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歌舞伎町が僕を食べる。  作者: 夜坂ネオン


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エピソード49 不安

歌舞伎町、昨今なにかと世間を賑わせている街。


そんな場所で実際に経験したこと聞いたこと考えたこと


そんなことを織り交ぜたノンフィクション風ファンタジーです。


次の日になり、出勤する。


昨日の地元の空気とは違い、


新宿の街は


もう夜の顔になり始めていた。


ネオンが灯り、


人が増え、


歌舞伎町が目を覚ます。


店に入り、


いつも通り掃除をして、


ヘアメに向かう。


気づけば、


この流れにも


だいぶ慣れてきた。


鏡の前に座りながら、


美容師に言う。


「昨日と同じ感じでお願いします」


今日は、


誰が来るだろう。


そんなことを考えながら、


髪を整えてもらう。


店がオープンすると、


先輩たちの姫が


次々と店内に入ってくる。


リコピンは、


この中にいる日もあれば、


一時間くらいしてから


ふらっと来る日もある。


今日はまだいない。


だから来るまでは、


先輩のヘルプに回ろう。


先週は、


新人にしては忙しすぎた。


そうだ。


まだ一か月半の新人なんて、


お茶じゃない日の方が


珍しい。


ヘルプを回り、


一時間が経った。


リコピンは、


まだ来ない。


少しだけ、


嫌な想像が浮かぶ。


もう、


俺に愛想をつかしたか。


考えてみれば、


ラインも知らない担当なんて


普通はいない。


繋ぎ止める手段もない。


今は仕事中だ。


深く考えると、


ヘルプに支障が出る。


だから、


一度頭から追い出す。


繋ぎ止める手段もない。


でも、


今は仕事中だ。


深く考えすぎると、


ヘルプに支障が出る。


客の前で


顔に出すわけにはいかない。


来るのが、


当たり前になりすぎていた。


それが、


当たり前じゃないことを


忘れていた。


二時間が経った。


三時間が経った。


それでも、


リコピンの姿はない。


ラストオーダーが近い時間。


店のドアが開いた。


入口から、


声が飛ぶ。


「シャンパン!」


「シャンパンまだ間に合いますか!」


一瞬、


店内の視線がそっちに集まる。


俺は思わず振り向いた。


リコピンが、


汗だくで


膝に手をつき、


カウンターにいた。


肩で息をしている。


髪も少し乱れている。


走ってきたのが


一目でわかった。


俺は思わず駆け寄った。


「どうしたんだよ!」


リコピンは息を整えながら言う。


「今日じゃなきゃダメなんだよ!」


「なんで?」


リコピンは笑う。


「今日は」


「奏楽指名して」


指を立てる。


「10回記念日なの!」


そこで一度、

息を整えるみたいに俯いてから、

続けた。


「シャンパン代が足りなくて、

ギリギリまで仕事してたの」


「だから遅くなっちゃった」


一瞬、

言葉が出なかった。


走ってきた理由。

汗だくの理由。

三時間来なかった理由。


全部、

その一言でつながった。


「……お前」


それ以上、

うまく言えない。


リコピンは、

俺の顔を見て少し笑う。


「だからシャンパン!」


その言い方が、

いつも通り明るいのに、

さっきまでとは重みが違った。


「十回、

ちゃんと数えてたし」


「今日じゃなきゃ

意味ないじゃん」


胸の奥が、

少し熱くなる。


来るのが当たり前になりすぎていた。

でも、

この子は“来ていた”んじゃない。

来るために働いていた。


「……ありがとう」


やっと、

それだけ言えた。


リコピンは息を整えながら、

ボーイのほうを見た。


「ラストオーダー、

まだ間に合いますか!」


「大丈夫です」


その返事を聞いた瞬間、

リコピンは俺を見る。


「ほら」


「間に合った」


勝ち誇ったみたいに笑う顔が、

今日は少しだけ、

かっこよく見えた。

よんでいただきありがとうございます。

感想、評価、レビュー思ったままにお願いします。

いただいた方にはお返ししに行きます。

ブックマークしていただけるよう謹んでまいります。

今後とも長いおつきあいをよろしくお願いします。

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