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1.結婚式中止のお知らせ

 アディーグ王国最強の魔法使いザリーナと、最強の騎士ルスラン・ザネイの結婚式が神殿で行われることになった。

 ザネイ家の親族と、天涯孤独のザリーナにとって家族ともいえる魔塔の魔法使い達が二人の祝福のために参列し、花嫁衣裳を身に纏った美しい金髪のザリーナと、対比するように凛々しい黒髪のルスランの二人を見守っていた。

 ザリーナは長いベールのついた白い小さな帽子をかぶり、金糸の刺繍の施された美しい白いドレスに身を包んでいた。彼女の幼い頃の姿を思い出しながら魔法使いのファティマは、ほぉと息を漏らした。

「なんて美しいんだろう!あのちっちゃくて我慢強い子が、あんな風に穏やかに花嫁姿を見せてくれるなんて、長生きをするもんだね!」

「ああ、俺たちの『嬢ちゃん』は今まで散々苦労してきたんだ。これからは英雄様と幸せに暮らしてほしいもんだな」

 同じく魔塔でザリーナを見守って来たべルスランが囁き声で応えた。

 

 ザリーナは魔塔一、いや王国一と言われるほどの魔法使いであり、その両親も魔塔に所属する魔法使いだった。特に父親は錬金術を得意とし、母親は攻撃魔法を得意としていたが、ザリーナはその両方の才能を受け継いでいた。そのため、半年ほど前にこの王国で「大災厄の怪物」と呼ばれる巨大地竜の大発生に際して、王国騎士団と協力して討伐に当たることになった。

 地竜討伐を通して信頼関係を築いた騎士団長のルスランと恋に落ち、今日の良き日となったことを二人を知るほとんど誰もが祝福していた。一緒に討伐に当たった騎士団員達も参列こそ叶わなかったが、心から二人の結婚を喜び、すでに新居に大量の贈り物が届いているほどで、二人の前途には全く曇りが無いように見えた。その魔道具が鳴り出すまでは……。


 二人が神官の前に跪いて、静かにその祝福を受け取る間、参列者は一言も発さず静かに見守っていた。

 神官は二人に頭に交互に手をやり、祝福の詞を読み上げたあと、二人を立たせ、向かい合わせた。

「では、神の目前で互いに婚姻の誓いを立てなさい。ルスラン・ザネイ、貴方は健やかなるときも病める時も、彼女を愛し、敬い、支えることを誓いますか?」

 神官の問いを受けて、ルスランが口を開きかけたその瞬間、ルスランの耳の通信の魔道具が光り、リンリンと音を鳴らした。ルスランは一瞬眉を寄せ、姿勢を正すと魔道具を起動させた。

「何事だ」

『ルスラン様、王女様が!』

 焦ったような部下の声にルスランの眉根の皺が一層深くなる。

『ルスラン!今すぐ来て!』

『うわっ!駄目です!王女様!』

この言葉を最後にパリンと何かが割れたような音が聞こえ、音声が途切れた。

「ルスラン……」

「すまない。また改めて」

 ザリーナの心配するような声を制してルスランは走り去った。

 残されたザリーナ、神官、参列者たちは何が起こったのかとあっけにとられたまま、しばらく微動だにできずにいた。


「……皆様に結婚式の中止をお知らせいたします」

 重苦しいほどの低い声で、ザリーナがその言葉を発したのは、たっぷり十分を過ぎた後だった。




超久しぶりの長編です!

楽しんでいただければ幸いです!

今日は4回投稿(内1回は人物紹介)予定。

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