序章2
文字量少ないかもです。
先に謝まります。
しばらく、林童が戻って来るかも、などと言う期待をして待っていたが、結局、あいつは、戻っては来なかった。
「まぁ、しょうがないわな」
さっき、時計を見たら、既に四時を回っていた。
もう、太陽は地平線の少し上の辺りで、月とのバトンタッチが、秒読み段階である事を告げている。
鱗雲が、夕日に照らされ、時折、北風が吹き付け、先程に比べ、えらく寒くなったような気がする。
この時期は、日が落ちると、一気に寒くなる。早いうちに、寝床を確定させた方がよさそうだな。
なんて、思いながら、街路樹のある歩道をせっせと歩き始める。
「よう、萩野、こんな所で合うなんて思わなかったよ」
「誰だ?」
目の前には、陽気そうな人間がたっている。
正直、こいつは俺の一番の友人だ。俺が、今の生活をしているのも、半ばこいつの影響もある。
俺の目の前で、にこやかな笑みを作るこいつは、俺が、通っていた高校の同級生だった。
いつも、二人で行動していたのに、こいつは、家庭の事情で、学校を辞めてしまった。多分、その時だろう、俺の高校生活が、かったるいものになったのは……。
「またまたぁ、僕だよ、浅川だよ」
「いや、知ってるよ」
「分かってんなら、いちいち聞くなよ、人がせっかく偶然の再開をよろこんでるって時にッ‼」
うがーと、騒ぐ浅川を見て思い出す。
そうだった、こんな他愛のない会話。こいつの、こう言う反応を見るのが楽しかったんだ。
「聞いてるのかよッ?」
「あぁ。ところで、今は何やってんだ?」
こいつが、学校を辞めたのは春先だった。突然の事だった。
本当に、突然の事だったんだ。
前日まで、いつもと何にも変わらなかった。
本当に、いつも通りだった。
呑気な話しをして、また明日と言って別れた。
しかし、次の日、浅川は学校に来なかった。
「一応、仕事しながらボチボチってかな、今は、アパート借りて、なんとかやってるよ。 お前の方こそ、学校どうよ、しっかりやってるか?」
「あ…、あー、まぁまぁ…かな」
適当に誤魔化しておく、取り合えず、今は、近況を話している間ではない。
寝床を確保しなければならないんだ。
「まぁまぁって、…まぁ、良いけどさ、それより、この後、なんか予定ある? 暇だったら、ちょっと、遊んでこうぜ」
「全然暇だ」
「オッケー、じゃあ決まりな、どこ行く? ゲーセン? カラオケ? それとも、飯いくか?」
「…そんな金は無い」
「冗談だって、家この辺なんだよ、寄ってかないか」
「もち却下、怖すぎんぜ」
「ちげーよ、こんなところじゃ長話も出来ないだろ?」
まぁ、それもそうだな。
日は落ちて、辺りは紫に染まっている。
冷たい風も吹き付け、どこでも良いから風のこない場所に行きたい気分になる。
「わかった、うんじゃ行くか」
「それじゃ、ついて来てよ」
浅川は、陽気に歩き出す。
先程、林童が走り去った場所を越えると、ボロボロの安アパートが見える。
「これなのか?」
「すごいボロっしょ、でもまぁ、住んでみれば、風呂もあるし、困ることはほとんどないんだよね~」
かかかっと笑いながら、浅川は、ボロアパートの階段を登って行く。
俺は、その後に続く。
「おわッ‼」
突然、浅川が飛ぶ。
どうやら、何かがタックルを決めたらしい。
そのまま、地上3メートルの位置から、落ちて行った。
「成仏しろよ」
合掌を作り、黙祷しておく。
しかし、数秒も経たないうちに、けたたましい足音を撒き散らしながら、浅川は、飛び立った位置へと舞い戻った。
「何だってんだよッ‼ 少し間違ったら、死んでてもおかしくなかったよ⁈」
俺に対してじゃない、先程華麗なタックルを決めた者へ対する言葉だ。
俺は、その言葉の先に視線をおくる。
そこには、見覚えのある姿があった。
「林童」
昼間の少女がそこには立っていた。
感想とか、よかったら御願いします。
それを見ると、やる気になれます。