序章6
朝、陽気な小鳥のさえずりで目が覚める。
どうして、目覚まし時計や、親に起こされたりしたら、あんなに目覚めが悪いのに、自然と起きた時ってどうしてこう目覚めが良いのだろうか。
なんて、頭を掻きながら考えていると。
急いだ様相の浅川がドタバタと現れた。
「なんだってんだ、朝から騒々しい。こっちは休日だぞ?」
「居候にそんな事言われる筋合いね~よ。てか、お前と林童は万年休日だろうが!」
着替えを済ませ、昨日ついでに買って来たであろうコンビニのパンを片手に律儀にもツッコミを入れてくれる。
こいつは、どっかのお笑いの養成所にでも行った方がいいんじゃないかと思う。
「お弁当、一応作っておきましたよ」
ペタペタと台所から林童が現れた。
「おっ、サンキュー…って、食える物だろうな?」
「それはもう、あたし、料理だけは自信があるんですよ」
一応、弁当の匂いだけ嗅いで、カバンに詰め込むと、気持ちはうれしかったと言うような表情で、外へと走り出した。
外からは、「鍵はそこに置いてあるからなぁ~」と言う声が響いて来た。
ちらと見ると、テーブルの上に、ひらがなで"すぺあきい"と書かれた鍵が置いてあった。一応、鍵は置いて行ってくれたようだ。
取り合えず、鍵をポケットの中に突っ込むと、朝飯を探りに台所に向かった。
台所には、すでに朝飯の準備が整っている。
「おはよー」
「おう、おはよう」
林童は、椅子に座りすでに食事中だ。
はてさて、今日はどうするかな。
取り合えず俺は、目の前にある激ウマチャーハンを頬張りながら考える。
このままずっと、浅川の家に上がり込んでる訳にはいかない。
行く艶なんてない。でもこれまでだって一人で何日かは過ごしてこれたんだ。
「まぁ、なんとかなるかな」
「何がですか?」
「いや、何でもない、それよりお前は今日はどうするんだ?」
「今日も街を歩きますよ」
そうか、こいつもこいつで何かしらの理由と目標があるんだろう。
俺は、ポケットの中にある鍵を机の上におく。
「これ持っとけよ、なんかあったらいつでもここに来れるようにさ」
「でも、それだと荻野さんが困りますよ、あたしはいいですよ。これまでだって、なんとかなってたんですし」
それは、俺も同じだ。
「まぁ、いいわ。取り合えず、俺はもう行くから、鍵掛けて置いてくれな」
そう言うと、俺は街へ出て行く。
林童は、ぼぅっと俺を眺めているだけだった。
暇だ。
洒落にならん、取り合えず俺は、いつも通りに街路樹の脇のベンチに横になる。
てか、何やってんだろうな、退屈な日常が嫌で飛び出したはずが、今の現状は前以上に退屈だ。
浅川と二人で大笑いして、周りのみんなも巻き込んで馬鹿騒ぎして……。そんな夢を見ていた。
遠くから聞こえて来る声で目が覚める。
太陽はもう傾いている。
結構寝てしまったようだ。
声の元を探って、視線をばらまいて見たが、そこいらにそれらしい影は見当たらない。
まぁ、気になるし行って見る価値はあるかな。
どうやら声は裏路地の方かららしい。
入って見ると、かなり薄暗くきみが悪い、あんまり長居のしたくない場所だ、変なのに絡まれでもしたら事だしな。
「だから知らねぇッてんだよッ‼」
「大体よぉ、そんなとこがあんなら、俺等こんなとこに居ないっての」
男の声だ、その後に、違いねぇと数人の笑い声が続く。
遠くてよく見えないが、絡まれてるのは女のようだ。
絡まれてるのかどうかはさて置いて、取り合えず言って見るか。
「何かあったのか?」
さり気なく輪に入ろうとしたが、やっぱり無理があったようで、男の視線がこちらを睨みつける。
「なんだお前⁈」
「いやいや、ちょっと声が聞こえてさ、なんか興味のそそられるような話だったもんで」
手をフラフラと振りながら話を合わせる。
「あぁー。おい、こいつに聞いてみろ」
男がそう言うと、女は俺の方を向くとこう言った。
「貴方はヘブンを知っていますか?」
見ると、女は林童だった。
ヘブン? そんなもん知るかよ。
場に暫くの沈黙が流た。
この部で、序章は終了です。
次は、第一章に移ります。
サブタイトルは「ヘブン」