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歌舞伎町が僕を食べる。  作者: 夜坂ネオン


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エピソード56 二回目の給料日

歌舞伎町、昨今なにかと世間を賑わせている街。


そんな場所で実際に経験したこと聞いたこと考えたこと


そんなことを織り交ぜたノンフィクション風ファンタジーです。


 二回目の給料日が来た。


ホストの給料は、

振込じゃない。


手渡しだ。


営業後、

名前を呼ばれて、

茶封筒を渡される。


それだけのことなのに、

妙に緊張する。


一回目よりは、

少しだけ期待していた。


シャンパンが入る前の月とはいえ、

リコピンは毎出勤で来てくれていたし、

送り指名も、

新規指名も、

少しずつ増えていた。


前よりは、

絶対にましなはずだと

思っていた。


バックヤードの隅で、

封筒を開ける。


中身を数える。


……うん。


増えてはいる。


ちゃんと、

増えてはいる。


でも、

人生が変わるほどではない。


喜んでいいのか、

焦るべきなのか、

一瞬わからなくなるくらいの額だった。


一回目よりは、

前に進んでいる。


でも、

まだ全然足りない。


それが一番、

現実だった。


給料って、

頑張った証みたいな顔をして、

すごく冷静だ。


慰めてもくれないし、

盛ってもくれない。


お前の今月はこれです、

とだけ言ってくる。


それが、

この仕事の怖いところでもある。


でも逆に言えば、

嘘もない。


この額が、

シャンパンの入る前の俺。


まだ、

地味に積み上げている途中の俺。


封筒を閉じる。


少しだけ、

深呼吸する。


ここで落ち込むのは違う。


来月は、

この金額じゃない。


リコピンの十回記念も、

ららのワンケースも、

シャンパンも、

まだここには入っていない。


つまり、

これは“過去の俺の給料”だ。


今の俺じゃない。


そう思わないと、

この街では簡単に心が折れる。


「どうでした?」


近くを通った麗が、

軽く聞いてくる。


「まあ……

増えてはいた」


そう言うと、

麗は少し笑った。


「最初はそんなもんっす」


「でも、

来月は違いますよ」


来月は違う。


その言葉が、

妙にまっすぐ入ってきた。


封筒をポケットにしまう。


手渡しの給料は、

重いようで、

軽い。


でも、

ここから重くしていくしかない。


この給料で、

何に使うか。


一回目の給料の時は、

ほとんど考える余裕なんてなかった。


食費。

交通費。

ヘアメ代。

煙草。

とにかく、

目の前の生活を回す金。


出ていく先は、

もう最初から決まっていた。


でも、

二回目は少しだけ違う。


増えてはいる。


まだ全然足りないけど、

前よりは、

少しだけ考えられる。


何に使えば、

一番自分のためになるか。


何に使えば、

この街で

もう少し戦えるようになるか。


まず、

家に入れる分。


そこは、

削れない。


俺がホストを始めた理由の、

一番最初の部分だ。


次に、

交通費。


家が遠い以上、

ここも現実だ。


行き帰りだけで、

地味に削られる。


煙草と食費は、

正直もう少し減らしたい。


でも、

簡単には減らせない。


じゃあ、

残りを何に使うか。


服か。


靴か。


香水か。


アクセサリーか。


ホストは、

結局見た目だ。


中身だけじゃ売れない。


麗も、春さんも、

売れてる人はみんな、

ちゃんと金をかけるところを知っている。


でも俺は、

まだその全部を整えるほどの余裕はない。


だから、

優先順位をつける。


まずはシャツ。


襟付きのやつを、

もう何着か増やしたい。


着回しが少ないと、

同じ格好してる印象になる。


次に、

ヘアメの完成形に合わせた

ワックスとスプレー。


休みの日に

自分でも少しは再現できるようになりたい。


美容師任せじゃなく、

自分でも自分を作れるようにならないと。


それから、

肌。


ららにもらった化粧水を使ってみて、

ちゃんと手をかけるだけで

見え方が変わるのはわかった。


ホストなのに、

今までそこを雑にしていた。


たぶん、

そういう細かいところの差が、

指名に変わる。


要するに。


この給料は、

生活費でもあり、

軍資金でもある。


ただ食って終わる金じゃない。


自分を商品として

少しずつ磨くための金だ。


そう考えると、

額の見え方が少し変わる。


少ない。


でも、

ゼロじゃない。


この金を

どう使ったかで、

来月の自分が少し変わる。


そう思えた。


ポケットの封筒を軽く押さえる。


前までは、

給料は“助かる金”だった。


今は少しだけ、

“育てる金”になってきている。


それはたぶん、

ホストとして

前に進んでいるってことなんだろう。

よんでいただきありがとうございます。

感想、評価、レビュー思ったままにお願いします。

いただいた方にはお返ししに行きます。

ブックマークしていただけるよう謹んでまいります。

今後とも長いおつきあいをよろしくお願いします。

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