄を巻いた棒や、組紐などで紋様を刻み。縁を波型に形作っていく。

 周囲で見物している者達の視線もそれに集中しているようだ。

 それほどにその手さばきは見事だった。

 粘土が乾くまでのほんのわずかな間に形を決めてしまわねばならない。そのため女達の手はよどみなく動く。

 ナギはぼんやりとその手を見ていた。

 土の女衆の手は、ナギの手と同じものとはとても思えない。

 ナギは何度か土の女衆が篭を編むのを見ていた。

 蔓を手によそ見しながら手だけが勝手に動いているように見えた。それでいて確実に篭は編みあがっていくのだ。

 ナギがどれほどそれを凝視していてもその編む手の規則性を理解することはできなかった。

 あっという間の出来事のようにも思えたが、それでも天を仰げば太陽は、相当の時間がたったと教えてくれる。

 粘土は、殆どが、壷や皿に姿を変えていた。

 再びおばば達が布を振ってそれぞれの壷などに清めをかける。

 なぎはそれを黙ってみていた。儀式はこれで終わらない。これから数日かけて、捏ね上げられたものは、時間をかけてゆっくりと干されるのだ。

 今はまだ湿り気が多すぎて、焼けば崩れてしまうのだと小さいころ顔も忘れてしまった誰かに教えられた。

 ナギと同年齢の少女達が、使い残った粘土をそれぞれ手にし、さっきまで見ていた手業を思い思いにまねし始めた。

 その少女達にはどこにも刺青が施されていない。

 ナギは、自分の額に手を当てた。

 皮膚が盛り上がってそこに刺青を施されているのがわかる。

 ナギはその場を後にした、もう帰ろう。サザとミギワが待っているはずだ。

 あの二人は、まだこの場に立ち会うことを許されていない。

 だから今は留守番をしている。許されるのは、冬を二つ越えた後だ。もうあちらには戻れないときちんと納得した後。

 ふとナギは思い出す。そういえば、ここでおばば以外の織りの女衆をしている女たちを見たことがないと。

 織りの女衆の仕事は、ひたすら、布を編み上げるだけ。おばばが祭事を取り仕切るために現れるだけで。織りの女衆にはこれと決まった祭りはない。



私の説では、土器作りって季節行事だったのではと思っています。それで何故秋なのかといえば。梅雨時は論外。夏も暑すぎて、急速に乾いてかえって失敗。冬は、むり。それで秋です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ